活況を極めるJPCA Show(MEIKOのブース)
JPCA Show 2025(第54回国際電子回路産業展)は6月4日から6日の3日間において開催されたが、超活況のうちに終了した。この催しには様々な展示会が併設されており、「電子機器トータルソリューション展」という名称でも知られている。マイクロエレクトロニクスShow、実装テクノロジー展、さらには産業タイムズ社が主催するAIデバイス展など6つの展示会が鳥瞰的に観られることで来場者の人気を呼んでいるのである。
全体の出展者数は442社を数え、前年を上回っている。また、来場者総数は約5万人となり、これまた前年を上回っているのである。特に素晴らしいと思えたのは海外からの出展者が多いことであり、75社が参加し、昨年の38社からほぼ倍増の勢いであった。とりわけ目立っていたのが中国企業であり、半導体やプリント基板などの産業を伸ばそうという勢いが感じられたのだ。
そしてまた、今年の特徴はチップレット、半導体パッケージなどに関連する展示会が多く、時代を反映してAIをテーマに打ち出す企業も多かった。ちなみに、産業タイムズ社が主催する「半導体・オブ・ザ・イヤー2025」も開催されたが、半導体デバイス部門のグランプリはドイツのインフィニオン テクノロジーズが受賞したのである。
基調講演も素晴らしい内容で多く組まれた。特に出色であったのは、経済産業省 商務情報政策局情報産業課/デバイス・半導体戦略室室長の清水英路氏の語る「日本の半導体戦略の現状と今後」である。よく知られているように、石破茂首相が打ち出した方針である「2030年までの50兆円の官民投資を引き出すための戦略」をベースに経産省を中心に超アクティブな戦略が組まれていることがよく分かった。
特に、30年に国内で半導体を生産する企業の合計売上高を15兆円に持っていくという戦略を進めており、20年段階の5兆円から3倍増という大型計画を打ち出している。このために、50%または3分の1の補助金を政府が出すというのは、サプライズなことではある。そしてまた、半導体デバイスだけでなく、半導体製造装置、半導体材料などにも経産省の補助金を出すという柔軟な考え方を取っているのも評価できる。
「半導体をはじめとする電子デバイスに関しては、国内ですべてのサプライチェーンが完結できる状況を整えたい。また、後工程の重要性も高まっており、これに関連してパッケージ基板などにも注力したい。さらに言えば、メモリーやGPUなどスポットライトを浴びるデバイスだけでなく、日本が得意とするパワー半導体、マイコン、アナログなどにも補助金を出して支えていきたい。これらについては、10年間にわたり、最大20%の法人税控除を実行したい」(経産省/デバイス・半導体戦略室の清水室長)
そしてまた、ニッポンの半導体を伸ばすためには米国とのタイアップ、インドとのパートナーシップも重要だという考え方を示しており、これまた注目すべきだろう。現時点で、我が国ニッポンは米国に1兆円の半導体を輸出しているのだ。そしてまた、超親日的なインドともしっかりと組んで、ともに繁栄をはかるという考え方も重要であろう。
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泉谷 渉(いずみや わたる)略歴
神奈川県横浜市出身。中央大学法学部政治学科卒業。35年以上にわたって第一線を走ってきた国内最古参の半導体記者であり、現在は産業タイムズ社 取締役 会長。著書には『自動車世界戦争』、『日・米・中IoT最終戦争』(以上、東洋経済新報社)、『伝説 ソニーの半導体』、『日本半導体産業 激動の21年史 2000年~2021年』、『君はニッポン100年企業の底力を見たか!!』(産業タイムズ社)など27冊がある。一般社団法人日本電子デバイス産業協会 理事 副会長。全国各地を講演と取材で飛びまわる毎日が続く。