商業施設新聞
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No.975

ビューティーがつくるjamセッションへの期待


松本顕介

2024/10/1

 「jam(ジャム)」と聞いて何を連想するだろうか。まず果物の「ジャム」のほかに、詰め込まれることや混み合うことの意味がある。混雑や渋滞などの意味合いである「トラフィックジャム」などがある。しかし、音楽好きなら「jam」と聞けば、ミュージシャンが集まって即興的に演奏をする「jamセッション」をイメージするのではないか。ロックやジャズで演奏中のひらめきやイマジネーションによる「即興演奏=jamセッション」は、楽器の弾けない筆者には憧れの世界だ。

 (株)東急百貨店は、2020年3月に東急百貨店東横店、23年1月には再開発に向けて東急百貨店本店が営業を終了した。これに際して、百貨店で扱っていたコスメ・ビューティーの商材については「渋谷ヒカリエ ShinQs」のコスメフロア、「渋谷スクランブルスクエア」6階のコスメフロア「+Q ビューティー」、「SHIBUYA109渋谷店」1階のセミセルフのコスメ売り場「ドレステーブル by ShinQs ビューティー パレット」の3つの売り場に移管した。これらの売り場では約90ブランドを展開している。23年度の売上高はビューティーカテゴリーで前年度比10%増を確保するなど、好調を維持している。こうした好調の背景には若年層の獲得がある。従来型の百貨店の顧客層は40、50代が中心だが、+QはZ世代が中心。Z世代の集客に向けてサイネージを多用して動きを出すほか、高揚感のある店舗環境を演出していることが奏功しているのだ。さらに約40ブランドを高密度編集で揃え、メークブランドを中心にラインアップしている。期間限定イベントではインフルエンサープロデュースやD2Cのコスメブランドなど、若年層に人気の話題のブランドを誘致した。中には常設に進むブランドも増えているという。

 東急百貨店ファッション・雑貨統括室ビューティー・自主MD部長の蛭田記章氏は、商業施設新聞の取材で「渋谷はかつてギャルの街だったが、我々は渋谷を日本有数のビューティーの街、ビューティーの聖地として認知させたい。新しいものをどんどん提案できる仕組みをつくり、ここに来れば新しい発見や、ワクワクドキドキ、ビューティーの中でもエキサイティングな街にしていきたい」と意気込む。

渋谷スクランブルスクエア6階のコスメフロア「+Q ビューティー」
渋谷スクランブルスクエア6階のコスメフロア「+Q ビューティー」
 現在、ドレステーブルが中高生のアルファ世代、+QがZ世代、ShinQsが30代以上と顧客層が大別されているが、Z世代が増えても、年齢層の高い顧客が嫌がることはなく、ビューティーに関心の高い客層は世代を問わず+Qを利用しているようだ。蛭田氏は「渋谷は多様なイメージのある街、多様性を推進する街、最新・最旬のトレンドを発信する街、意外性、常に好奇心を刺激する、世界中から注目度の高い街だと思っている」と話す。そんな渋谷をビューティーの聖地にしたいという思いから23年12月、「渋谷ビューティージャム」をスタートし、イベントやプロモーションなどを精力的に行っている。

 様々なビューティーカテゴリーが高密度に編集されるなど、多彩なブランドが同居するのもjam。それを目当てに渋谷に来街して混み合いザワザワ感が生まれるのもjam。まさにJam×jamで、何か新しいひらめき(jamセッション)が生まれるのではないかと予感した。ちなみに、東急百貨店に取材したのは7月の終わり。連日の猛暑日で真っ黒に日焼けしていたが、取材した担当の方から「男性もスキンケアをなさる時代です。松本さんもお試しになられては」とのアドバイスを受けた。来季は遅ればせながらスキンケアにチャレンジしてみようか。
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