商業施設新聞
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第405回

東武鉄道(株) 生活サービス創造本部 沿線価値創造統括部 商業開発担当 課長 赤塩叔也氏


EQUiA、沿線商業ブランドの開発を加速
今冬に越谷が開業控える

2023/11/7

東武鉄道(株) 生活サービス創造本部 沿線価値創造統括部 商業開発担当 課長 赤塩叔也氏
 東武鉄道(株)(東京都墨田区)は、東武線沿線で展開する駅立地の商業ブランド「EQUiA(エキア)」の開発を強化している。エキアは生活に密着した店舗を中心とした構成で利便性向上を図り、沿線価値の向上にもつなげている。今年の冬にも「エキア越谷」が開業を控えるなど、積極的な開発を行う同社生活サービス創造本部 沿線価値創造統括部 商業開発担当 課長の赤塩叔也氏に聞いた。

―― エキアの紹介を。
 赤塩 当社が駅ビジネスの強化を目指し、駅ナカの商業化など駅を活用した沿線価値向上に取り組む中で誕生した駅立地の商業ブランドだ。1号店は元々、改札外の商業エリアだった「ファイン川越」をリニューアルし、2007年に「エキア川越」としてオープン。その後、「志木」「朝霞」「池袋」「北千住」などを出店し、直近では9月21日に「谷塚」(店舗数11店、うちクリニック3店は24年春開業予定)が開業し、施設数は15施設となった。

―― 現在の状況は。
 赤塩 22年秋ごろから人流の回復が顕著になり、23年5月には新型コロナの扱いが5類に移行したことなどで、売り上げはコロナ前に戻りつつある。コロナ禍で苦戦が続いた飲食店のニーズも戻り、業績を牽引している。施設によって多少の差はあるが、エキア事業の23年度上期はコロナ前まで業績が戻ってきており、通期でもコロナ前の水準まで回復できるのではないか。

―― 乗降客数などエキアを設置する基準は。
 赤塩 展開当初は一定の基準を設けていたが、今は強くこだわらず、ある程度の規模感があり、エキアのキャッチフレーズである「モットタノシイエキヘ」が表現できる場所であれば、エキアとしてブランド化しても良いと思う。
 22年11月に開業した「エキア新柏」は、乗降人員約2万人/日、店舗4店のコンパクトタイプだが、東武アーバンパークライン沿線にエキアがなかったため、チャレンジの意味も含めてエキアブランドにした。乗降客数が限られると駅ビジネスとして限定的な部分もあるが、こうした新しい取り組みも行っている。

―― テナント構成は。
 赤塩 利便性を追求していきたいため、結果的に食物販や飲食店など「食」に関連したテナントが中心で、お客様のニーズも高い。これに加え、ファッション、雑貨、サービスなど幅広くリーシングしている。
 一方、コロナ禍を経て、“駅の目的地化”も意識し、駅に来てもらうきっかけづくりとして、谷塚などのようにクリニック系テナントの誘致は、駅の目的地化に資する一つの手段だと考えている。また、新柏のフィットネスクラブも定期的にお客様に来てもらえるので相乗効果に期待している。

―― リーシングの考え方も変わってきました。
 赤塩 これまでは駅にいらっしゃるお客様に立ち寄っていただこうという考えだったが、これに加えて最近は駅に来てもらうという考えに変わってきており、以前は効率性を重視して物販店の比重が高かったが、時代の変化とともにサービス系も増えてきて、テナントの構成も変わってきた。

―― 近々で開業予定の越谷について。
今冬オープン予定の「エキア越谷」のイメージ
今冬オープン予定の「エキア越谷」のイメージ
 赤塩 越谷は元々、改札の前と駅の西口、東口に店舗があり、それらを総称して「ファイン越谷」としていた。今回、駅の耐震補強工事に合わせ、ファインがエキアへと生まれ変わる。隣の新越谷駅に駅ビルの「新越谷VARIE」があるので、エキア越谷は生活に密着した施設とし、食料品やテイクアウトの食物販などが中心の構成になるだろう。間もなく、開業日と出店者様も公表できると思う。今回のオープンはエキア越谷の第1弾と位置づけており、今後第2弾、第3弾も検討中で期待していただきたい。

―― エキアの新設やリニューアルの計画は。
 赤塩 新規物件では竹ノ塚駅の高架下に、食料品や飲食店、生活雑貨など日常の買い物に便利な施設を、24年上期の開業を目指して進めている。これ以外、具体的にお話しできる段階のものはないが、新規開設の施設はエキアとしていき、駅ナカに店舗はあるがエキア化できていない場所のエキア化に取り組む必要があると思う。また、既存のエキアもまだ成長・改良の余地はあり、エキアとして完成した場所はないと思っていて、てこ入れを含め、グレードアップは常に考えている。

―― 最後に一言を。
 赤塩 エキアを通じてお客様や沿線住民に喜んでいただき、沿線価値と東武ブランドを向上させること、駅ビジネスで収益を上げていくことが我々の仕事。施設の改良については、コロナ禍でできなかった部分もあるので、これからは攻めの姿勢に転じ、より良いものを積極的に提案したい。

(聞き手・副編集長 若山智令)
商業施設新聞2519号(2023年10月31日)(1面)
 デベロッパーに聞く 次世代の商業・街づくり No.423

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