電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第602回

増え続けるロボット支援手術


大手医療機器メーカーが続々参入

2025/5/16

グンゼと京セラが輸入販売

 国内における最近のトピックスを見ると、グンゼ(株)の100%子会社グンゼメディカル(株)は、24年7月に、Medical Microinstruments社(MMI、米国)の手術支援ロボットシステム「Symani Surgical System」の日本国内独占販売権を取得した。

 Symaniは、直径0.3mmレベルの微小な血管やリンパ管などの吻合、縫合、結紮などを可能とする世界最小の手首付きロボットで、マイクロサージャリーやスーパーマイクロサージャリーの複雑さに独自に対応するロボットテクノロジーを搭載した手術支援プラットフォーム。

 MMIは、欧州では19年にCEマーキングを取得し、24年4月には米国FDAを取得しており、アジア圏においても、日本のほか、韓国や台湾でも製造販売承認取得を予定している。

 京セラ(株)(京都市伏見区)は、人工膝関節手術支援ロボット「CUVIS-jointシステム」(キュービス・ジョイント・システム)の販売を25年3月から開始した。同製品は、キュレクソ社(韓国ソウル市)が25年3月17日に日本国内における製造販売承認を取得した。

 日本国内では高齢化に伴い、人工関節置換術の手術件数が増え続けており、人工関節置換術においては、手術支援ロボットの導入が広がりを見せている。販売開始したシステムは、手術前に得た患者の画像データを基にした手術の計画や、手術中の術野内での位置関係を把握し、整形外科手術における骨切除を制御することで、適切な人工膝関節の設置を補助する手術支援装置である。

