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第631回

住友精密工業(株) 代表取締役社長執行役員 鶴丸哲哉氏


ルネサスの経営経験活かす
DC冷却や装置の拡大に意欲

2025/6/20

住友精密工業(株) 代表取締役社長執行役員 鶴丸哲哉氏
 4月1日付で住友精密工業(株)(兵庫県尼崎市)の代表取締役社長執行役員に就任した鶴丸哲哉氏は、(株)日立製作所の半導体事業部の出身でルネサス エレクトロニクス(株)の社長、会長を務めた経歴を持つ。住友精密では半導体業界での長年の経験を活かし、製造装置やMEMS事業などの育成に意欲を示す。これまでの来歴や住友精密における方針などを聞いた。

―― ご来歴から。
 鶴丸 佐賀県鳥栖市の出身で、久留米大学附設高校を経て鹿児島大学に入学した。同大学では電子工学科で超伝導を研究した。卒業後、日立製作所に入社して小平市の武蔵野事業所でメーンフレーム用ICに携わった。直接の関わりはなかったが、「超LSI技術研究組合」の終わりごろの時代だ。

―― ルネサスでは社長、会長を歴任されました。
 鶴丸 2013年に代表取締役社長、16年に同会長となり、21年に退任するまで同社の経営に携わった。社長に就任した当時は経営再建のため工場再編などのリストラを進め、辛い時代だった。一方、再建の陣頭指揮を執った作田久男会長(当時)や現社長兼CEOの柴田英利氏と今後の成長にはM&Aが重要だと話したことは、現在のルネサスの路線に活かされている。

―― 住友精密でも社長として経営を担うことになりました。
 鶴丸 ルネサス退任後に一時経営から離れていたが、24年に社外取締役として住友精密に入社し、このたび代表取締役社長執行役員となった。当社は優れたものづくり力を持っており、スマートファクトリーなどのDXでこの強みを洗練させたい。ただ、外部から入ったため、まず情報の非対称性を埋める必要がある。就任から3カ月を社内について知る期間とし、7月をめどに具体的な施策を示す考えだ。

―― 産業用熱交換器はデータセンター(DC)などに応用展開しています。
 鶴丸 当社の相変化型冷却器「サイフォレックス」は、生成AIで課題になっている高熱化するDCの冷却を簡易に実現できるものとして期待されている。既存の空冷システムを利用した、附帯設備なし、メンテナンスフリーが強みだ。電力消費の低減にも寄与できる。また、産業用熱交換器「LNG気化装置」は、工場新増設が続く北海道の電力供給対策の一役を担っている。

―― 半導体製造装置の取り組みは。
 鶴丸 シリコン深掘りエッチング装置はトップクラスのシェアを誇る。今後は、プラズマCVD装置や化合物半導体についても、市場規模やプロセスを踏まえ、拡大を目指す。シリコンの微細化の限界により、化合物がより活躍するフェーズが来るとみている。

―― オゾン発生装置も手がけます。
 鶴丸 水処理用の技術を半導体分野に応用しており、関連企業に提供している。今後、半導体分野ではさらに色々な工程でオゾンのニーズが出てくるとみられ、展開を目指したい。

―― デバイス事業ではMEMSもお持ちです。
 鶴丸 MEMSファンドリーを展開しているが、多品種少量体制でどう収益を確保するかが課題だ。一方、独自開発デバイスでは航空・宇宙向けなど高付加価値品に特化していく。

―― 親会社の住友商事(株)と密接に連携しています。
 鶴丸 当社は個々の技術では光るものがあるが、マーケティング力は磨かなければならない。住友商事からは人の支援を得ており、製品・技術を展開するうえで助けられている。

―― 電子デバイス産業協会(NEDIA)では、現在会長をお務めです。
 鶴丸 23年から副会長、この5月26日から会長を務めている。日本の電子デバイス産業の発展に向けた取り組みに、大いに貢献していきたい。



(聞き手・特別編集委員 泉谷渉/副編集長 中村剛)
本紙2025年6月19日号1面 掲載

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