ソニーセミコンは、国内半導体企業ランキングにおいて、第1位を保持している。2026年3月期は約2兆円の売上高(見込み)であり、前期の1兆7990億円に対し、10.6%の伸びとなるのである。主力となるモバイル向けCMOSイメージセンサーが全体的に好調であった。
スマートフォンなどのモバイル向けについては、センサーサイズの大型化など高付加価値化が進んだことで単価が上がってきており、これが追い風になった。ただし、スマホの台数そのものが伸び悩んでおり、特に中国スマホはメモリーの品薄・高騰によって売れ行きが悪く、26年度(27年3月期)における大きな不安材料となりそうだ。
次世代の自動走行運転に向けてのソニーの戦いは有利に進んでいるとみられる。車1台につき、32個のCMOSイメージセンサーが搭載されるとも言われており、自動車は仮に年産1億台を保持するとして考えれば、何と32億個のCMOSイメージセンサーが必要になるのである。ちなみに、30年度の車載カメラ市場は19年度比で7倍以上に拡大すると見込まれている。ソニーは、グローバルトップOEM20社のうち85%の取引をすでに実現しており、今後さらなるシェア拡大を図っていきたい考え。
ソニーセミコンは、設備投資についても積極姿勢である。長崎TECのFAB5は、最新鋭のモバイル向けセンサ―の新工場となるものであるが、3期構成で立ち上げた。ステップ1(クリーンルーム面積1万m²)、ステップ2(同1万3000m²)、ステップ3(同1万3800m²)という大型スケールの工場となる。
熊本県合志の新工場(熊本第2工場)もまた、モバイル向けセンサーの拡大に向けて作られたものであり、建屋はすでに完成している。平屋建てという珍しいフォーマットで作られたこの工場は、300mmウエハーで月産1万枚の能力を持つものであり、供給開始は29年5月を予定する。経産省は、この投資額1800億円に対し、約1/3の最大600億円を助成することを決めたのだ。今後ソニーは、さらなる半導体新工場を計画していることは間違いのないところであり、国による半導体支援金は非常に感謝すべき出来事と言えるだろう。
構造改革という点でもアクティブな取り組みを見せている。まずは、イスラエルの通信用半導体子会社を売却することを決めた。売却額は16年の取得時に投じた250億円を大きく下回ると見られている。非中核の事業を分離し、スマホ向けや車載向けのセンサーに集中するためである。
そしてまた、新規開発という点でも目を見張るものがある。世界初の2層トランジスタ画素積層型のセンサーの開発に成功したが、これはフォトダイオードと画素トランジスタを別々の基板に形成して積層したものだ。ダイナミックレンジ拡大とノイズ低減を実現し、画素サイズが小さくても撮像特性を大幅に向上させている。画期的に感度が上がるわけで、逆光、室内、夜景などにおいて、高画質な撮影が可能となる。
ソニーセミコンの飛躍的な成長がここにきて見えてきたわけであり、ニッポン半導体の代表格として今後も頑張ってもらいたいものだ。
■
泉谷 渉(いずみや わたる)略歴
神奈川県横浜市出身。中央大学法学部政治学科卒業。35年以上にわたって第一線を走ってきた国内最古参の半導体記者であり、現在は産業タイムズ社 取締役 会長。著書には『自動車世界戦争』、『日・米・中IoT最終戦争』(以上、東洋経済新報社)、『伝説 ソニーの半導体』、『日本半導体産業 激動の21年史 2000年~2021年』、『君はニッポン100年企業の底力を見たか!!』(産業タイムズ社)など27冊がある。一般社団法人日本電子デバイス産業協会 理事 副会長。全国各地を講演と取材で飛びまわる毎日が続く。