電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第517回

(株)タカトリ 代表取締役社長 増田誠氏


SiC切断装置で高成長
独自スラリーで高精度を実現

2023/3/17

(株)タカトリ 代表取締役社長 増田誠氏
 (株)タカトリ(奈良県橿原市)は、ワイヤーソーの開発、製造、販売を行っている。高精度な切断加工技術で、過去にはサファイア向け、現在はSiC向けワイヤーソーで世界トップシェアを誇る。大型受注が相次ぎ、近年大きく伸長しているSiCウエハー加工装置について代表取締役社長の増田誠氏に話を伺った。

―― SiC特化型ワイヤーソーを製品化した。
 増田 当社は約10年前、当時LED用で需要が高まっていたサファイア加工装置でトップシェアとなった。それ以外にも2012年ごろからはSiCやGaN、Ga2O3(酸化ガリウム)など様々な材料の切断装置開発に取り組んだ。なかでもGaNが活発化すると見込み、ノーベル賞受賞者の中村修二教授と共同で14年にGaNの加工技術を開発した。しかし量産化には至らず、注目の高まるSiCの加工装置に取り組むようになった。従来は汎用のワイヤーソーを応用していたが、20年にSiC専用マルチワイヤーソーを開発した。中長期的に成長する市場とみており、経営資源を集中させている。

―― 特徴は。
 増田 SiCは硬く、中央に行くほどワイヤーにかかる負荷が大きくなり、スライスに使用するダイヤを満遍なくかけることが困難だった。しかし、同製品ではこの課題を解決し、スライス開始から終了時点まで全体の厚みを均一にでき、表面を湾曲させずにきれいな切断加工面を実現できる。その後の加工処理を簡素化でき、顧客の工程短縮に貢献できるようになった。

―― 高精度の理由は。
6インチ対応SiC専用マルチワイヤーソー
6インチ対応SiC専用マルチワイヤーソー
 増田 ワイヤーソーでの切断には、オイルとダイヤモンドの粒子を混ぜた加工液(スラリー)をワイヤーの上に流して使用するのだが、このスラリーが重要だ。インゴットの切断には、6インチの場合で約130時間という長い時間がかかる。時間が経つにつれてダイヤが沈降し、均一にオイルと混ざり合った状態を維持できないという課題があり、安定して長時間ダイヤが沈降しないオイルが必要であった。そこで、オイルメーカーと共同で、ダイヤモンドスラリー専用オイル「刃―YAIBA―」を開発した。よく切れるようになるのでこのように名付けた。

―― 刃―YAIBA―の特徴は。
 増田 ダイヤ粒子をすべて有効利用でき、消耗品の消費を低減できる。後工程のラッピング、ポリッシングが楽になり、コスト低減にもつながり、顧客から支持を得ている。また、消耗品であるオイルの販売も可能になった。ワイヤーやスラリーは、顧客が各メーカーから購入しており、これまで装置のみを販売していたが、装置とスラリーのセット販売も可能になった。設備投資のピークが過ぎても消耗品の売上を確保できる。オイルメーカーで生産し、当社でタカトリブランドとして販売している。

―― 装置の生産について。
 増田 6インチ向けは2月から本格製造を開始した。6月以降は最低でも月50台は生産する予定だ。受注は多くいただいていたが、半導体やサーボモーターなど部品の納期遅れにより製造できないという歯がゆい状態が続いている。この状況は24年半ばまで続くだろう。2月時点での受注残は、24年分を含み約190億円。納期は13~14カ月いただいており、短縮に向けて取り組みを強化している。現在は6インチへの対応だが、8インチ対応機種も開発中だ。

―― 8インチ対応機種について詳しく。
 増田 夏~秋ごろには製品化する。大口径化に加えて省人化、作業効率を改善できる機能も組み込んだ。非常に重いため作業員の負担となっていたワイヤーやリールなどの交換に要する負担を軽減し、また安全性も高めた。切断精度は6インチ対応機と同等を維持しつつ、使いやすさを向上させている。

―― 生産能力の増強は。
 増田 現在の受注には現有能力で対応できている。今後のさらなる受注に備え、中国拠点を起点に、中国企業、現地の日系企業とのアライアンス契約を締結し、生産体制を整えた。

―― 半導体の設備投資抑制の影響は。
 増田 SiCの投資意欲は衰えておらず、引き合いは強い状態が続いている。年内はずっと工場がフル稼働の予定だ。ただ、部品不足により注残分の消化のみになってしまっているのが現状だ。そのため現在は、売上ではなく受注目標を定め、受注の積み上げに注力している。23年9月期は、最低でも前期比約50%以上の増加を目指したいと考えている。6インチ用に加えて今後は8インチ用も提案を進めていく。

―― 今後の新たな取り組みは。
 増田 我々は顧客の工程全体の短縮を目指している。そのため研削装置も開発している。切断~研削までトータルメリットを提供できるようになる。現在プロトタイプが完成し、テスト段階だ。こちらも夏~秋ごろに開発完了を目指す。ワイヤーソーの顧客に展開していき、顧客のコスト削減などに貢献していきたい。

(聞き手・副編集長 中村剛/日下千穂記者)
本紙2023年3月16日号1面 掲載

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