電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第40回

2次訴訟に突入したアップルとサムスン


2014/4/11

対象は両社とも10機種

サムスン電子のスマートフォン
サムスン電子のスマートフォン
 アップルとサムスン電子の特許戦争が3月31日、第2ラウンドに突入した。米国における1次訴訟で9億2900万ドル(約957億円)という巨額の賠償判決を言い渡されたサムスン電子。アップルは今回の2次訴訟でサムスン電子にスマートフォン(スマホ)1台あたり40ドルのロイヤルティーを主張し、最高レベルの特許料を求めている。サムスン電子が2次訴訟でも賠償を命じられた場合、特許料の負担による収益性の悪化が懸念されるだけに、両社の攻防がさらにヒートアップするのは間違いない。

 2011年4月から3年間続いた1次訴訟が主にスマホの外型やデザインといったハードウエアが争点であったとすれば、2次訴訟は使用者環境(UI)などソフトウエアを巡る熾烈な争いになることが予想される。また、2次訴訟では最新製品を対象に特許侵害の可否を判断するため、賠償額が相対的に1次訴訟より大幅に高額になるという観測が支配的だ。2次訴訟の対象となるサムスン電子の製品はGalaxy S3、Galaxy Note 2、Galaxy Nexusなど10機種、一方のアップル製品はiPhone5、iPad4、iPad miniなど10機種である。しかし、Galaxy S4やiPhone5S、iPad Airなどは対象には含まれなかった。

狙いはアンドロイド陣営?

 アップルは2次訴訟で、サムスン電子のみならず、アンドロイドOSを作ったGoogle陣営全体を狙ったという見方もある。アップルが今回の訴訟で特許を侵害されたと主張する技術は、▽単語の自動完成、▽画面タッチ解除、▽データテーピング(多種類のデータのうち特定データを区分けして実行)、▽PCとスマホデータの同期化、▽統合検索の5件である。これらはすべて、アンドロイド系スマホに搭載される基本機能である。表面的にはサムスン電子を攻撃しているが、賠償判決の結果によっては、アンドロイド陣営全体に波及する蓋然性が潜んでいるのだ。

 アップルは5件の特許料として、1次訴訟の賠償額の2倍強に達する20億ドル(約2060億円)を要求したといわれている。通常、企業間の特許訴訟は、和解の形態で終了しがちであり、この和解の際に、特許料は賠償金を算定する基準となる。アップルはサムスン電子と和解する場合を想定し、損害賠償額を最大限に膨らませたという。

 とりわけ、アップルは今回の訴訟に際し、Googleでアンドロイド開発を担当していた大勢のエンジニアを証人として要請。アップルのCEO抜擢が有力視されながら、12年に突然解雇されたスコット・フォーストール(Scott Forstall)首席副社長(iOS担当)も証人席に立つという。

 反面、サムスン電子が今回の2次訴訟で対象とする特許技術は2件に減った。デジタルイメージや音声記録を伝送する技術と、映像を伝送する技術である。1次訴訟ではサムスン電子の特許の大半が米国の法廷で認められなかっただけに、2次訴訟では説得力の高い特許を選んだのだと分析されている。

 韓国のマスコミは、今回の訴訟に臨むアップルの戦略を、サムスン電子1社に限らず、アンドロイド陣営全体を相手取っていると表現している。「1次訴訟がデザイン盗用の可否が争点だったとすれば、2次訴訟はOSが中心になるため、Googleの訴訟をサムスン電子が肩代わりしている向きもある」という論調だ。

判断されるのは「革新」

 確かに、2060億円という莫大な金額は、米国の司法ビジネスに慣れていない韓国人にとっては、理解しがたい騒ぎと認識されているようだ。4月1日から始まった2次訴訟の審理でアップルは、「革新」を強調する戦略を駆使。サムスン電子は弁護団を全員替えて「アンドロイドの革新性」を訴えながら、陪審員を説得している。「革新」という一概に断定できないテーマを巡って争うなら、2次訴訟も決して短期戦では終わらないだろう。

半導体産業新聞 ソウル支局長 嚴在漢

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