電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第515回

(株)アドバンテスト 代表取締役兼執行役員社長 吉田芳明氏


SoCテスター、HPC軸に高成長
部材調達に厚みも改善道半ば

2023/3/3

(株)アドバンテスト 代表取締役兼執行役員社長 吉田芳明氏
 (株)アドバンテスト(東京都千代田区)は、主力のSoCテスターを中心に2022年度(23年3月期)業績も好調に推移、売上高、営業利益ともに3期連続で過去最高の業績を更新する見通しだ。足元では半導体市況の悪化に伴い、引き合い・受注の悪化も懸念されるところだが、強固な事業基盤をベースに市況回復時に備えた準備を進める。代表取締役を務める吉田芳明氏に、現況および今後の見通しについて話を伺った。

―― まずは足元の市場環境について。
 吉田 我々の顧客である半導体メーカー各社の直近決算の中身を見ても急激な落ち込みが出てきている。23年上期が低迷するなかで、これがすぐに簡単に戻るとは思っていない。ただ、車載やパワー半導体など好調な分野もあり、まだら模様ともいえる状況だが、だんだんと黒いところが増えている印象だ。

―― 回復のめどや見通しは。
 吉田 結局のところ、世界経済の動向次第だと思う。今はロシア・ウクライナ問題、インフレ、米中対立の3つが重なり合っている状況で、これがどういうきっかけで反転するのかに尽きる。今のところ金利上昇はいったん落ちつきを見せ、中国もコロナ禍からリオープンの様相を見せ、この先どこで最終需要が回復してくるのかだが、いずれにせよまだ確度は高くない。

―― この間、貴社のテスター事業はSoCを中心に大きく拡大しました。
 吉田 当社推計になるが、22年のSoCテスター市場は39億~41億ドルで推移したと見ており、前年比で縮小した。一方で為替影響はあるものの、当社のSoCテスター売上高は暦年基準で前年比4割以上伸長した。これに伴い、SoCテスター市場におけるシェアも21年の40%台半ばから50%台後半まで上昇した。

―― シェア拡大の背景は。
 吉田 HPC(High Performance Computing)市場における豊富な顧客基盤だ。同市場で強く、そして「どのテスターを使うか」という意思決定権を持つファブレスと強固なパートナーシップを構築できたことが、実際に量産を行うOSATやテストハウスへの波及効果も含めて好循環を生み出している。23年は同業他社の主要顧客における投資動向にも左右されるが、引き続きトップシェアを維持できる見込みだ。

―― 一方で、SLT(システムレベルテスト)分野は見通しを引き下げました。
 吉田 主要顧客の投資計画見直しを大きく受けた。モバイル関連でも調整が入っている。SLTは顧客数がまだまだ限られており、新規顧客へのアプローチを図ることで特定顧客への依存度を減らしていければと考えている。

―― 部材調達や生産体制について。
 吉田 足元でも相当な受注残を抱えていることもあり、サプライヤー企業には都度増産要請を行っており、調達体制は随分と厚くなってきた。ただ、一部まだ不足が続いている部材もある。一時に比べて状況は良くなっているものの、23年後半まで改善に時間を要すると見ている。生産面では、四半期レベルで1500億円の売上高に対応できる体制は、委託先のEMS企業の拡充などを通じて整っており、あとは部材調達が改善すればという状況だ。

―― わかりました。今後の分野別の事業戦略について教えて下さい。
 吉田 まだまだ手薄な分野、例えば車載を含むパワーやアナログ、イメージセンサー、RF分野についてはしっかりと強化していきたい。RF分野については23年末に向けて大きな商談も控えている。
 また、先ごろ台湾のPCBメーカーであるShin Puu社の買収も発表した。正式なクロージングは関係国当局の承認取得などの条件を満たすことによって成立する予定だが、今後リカーリングビジネスのさらなる推進も図っていきたい。

―― Shin Puu社買収の狙いは。
 吉田 21年に買収した米R&D Altanovaがテスト用インターフェースボードを設計、製造、組立を行っているが、同社が有する高性能・高密度の基板設計技術とShin Puu社の生産能力を組み合わせることにより、アジア顧客へのターンキーソリューションの提供が可能になる。従来は顧客がそれぞれローカルサプライヤーに品種切り替え時などに個別に発注を行っていたが、当社が一元的にソリューションを提供することで、顧客基盤の強化と収益基盤の安定化につながると考えている。

―― 最後に、次年度以降の見通しをお聞かせ下さい。
 吉田 23年上期の受注はやはり一定水準落ち込むと見ており、23年度通期売上高においてもレンジを持たせたかたちで開示する予定だ。また、現中計も23年度が最終年度となることから、次期中計策定に向けた作業も社内で一部開始した。ターンキーやリカーリングビジネスなど半導体テスト全般のバリューチェーンを押さえた事業展開を進めるのはもちろんのこと、チップレットや3Dパッケージといった新たな技術やアプリケーションへの対応も今後強く求められてくるので、そこへの取り組みもしっかりと行っていきたい。

(聞き手・編集長 稲葉雅巳)
本紙2023年3月2日号1面 掲載

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