電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第64回

次のスマホ市場はインド! 中国ODM企業が大量供給


~インドスマホを作る中国黒子企業~

2014/9/26

インドネシア市場に進出する中国メーカー

 中国スマートフォン(スマホ)ベンチャーの雄「シャオミー(小米)」は2014年4~6月、中国市場でアップルやサムスンからトップの座を奪った。シャオミーの国内市場シェアは14%に拡大し、サムスンを2ポイント上回った。シャオミーの1~6月の出荷台数は2610万台、9月に新型モデルの「小米4(Mi4)」を売り出すことから、年間出荷台数は6000万台を超す見通しだ。

 しかし、シャオミーにも懸念材料がある。中国のスマホ市場の成長率は、13年の70%増から14年は20%増に鈍化する。中国以外の新たな市場を開拓できなければ、シャオミーの快進撃もここまでで終わってしまう。つまり、シャオミーにとって新興国での販売が最重要ミッションなのだ。今年はシンガポールやマレーシア、インドネシアでスマホ販売を開始。格安スマホの「紅米(RedMi)」などをインドネシアで拡販していく考えだ。

 インドネシアは2.4億人の人口を抱えるうえに、スマホ普及率が20%とまだ低い。中国でのスマホ普及率は昨年すでに50%を超え、今年は80%くらいに達する見通しだ。中国市場から見ると、インドネシアはスマホメーカーにとってチャンスに溢れたマーケットといえる。シャオミーはインドネシアの携帯電話販売事業の「エラジャヤ・スワスンバダ」と提携して販売ライセンスを確保。現地のネット通販「ラザダ」を使って7分で5000台のスマホを売りさばいて好調なスタートを切った。


インドも狙うシャオミー

 そのシャオミーが次に狙っているのがインド市場だ。インドの人口は中国に次ぐ12億人。スマホ普及率は10%とインドネシアより低く、いずれは世界最大のマーケットになる潜在力を秘めている。しかし、消費者の購買力がまだ低い。1人あたりGDPで中国は6750ドル(上海は1.4万ドル)あるのに対し、インドネシアは3500ドル、インドはさらに低い1500ドル。所得や消費力の差から、インドのスマホ市場がブレイクするのはまだ先、来年(15年)というよりは16年まで時間がかかるものと考えられていた。

 しかし、シャオミーはインド進出の計画を前倒しで進めてきた。地元の販売店の「フリップカート」と提携し、前モデル(型落ち)スマホの「小米3(Mi3)」を拡販しようと計画している。

中国など新興国ではPCショップ(電脳城)で低価格スマホが売られている
中国など新興国ではPCショップ(電脳城)で
低価格スマホが売られている
 インド市場の次は、新興国だけでなく、中東やアフリカなどの途上国市場が残っている。世界のスマホ市場は今年20%成長しているが、実態は先進国の10%増に対し、新興国が30%増以上の成長で下支えしている。中国の次はインドネシア、そしてインド、アフリカ市場へと厳しい競争に発展していく。

グーグルとメディアテックもインド狙い

 アンドロイドOSを開発しているグーグルもインド市場を重視している。低価格スマホ用プラットフォームの「アンドロイド・ワン」を導入し、インド市場の開拓に乗り出す。台湾のアプリケーションプロセッサー(AP)を設計するファブレスの「メディアテック(聯発科技)」も中価格帯スマホ用のAP「MT6582」をインド市場に投入する。

 インドのスマホ大手のマイクロマックスとカーボンモバイルズ、Sモビリティーは、「アンドロイド・ワン」と「MT6582」、4.5型パネルを搭載したスマホを6400ルピーで販売する。6400ルピーはドル換算で100ドル。やはりインド市場のボリュームゾーンでは、低価格スマホが主役になるのだろう。

新興国では、日本で馴染みのないスマホブランドが林立
新興国では、日本で馴染みのない
スマホブランドが林立
 フィーチャーフォン(ガラケー)からスマホ時代に移って、まずアップルがノキアの王座を奪い、サムスンが3億台を出荷してアップルを追い越し、サムスンがシャオミーなどの中国スマホメーカーに苦戦を強いられる時代に移り変わっている。そして、いずれはインドのスマホメーカーが中国スマホ軍団に取って代わることになるのだろうか。

インドスマホと中国ODMのベストマッチング

 インドのスマホ市場が拡大すれば、インドのスマホメーカーが開発力をつけて成長してくるだろう。しかし、スマホ産業が中国からインドにシフトしてしまうとは考えにくい。実際のところ、インドのスマホメーカーは製造だけでなく、設計や部品調達なども中国のODMやスマホのデザインハウスに丸投げしているケースが多い。中国は人件費が上昇しているが、インドは停電リスクなど産業インフラが弱く、部品サプライヤーの集積が不足していて、インドが中国と同等の製造基地になるのはそう簡単ではない。

 こうしたインドメーカーを陰で支えることになるのが、中国の「ウォーターワールド(沃特沃徳)」や「ウイングテック(聞泰)」、「ハイパイ(海派)」、「リーガンテック(鋭嘉科)」、「ロングチェアー(龍旗)」などのスマホデザインハウスだ。中国最大手のスマホメーカーの「ファーウェイ(華為技術)」は今年、8000万台の出荷目標を立てている。これに対し、スマホデザインハウス最大手の「ウォーターワールド」は14年4~6月に2250万台を出荷(顧客企業に代わって携帯電話を設計・製造)した。おそらく年間出荷台数は1億台に近い水準になり、ファーウェイを超えるだろう。知られざる中国スマホ業界の巨人的な存在だ。

 インドスマホメーカーは今後、中国デザインハウスへの設計委託や、中国ODMへの生産委託を増やすことになるだろう。日本の電子部品メーカーは、中国のスマホデザインハウスをもっと重要視しておいた方がよさそうだ。

半導体産業新聞 上海支局長 黒政典善

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