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第33回

日東精工 八田工場、ねじ生産中心のファスナー事業の工場、内製装置で一貫生産


2024/4/30

 日東精工(株)(京都府綾部市井倉町梅ヶ畑20、Tel.0773-42-3111)は、1938年に農村地域の綾部に地元有志が機械工業の振興を目的に設立。量水器の生産や現コニカミノルタの下請けとしてカメラ部品の生産などを手がけていたが、カメラは短期間だが自社ブランドで「ルック」と廉価版の「エレガ」を生産し販売していた時期もある。50年代に入り、工業用ファスナーの製造を開始。60年代には精密ねじの販売や自社製のねじ締め機の販売を開始した。現状では、精密ねじなどの工業用ファスナー、ねじ締め機などの自動組立機械、流量計などの計測制御・検査機器、2020年に発足した新事業の医療機器事業を手がけており、ファスナー事業の比率が6割程度となっている。

八田工場の外観
八田工場の外観
 国内製造拠点は創業地である綾部市内を中心に事業を展開しており、ファスナーの生産を手がける本社工場、八田工場(綾部市下八田町菩提10)、自動組立機械の生産を手がける城山工場(綾部市城山町2)、計測制御機械の製造を手がける制御システム工場(綾部市延町野上畑30)がある。

 八田工場は1982年に竣工した、ファスナー事業部の中心となる工場。敷地面積は7万8417m²、従業員数は148人となっている。同社ファスナー事業部では、ねじを中心とした締結品をオーダーメードで生産しており、9万種類以上の製品を月産22億本生産している。八田工場では、0.6~6mmのねじを生産。ピーク時はカセットテープやビデオテープ向けを中心に24時間稼働で月10億本以上の生産を行っていたが、現状は付加価値の高い製品にシフトしており、月8億本程度の生産能力となっている。

 同工場では神戸製鋼所製の材料を採用しており、伸線メーカーを経て納入されている。月600tの材料を使用し、うち550t程度が鉄だが、ステンレス、銅、真鍮、アルミなども使用。チタンや銀もレアな材料として使用することもある。ねじは線材から圧造機で頭の部分をつくり、転造機でねじ山の部分を製作する。切削で製造する場合に比べ、削りカスなどのロスが出ないなどメリットがあるが、金型を必要とするため、ある程度の生産量を必要とする。同社では、試作を切削で対応し、量産から転造機で対応することを提案している。

 工場建屋内には、圧造機150台、転造機150台の計300台の機械が稼働しており、月4億本程度のねじの生産を行っている。建屋内には、多段機なども導入しており、特殊な製品に対応している。

多くの装置が並ぶ工場内部
多くの装置が並ぶ工場内部
 同工場で稼働する設備や金型などの工具は基本的に社内で製作しており、内製装置による一貫生産体制を構築している。本社に技術部門があり、故障時などに対応するため、社外の製造装置に比べスピーディーな対応が可能となっている。また、作業者ができるだけ作業をしやすい環境を整備しており、省人化も進んでいる。

 別の建屋に精密棟があり、ここでは0.6mmまでの精密ねじを中心に生産している。現状精密製品の7割程度がゲーム機向けとなっている。

 八田工場で製造されたねじは、本社工場で熱処理とめっきの工程を経る。その後、八田工場および協力会社で検査工程、包装工程を経て納品先へと出荷される。検査工程でも自社製の装置を活用しており、包装工程もできるだけ自動化している。

 八田工場では、線材倉庫の建設を計画している。現在線材は本社工場の倉庫に納品され、そこから八田工場や協力会社などへ配送されるが、直接八田工場に納品することで輸送コストを削減する計画。24年内には建屋が完成し、25年には稼働する予定である。

 同社では年間15億円程度の設備投資を実施しており、24年度も同程度の投資を計画している。機械設備の更新や新規導入などを実施する予定で、圧造・切削などの設備を拡充していく。

荒賀誠社長
荒賀誠社長
 同社代表取締役社長の荒賀誠氏は「地域に根差したビジネスを目指した。綾部市に拠点を置きながら地域の活性化にも貢献していきたい」と語った。

(編集長 植田浩司)

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