商業施設新聞
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第335回

八重洲地下街(株) 専務取締役 丹羽亨氏


周辺を結ぶ日本最大級の地下街
改装で新しい顧客層が増加

2022/6/21

八重洲地下街(株) 専務取締役 丹羽亨氏
 八重洲地下街(株)は、東京駅の八重洲エリアで約180店を集積する「八重洲地下街」(ヤエチカ)を運営している。ヤエチカは飲食店を中心に物販やサービスなど多彩なテナントを揃えるほか、街のハブ機能として重要な役割を担う。直近でもテナント入れ替えを含むリニューアルを行い、新たな賑わいを生み出している。同社専務取締役の丹羽亨氏に聞いた。

―― ヤエチカの概要から。
 丹羽 東京駅の八重洲エリアにある地下街で、延べ約6万4300m²、店舗面積約1万4600m²に店舗数約180店を展開している。店舗面積は地下街として全国2位を誇り、東日本ではナンバーワンだ。また、公共地下通路という側面も持ち、1日の通行量は約15万人(新型コロナ拡大前)を数える。

―― 直近でリニューアルを行っている。狙いは。
カレーの人気店4店を集めた「TOKYO CURRY QUARTET」
カレーの人気店4店を集めた
「TOKYO CURRY QUARTET」
 丹羽 リニューアルの前提として八重洲エリアでは現在、複数の大規模再開発が進行しており、これに連動する形で行っている。商業施設単体で勝負するというより、エリア全体で戦っていこうという方向性の中、点ではなく面での街づくりが重要だと考え、街づくりに貢献するためリニューアルを実施している。
 最近の改装として、2021年度(21年4月~22年3月)は、新店約20店がオープンし、例えばドン・キホーテのカテゴリー特化型「お菓子ドンキ」「お酒ドンキ」や、スシローの駅に近い立地への出店(飲食とToGoの併設)など新しいチャレンジに加え、22年2月には人気カレー店4店を集めた「TOKYO CURRY QUARTET」がオープンした。
 ドン・キホーテのカテゴリー特化型はここが初出店で、カテゴリーを特化した業態を出店してほしいと当社から提案した。今では他の商業施設でもカテゴリー特化型が新戦略として展開されてきている。

―― リニューアル効果は。
 丹羽 前述のドン・キホーテやスシローなど多種多様なテナントが出店し、ファミリーなど従来あまり利用がなかった新しい層のお客様が目に見えて増えた。これまではビジネスパーソンの利用が多かったが、リニューアルによって利用者層の広がりはあった。

―― コロナ前後でリーシングに変化は。
 丹羽 ヤエチカは立地も良く、テナントから出店希望が多かった。コロナ前の数年は様々な業種業態が増えていたが、やはりコロナ後は出店に対して慎重な考えを持つテナントも増えた。そのような環境で当社のリーシング戦略は、新たなチャレンジに取り組む企業や、お客様の印象に残るような魅力的なテナントを探している。単純に人気があるから誘致するのではなく、当社のコンセプトや意思に基づいたリーシングを行っている。

―― 貴社の役割は。
 丹羽 街と街を結ぶ、人と人を結ぶ、いわゆる街の“ハブ機能”となること。ヤエチカを通じてお客様に街を案内する役割があると思っており、周辺の人々からもヤエチカが街と人をつないでくれると期待されている。また、ここの通路は公共地下通路でもあるので、国や都など行政からの緊急時の情報発信も、デジタルサイネージなどを活用している。
 八重洲に加え周辺の日本橋や京橋などで再開発が進み、周辺エリア全体が大きく変わる。東京駅から見れば、ヤエチカはスタート地点でありゴール地点でもあるため、お客様に「寄っていきたい」と言われる場づくり、時間の活用の仕方を提案していきたい。

―― 今後のリニューアル計画は。
 丹羽 直近では6月29日、北エリアにラーメン店7店の集積ゾーン「東京ラーメン横丁」がオープン予定。毎日多くの通行量があるが、ヤエチカの利用者は通行量の3割程度にとどまっている。2月にオープンしたカレー、今回のラーメンといった、お客様の関心が高いグルメなどを集積したゾーニングを行うことで、利用者を増やしたい。こうした考えを“街のLDK”と称し、リビング・ダイニング・キッチンのように、みんなが集まって楽しめる場所を随所に作っていきたい。
 テナントの入れ替えのほかにも、安全安心や衛生面の観点から、清掃の徹底や設備の更新、老朽化した場所の修繕などにも大きな投資を行い、快適な環境や空間の提供、安心して利用できる通路の維持に努めていきたい。

―― 今後の抱負を。
 丹羽 ヤエチカは再開発によって整備される新ビルと接続する。例えばヤンマー東京ビル、東京ミッドタウン八重洲とつながり、これからも人の往来が増える中、マーチャンダイジング、セールスプロモーション、売り場展開、接客サービスの4つを中心に注力しながら運営していきたい。また、ヤエチカの利用者は通行量の3割程度となっているため、もっと増やしていきたい。そのためにセールスプロモーションなどにもより注力し、気軽に寄ってもらえる、利用してもらえる施設づくりと、従業員の方々が活き活きと楽しく働ける環境づくりに取り組んでいきたい。

(聞き手・副編集長 若山智令/鈴木さやか記者)
商業施設新聞2448号(2022年6月7日)(1面)
 デベロッパーに聞く 次世代の商業・街づくり No.377

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