 京セラは整形外科手術用ロボットを国内導入するにあたり、販売と保守メンテナンスを担当し、キュレクソ社は製造・供給・機能向上を担当する。

全世界で30社以上が展開

 世界の主な手術支援ロボットは次のとおり。システムには、ダビンチのような医師が操縦台(コンソール)の前に座って手術ロボットを操作するタイプと、患者の傍らに寄り添って腹腔鏡手術のようにコンピューター制御されたマニピュレーター(鉗子などを装着したアーム)を操作するタイプがあり、また、システムの手術の対象部位は頭頸部、呼吸器、循環器、上部・下部消化器、脊椎・脊髄、関節など広い領域をカバーしている。
▽AKTORmed(SOLOASSISTⅡ・IIS:Robotic camera control/腹腔鏡・胸腔鏡手術用ロボットカメラ制御)
▽朝日サージカルロボティクス(株)(旧社名:アサヒサージカルロボティクス(株))(ANSUR、腹腔鏡手術の協働型助手ロボット/最大3本のロボットアーム/朝日インテック(株)の子会社)
▽Asensus surgical(Senhance Surgical system、コンソールタイプであるがオープンプラットフォームのため患者をも見ることができる/マルチポート/ロボットで強化されたシングルポートシステムの腹腔鏡手術プラットフォーム「SurgiBot システム」も開発/軟部組織・腹部など)
▽avateramedical(avateraシステム、コンソールタイプ/EU(CE)で婦人科・泌尿器科など)
▽CMR Surgical(Versius、アーム1本に1台の独立したポータブル手術ロボットを複数台組み合わせ/設定が自由/胸部・一般外科・婦人科・大腸・泌尿器科)
▽DePuy Synthes(Johnson&Johnsonの事業部門)(VELYSロボットソリューション/人工膝関節全置換術を支援する手術台取付型の手術支援ロボット)
▽Dex Surgical(Dex Device、腹腔鏡手術にマイクロメカニクス・組み込み電子工学・ソフトウェア エンジニアリングを含むメカトロニクスシステム導入)
▽Distalmotion(dexterシステム、完全ロボット手術およびロボット手術と腹腔鏡手術の切り替え可能/EUで一般外科・泌尿器科・婦人科/アメリカ(FDA)で成人の鼠径ヘルニア修復)
▽ENDO ROBOTICS(RoSE Platform、既設の内視鏡に簡単に装着可能な外科用マニピュレータ)
▽Freehand(freehand robot/ロボット支援のメリットをすべての腹腔鏡手術および胸腔鏡手術に導入/一般外科・婦人科・泌尿器科・胸部外科など)
▽Intuitive Surgical(ダビンチ、ダビンチSPはシングルポート(アームが1本)/従来型のロボットでは操作に制限があった頭頸部領域・乳腺領域・進行した一部高難度症例に適用拡大)
▽Johnson & Johnson(AURIS Monarch Platform、手術ロボット会社Auris Health買収/経口/気管支・肺)
▽KAIST(韓国科学技術院)(K-FLEX、口・肛門・尿道を通って体内に挿入可能な柔軟な内視鏡手術ロボット/18年9月に豚の胆嚢の病変組織を除去)
▽Levita(MARS platform/磁気手術/胆嚢・前立腺・結腸直腸・肥満手術などさまざまな腹部手術)
▽Medical Surgery Technologies(MST)(software-based image analytics information platform、腹腔鏡手術に画像誘導技術AutoLap導入)
▽(株)メディカロイド(hinotori、コンソールタイプ・3Dビューア/泌尿器科・消化器外科・婦人科・胸部外科)
▽Medrobotics(Flex Robotic System、経口ロボット手術/頭頸部・咽頭)
▽Medtronic(Hugo RAS System、アームカート独立・オープンコンソール/泌尿器科・婦人科など)
▽Meerecompany(REVO、コンソールタイプ・クローズド3DHDイメージビューア/一般外科・婦人科外科・泌尿器科など)
▽MicroPort Scientific(Toumai、コンソールタイプ・クローズドイメージビューア/適用可能:泌尿器科・一般外科・婦人科・胸部外科/多数の5G遠隔手術(250件以上・合計40万kmを超える距離))
▽MIRO(DLR MiroSurge 遠隔手術システム/コンソールタイプ/力覚フィードバック)
▽MOON(Maestro、オープンタイプ/2アーム・標準の腹腔鏡カメラと互換性)
▽Quantum Surgical(Epione、一般的な画像システムと互換性のオープン・ロボット・ソリューション/医師が好みのアブレーション技術(高周波、マイクロ波、冷凍アブレーション、不可逆的電気穿孔法)で治療/肺・肝臓・腎臓・膵臓など)
▽リバーフィールド(株)(Saroa(サロア)、コンソールタイプ・オープンフィールドビューア/世界初の「力覚」再現/オープンプラットフォーム:様々なメーカーの内視鏡・モニタ・電気メス装置を組み合わせて使用することが可能)/(EMARO、執刀医自ら意のままに内視鏡操作を実現する内視鏡ホルダロボット)
▽天津大学(MicroHand S/SⅡ、コンソールタイプ/当初オープンフィールドビューア・その後クローズドイメージビューア/14年3月に胃穿孔修復と虫垂切除術の臨床試験)
▽TITAN MEDICAL(Enosロボットシングルアクセス手術システム、メドトロニック社およびインテュイティブサージカル社とIPライセンス契約)
▽TransEntrix(21年2月に前出Asensus surgicalに社名変更)
▽Vicarious Surgical(BetaⅡロボット手術プラットフォーム、360度カメラと2本の手術器具を備えたロボットアーム/腹壁ヘルニアなど)
▽Virtual Incision(MIRA手術システム、世界初の小型ロボット手術/結腸切除から将来的に婦人科・一般外科・泌尿器科・その他の軟部組織および固形臓器の手術)
▽Virtuoso Surgical(内視鏡手術システム、直径1cm未満の単一ポートにロボット制御の針サイズのマニピュレータ2台搭載/神経学・胸部・整形外科・泌尿器科・婦人科の処置を含むほぼすべての外科手術領域)
▽XACTRobotic(XACT ACE Robotic System、CTガイド下画像誘導計画とモニタリングを統合/正確に目的のターゲットに到達)
▽Zimmer Biomet Holdings(ROSAシステム、人工膝関節置換術・人工股関節置換術・人工肩関節置換術/X線検査のみで術前計画ができる)

SDKI Analyticsの予測は37年に1407億米ドル市場へ

 なお、市場調査会社のSDKI Analytics(東京都渋谷区)は、24年10月に『ロボット手術装置市場の発展、傾向、需要、成長分析および予測2025-2037年』の概要を公表した。それによると、ロボット手術装置市場規模は24年の約826億米ドルから増加の一途をたどり、37年までに約1407億米ドルに達し、この期間中のCAGRは約6.17%と予測している。また、37年の地域別の比率は、北米が38%、次いでアジア、欧州、ラテンアメリカ、中東・アフリカと予測している。


電子デバイス産業新聞 編集委員 倉知良次


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