四国化成ホールディングス(株)(香川県丸亀市)は、化学品事業と建材事業の2分野を持つ四国化成グループを統轄するカンパニー。戦後間もない1947年のこと、2人の若い技術者が化学繊維レーヨンの原料である二硫化炭素の革新的な製法をもとに起業したのが、そもそもの始まりであるという。創業以来の「独自製法」というDNAは、他の追随を許さない研究開発力に昇華し、今日ではニッチながら世界有数のシェアを持つ製品の数々を擁する化学メーカーとして発展を続けてきた。今回、四国化成ホールディングス(株)の代表取締役社長である渡邊充範氏に話を伺った。
―― お生まれ、略歴について。
渡邊 香川県高松に生まれ、大手前高松高校を出て中央大学文学部で学んだ。1980年に四国化成に入社し、建材事業の広告宣伝課で10年間働いた。大学では国文学を専攻しており、広告やカタログのコピーを作るときにそれが役立った。その後、役員秘書、経営企画室長、企画管理担当役員などを経て、四国化成グループ全体の10代目の社長に就任させていただいた。
―― 四国化成グループはトータルで19社になりますが、現在の年商は。
渡邊 24年の連結売上高は過去最高の694億円となった。住宅市況が低迷する建材事業はダウンとなったが、化学品事業が輸出を中心に好調で、売り上げ全体を押し上げた。30年における財務目標は、売上高1000億円、営業利益150億円、ROE10%以上を掲げており、このためにアクティブな投資を続けていく考えだ。
―― 電子デバイス関連に注力していく姿勢ですね。
渡邊 プリント配線板の水溶性防錆剤である「タフエース」は世界トップのシェアを持つ製品であり、国内外に知られている。銅との親和性が良いイミダゾールが基礎となっており、環境にも優しい。同じくプリント配線板向けの「GliCAP」(グリキャップ)は、銅を平滑なままに樹脂との密着性を確保する薬剤で、高速伝送のサーバー用基板には最適な製品だ。半導体分野においては、パッケージ基板がますます重要な役割を担いつつあり、この製品もここに来て急激に伸びている。
―― 半導体プロセス材料にも進出していますね。
渡邊 これは21年から参入したもので、半導体分野での採用は当社の得意とする有機合成技術をはじめとする研究開発力を一段高いステージに引き上げつつあると考えている。この分野は今後のグループ発展の柱になるだろうとの思いがある。
―― 女性の活躍も重視されていますね。
渡邊 主要グループ会社650人の社員のうち、20%が女性である。社外取締役、取締役執行役員にそれぞれ女性が1人おり、営業職や研究開発職でも女性が珍しくなくなってきた。現在7%にとどまっている女性の管理職の比率をもっと上げていきたい。
―― 将来に向けての積極投資については。
渡邊 これは非常に重要なことで、まず必要なことはファインケミカル事業の工場設備の増強である。丸亀工場のプリント配線板関連、徳島工場の半導体プロセス材料関連については生産能力の増強が喫緊の課題であり、新たな設備の導入を検討している。また、これらの事業が伸長するなかで、それに適した研究開発投資も必要であり、R&Dセンターの建て直しの計画を進めている。現在は設計段階で、27年までには完成させる予定だ。
―― 人材育成は。
渡邊 設備投資も大切なことであるが、人への投資はさらに重要である。働く人たちのための環境を整備していくことは、これからの経営の柱の1つになる。「独創力」は未来永劫掲げていく四国化成グループの理念であり、これが会社発展の原動力になっている。現在取り組んでいる10年間の長期ビジョン「Challenge 1000」では、「独創力」で一歩先を行く提案型企業を目指しており、このために必要なのは社員一人ひとりの持つ知恵を結集していくことだ。新たな発想を持つ若い人材を育成していくために、あらゆる努力を惜しまないという考えだ。
(聞き手・特別編集委員 泉谷渉)
本紙2025年5月1日号1面 掲載