HILLTOP(株)(京都府宇治市大久保町成手1-30、Tel.0774-41-2933)は、精密機械部品の加工を中心に手がけており、職人技とされていた切削加工をデータ化し、工場の24時間無人稼働を実現している。
同社は1961年に山本鉄工所として設立。部品加工事業を手がける下請け型の企業で、大量生産品をルーティンでこなしていたが、当時受注の8割を占めていた企業との取引を止めて、単品物に特化し多くの注文をさばく方向に方針を転換した。
現状では月間約4000種におよぶ試作品を製作しており、受注の約8割が1~2点の単品物となっている。「HILLTOP System」と呼ぶ同社オリジナルの生産管理システムを構築。職人技とされていた切削加工をデータベース化し、受注から部品製作・納品までのすべてにおいてITを駆使し、多くのプロセスを自社開発したソフトウエアでデジタル化しており、これにより多品種・単品・夜間無人加工を実現し、常に最適・最短の工程を構築して対応。デザインから設計、表面処置、組立までをトータルでサポートしている。バーチャルシミュレーションで安全を確認し、エラーが出ない安全なプログラムであることを確認できるまでシミュレーションすることで、機械に人が張り付く必要をなくしている。そのため、ファーストロットから無人で加工することができる。また、業務に詳しくない人でも作業が可能だ。
このデータベース化したものをAIに学習させたクラウドエンジニアリングサービスの「COMLogiQ」の提供を開始しており、加工プログラムの作成を自動化している。「人間はルーティンから解放されると進化する」(山本昌作相談役)との考えから、ルーティン化していたプログラム作成を自動化した。
同社のメーンは加工事業だが「これだけでは面白くない」(山本相談役)ということで、開発業務も開始。DXソリューション事業やアモルファスモーターコアの開発なども手がけている。
現在の本社は2007年12月8日竣工で、城陽市から移転してきた。日産車体の工場跡地で京都府が企業誘致を進めていた。施設は5階建て延べ床面積約5000m²で、製造エリアは約1650m²。通常製造業の場合、製造エリアの方を広くとるが、同社ではオフィスエリアなどの方が広くとられている。工場稼働開始時の従業員は36人だったが100人収容できる工場を建設した。工場の4階は社員食堂などのスペースとなっており、立地時から社員食堂を導入している。前工場で出入りの弁当屋さんに頼んで入ってもらったが、当初は断られていた。しかし、同社の食堂だけでなく、周辺に立地した企業にも進出できるメリットを説いて、導入にこぎ着けた。現在では、その弁当屋さんは弁当をやめて社員食堂の業務に集中している。
3階は開発フロアとなっている。3Dプリンターで形状を確認し、OKが出たら本番加工する。何を作るかという要望に対応する部屋で光造形機、レーザーカッターなどが置かれており、SEが8人いる。
2階はオフィススペースで、従業員がいる間にできることをやる場所となっている。営業、プログラム、購買、総務が入居している。同社では、ジョブローテーションですべての従業員がすべての部署を経験するため、ほとんどの営業マンがすべての部署を経ている。また、女性も現場を経験している。「本当に人を育てるにはジョブローテーションをかけることが必要。誰でもできるようなものにコンプリートしていく。利益よりもモチベーションが重要で、効率を下げてもジョブローテーションを行う」(山本相談役)。
1階には検査室があり、社員は3人であとはパートの従業員で対応している。3次元測定器を新たに導入し、社内で開発したIICというソフトを活用している。
生産設備は5軸のマシニングセンターが10台、横型マシニングセンターが1台など。刃物の本数が多い装置が中心で、1台400~500本のツールを用意している。3人の社員が品物のパレットを取り付けている。現状パレットの取り付けは人が担当しているが、そこも無人化していく方針だ。
同工場の将来については、「現状、経営の意思決定には関与していないが、現経営陣はもう少し量産寄りの仕事も手がけて行きたいようだ」(山本相談役)としている。
(編集長 植田浩司、協力・NCネットワーク)