電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第476回

(株)安川電機 代表取締役 専務執行役員 ロボット事業部長 小川昌寛氏


変種変量生産も自動化
教示レスタイプのロボを開発中

2022/5/27

(株)安川電機 代表取締役 専務執行役員 ロボット事業部長 小川昌寛氏
 (株)安川電機のロボット事業が好調に推移している。幅広い領域で採用が増えており、2022年度(23年2月期)も好調を維持する見通しだ。新たなソリューションコンセプト「アイキューブメカトロニクス」も広がりを見せ始めている。代表取締役専務執行役員でロボット事業部長の小川昌寛氏に話を伺った。

―― ロボット製品の受注・販売状況について。
 小川 21年度(22年2月期)のロボット事業の売上高は前年度比28%増の1787億円、営業利益は2.5倍の172億円だった。中国市場の好調が継続し、欧米市場で過去最高レベルの受注・販売があった。分野別では、自動車関連が既存ラインの生産改善投資に加え、電動化に向けた投資も増えて好調に推移。自動車関連部品、3C、農機、建機、健康器具、三品産業など、幅広い分野でロボットの用途などが広がりをみせ、北米ではライフサイエンス領域での需要もあった。そのほか、半導体ロボットの出荷も増えており、18年ごろに比べて2~3倍の規模に拡大している。

―― アイキューブメカトロニクスについて。
 小川 当社の自動化技術に「デジタルデータのマネジメント」を加えたソリューションコンセプトで、当社のロボット、サーボ、インバーターなどに、独自のエッジソフトウエア「YASKAWA Cockpit」、当社のコンポーネントとロボットの一括制御が可能な「YRM-Xコントローラ」などを組み合わせ、生産状況をリアルタイムで可視化し、作業状況のデジタルツインなども利用しながら、変種変量生産にも柔軟に対応できる自動化ラインを構築できる。ビッグデータの活用によるタクトタイムの短縮や、品質データの分析と解析による検査の均一化といった取り組みが浸透しつつあり、データを基軸にした自律分散型のものづくりをお客様とともに目指している。

―― 生産面での取り組みや部品不足の影響は。
 小川 変種変量生産への取り組みは当社のロボット生産現場でも進めており、国内のマザー工場では人の増減をしなくても需要変動に対して柔軟に対応できる体制がほぼできつつある。部品不足の影響は当社も受けているが、過去に何度もロボットの構成部品の調達で苦労したことがあり、こういった際の調達ノウハウもある。さらにロボット関節部に用いる電気品は自社供給で、優先的に手配でき、ロボットの納期が大幅に遅れるという状況にはなっていない。

―― 開発面での取り組みは。
 小川 ライン全体での柔軟性向上に加え、セルでの柔軟性を向上させることでさらに高度な変種変量生産を実現できる。現在、ティーチングプレイバック方式からの脱却を主眼においた「MOTOMAN-NEXTシリーズ(仮称)」の開発を進めている。アームの先端に取り付けられたカメラのデータなどをもとに自ら考えて動くティーチングレスタイプのロボットシステムで、22年度は一部ユーザーとアプリケーションを構築していき、23年度の早い段階で市場投入する方針だ。

―― 22年度の見通しなどについて。
 小川 地政学リスクや新型コロナの影響など不透明な部分はあるが、自動化・省力化への意識はグローバルで年々高まっている。22年度も21年度の勢いを継続できるとみており、22年度のロボット事業売上高は前年度比14%増の2040億円、営業利益は同53%増の264億円を見込んでいる。まずは受注をいただいているお客様への供給責任をしっかり果たしていきたい。
 同時に22年度はアイキューブメカトロニクスのところで語ったような新たな自動化のかたちをお客様と一緒に具現化し、実行性や付加価値のあるものにしていくことも非常に重要視している。MOTOMAN-NEXTシリーズ(仮称)などが加わってくることで、これまで自動化を諦めていた工程やソリューションが存在していない工程へのアプローチも可能になるだろう。ロボットが活用できる領域はまだまだあり、今後も市場は広がる。極端にいえば、人がいるところにロボットの需要が存在するといえ、当社としては、エンジニアリング人材の拡充やパートナー企業との連携強化はもとより、ベンチャー企業やソフトウエア企業とのオープンイノベーションもさらに進めていきながら、お客様に新たな価値を常に生み出していきたい。

(聞き手・副編集長 浮島哲志)
本紙2022年5月26日号1面 掲載

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