分光放射計や色彩輝度計・照度計などの光計測器を手がける(株)テクノオプティス(東京都板橋区)は、4月1日付で(株)トプコンテクノハウスから社名を変更し、ワイエイシイホールディングス(株)の子会社として新たなスタートを切った。代表取締役社長の大出顕氏に現在の取り組みや今後の展望を聞いた。
―― ご略歴は。
大出 半導体の検査装置やFPDのカラーフィルター用露光装置のソフトウエアエンジニアを15年務め、当社に移籍したのは2011年で、事業企画や他社との協業などに携わり、主力である光計測器事業には17年から関わっている。
―― 主力製品について。
大出 光の明るさや色、その特性を測る分光放射計を中心とした光計測器の事業を50年以上にわたり展開しており、おおよその売り上げ構成としては、部材メーカーを含めたディスプレー関連、および内装パネルやヘッドライトなどの外装照明を対象とした自動車関連が中心となっている。
光計測技術は、光を波長ごとに分解する方式としてプリズムや回折格子を用いる分光方式および、光学フィルターと光センサーを組み合わせるフィルター方式があり、計測の方式としてはスポット(点)測定と2D測定があるため、計4つのカテゴリーに分類することができる。当社は全カテゴリーに製品をラインアップしており、なかでも2Dの分光放射計は当社が世界に先駆けて上市したメーカーだ。近年では2D測定の需要が急速に高まっており、当社の主力分野となりつつある。
―― 2D分光放射計について。
大出 一度に500万ポイントの分光計測によってスペクトルなどの詳細な情報を含む画像を解析できる「SR-5100シリーズ」が当社の主力製品で、24年度に過去最高の販売実績を上げた。フィルター方式よりも高精度のスペクトル情報を取得して比較解析することができるため、ディスプレーパネルやミニLED/マイクロLEDの素子レベルでの明るさや色ムラ、発光寿命の劣化検査など、顕微鏡と一体化して狭い領域を観察する用途にも適しており、次世代光源の要素開発向けを中心に販売が好調だった。
―― 製造工程用途は。
大出 高解像度で、輝度や色度ムラを短時間で一括測定できる特徴を持つ「UA-20」や「UA-10A」が、ディスプレーパネルや自動車部品の検査などの製造工程用途に販売が伸びている。
当社の光計測器はこれまで研究開発用に使用されるケースが多く、ゆえに台数需要が限られていたが、製造工程向けを近年強化してきたことが徐々に実を結んできた。引き続き製造工程向けの製品ラインアップを強化していくつもりだ。
―― 足元の状況は。
大出 米国が相互関税政策を発表して以降、自動車関連で若干ストップがかかっている案件があり、情勢を注視している。ディスプレー関連は今のところそれほど大きな影響はないが、有機ELの高精細化に加えて、今後の成長が期待されるAR/VR用のOLEDoSやLEDoSの開発にSR-5100を応用したアプリケーションで対応していく。
―― 今後の方針は。
大出 まず生産体制は、従来どおりトプコングループの福島および山形の工場に委託するため、体制に変更はない。
また、人材への投資が最優先と考えており、製販技すべてで増員を図りたい。すでに要素開発に取り組んでいる開発案件もあり、定期的に新製品をリリースできる体制づくりを進めていく。
ワイエイシイグループは傘下の製造企業19社で(1)半導体・メカトロニクス関連、(2)医療・ヘルスケア関連、(3)環境・社会インフラ関連の3領域をカバーし、このうち当社は(2)に属するが、半導体やFPDの製造装置・検査装置を手がけているところがあるため、グループ内で技術シナジーを最大限に活かし、新たな製品創出にも積極的に提案していくつもりだ。
加えて、これまで当社は「光を測る」用途を開拓してきたが、今後は「光で測る」用途を伸ばしていきたい。物体の色味や透過反射光の測定によって欠陥検査や物質の特定などを行う用途は相当あり、実際に機能性フィルム向けなどの検査用途が伸びている。グループでは「2030年に1000億円企業の仲間入りを果たす」を目標に掲げており、これに貢献できる企業として成長を続けるつもりだ。
(聞き手・特別編集委員 津村明宏)
本紙2025年5月29日号9面 掲載