電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第634回

TSMCの4~6月期売上は4兆4075億円で相変わらずの強さを見せつけている


シンガポールの世界先進積体電路の新工場にも出資し、意気盛ん

2025/7/25

 今や事実上の半導体生産の世界チャンピオンであるTSMCの勢いがまったく止まらない。2025年4~6月期売上は4兆4075億円となっており、アナリストの予想を281億円上回ったのだ。AIへの関心の高まりから需要が大きく増加しており、これが大きなインパクトとなっている。

 この勢いでいけば、TSMCの売り上げは前年の13兆円強を大きく上回る16兆~17兆円にも達することになり、ぶっちぎりの強さを見せつけることになる。まさにファンドリーの時代到来であり、世界最先端の2nmプロセスを実現できるTSMCには多くの関心と期待が高まっているのだ。

 そしてまた、ファンドリーという点でTSMCに挑戦してきたインテルやサムスンは、ここにきてはメタメタになっている。大赤字であり顧客の数は減るばかりであり、両社ともにファンドリー事業から撤退または売却という予想がはっきりと出始めている。もはや、TSMCのライバルはほとんどいない。

 ただ、あえて言えば、ニッポンの期待の星であるラピダスは近く開発棟が動き出すと言われているが(注・7月18日に2nm品の試作品を公開)、TSMCと並ぶ2nmプロセスを作れる企業として、世界的な関心を集め始めている。そしてまた、ハイエンドではまったく勝負にはならないものの、中国のファンドリー企業であるSMICが急速に売り上げを伸ばしていることにも注目に値する。

 一方、TSMCが出資する世界先進積体電路(Vanguard)は、シンガポール新工場での生産を27年上期から26年末に前倒しする可能性が出てきている。投資額は1兆1300億円。この新工場はNXP semiconductorsとの合弁事業であり、多くの顧客がシンガポールに新設されるこの300mm工場に強い関心を示しているのである。

 この新工場では、最先端のAI向け半導体は手がけることになっていないが、車載用や産業用の半導体では重要な役割を示すと見られている。TSMCはシンガポールにも新たな拠点を築きつつあるのである。

JASMは第2工場含め拡張投資に暗雲
JASMは第2工場含め拡張投資に暗雲
 そうした動きの中で、TSMCは27年7月までにGaNファンドリー事業から撤退することを決めた。要するに、この分野は同じく台湾のPSMCに任せようということなのだ。良くない動きとしては、TSMCは日本での熊本第2工場建設を延期する方針であり、これはトランプ氏による米国に集中投資しろ!という指令がTSMCに出されたことによるものだ。まことにもって困った男、それはトランプなのである。


泉谷 渉(いずみや わたる)略歴
神奈川県横浜市出身。中央大学法学部政治学科卒業。35年以上にわたって第一線を走ってきた国内最古参の半導体記者であり、現在は産業タイムズ社 取締役 会長。著書には『自動車世界戦争』、『日・米・中IoT最終戦争』(以上、東洋経済新報社)、『伝説 ソニーの半導体』、『日本半導体産業 激動の21年史 2000年~2021年』、『君はニッポン100年企業の底力を見たか!!』(産業タイムズ社)など27冊がある。一般社団法人日本電子デバイス産業協会 理事 副会長。全国各地を講演と取材で飛びまわる毎日が続く。
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