商業施設新聞
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第505回

(株)東急モールズデベロップメント 代表取締役社長 社長執行役員 小山晃司氏


25年度上期は前年超えの売上高
渋谷のリーシングなど事業が拡大

2025/11/18

(株)東急モールズデベロップメント 代表取締役社長 社長執行役員 小山晃司氏
 (株)東急モールズデベロップメント(東京都渋谷区)が展開する「二子玉川ライズ・ショッピングセンター」などの商業施設が好調だ。客数、売上高ともに順調で、過去最高売上高を更新しそうな施設もある。また、同社はこれまで東急線沿線の施設を運営してきたが、今後は渋谷の施設でもリーシングを担当することになり、事業範囲が拡大している。代表取締役社長 社長執行役員の小山晃司氏に直近の動向、目指す方向性などを聞いた。

―― 2025年度も半分が経過しました。足元の動向は。
 小山 24年度は運営施設の合計売上高が前年比102%、レジ客数が107%と堅調に推移したが、25年度はこれを上回る勢いだ。4~8月の数値として全施設の合計売上高、レジ客数がともに104%で推移している。主要施設の動向として、二子玉川ライズS.C.は24年度の売上高が442億円で過去最高を記録したが、今年4~8月の売上高は前年比106%となり、この調子で推移すれば過去最高を更新するだろう。「グランベリーパーク」や「たまプラーザ テラス」も好調で、いずれも4~8月の売上高は前年比107%となり、レジ客数もしっかり伸びている。二子玉川ライズS.C.とグランベリーパークに共通しているのはシネコンがあること。今年は特にヒット作に恵まれていて、映画をきっかけに来館し、鑑賞前後に買い回っていただいている。

―― グランベリーパークと二子玉川ライズS.C.では改装も進めています。
 小山 グランベリーパークは昨秋・今春に計36店が新規・改装オープンし、それに続く改装として今秋に新規6店、移転リニューアルとして7店オープンする。一連のリニューアルで客単価の向上に加え、より広域から集客したい。現在は10km圏内が中心だが、これを広げたい。
 昨秋以降の改装でスポーツ・アウトドア系の充実が進んだ。施設自体が公園と融合したオープンモールであることからスポーツ・アウトドアの相性は本当によく、ゴルフ関連の店舗も堅調だ。まとまったリニューアルはこの秋で一段落となり、公園を活用したイベントなどにも注力していきたい。

―― 二子玉川ライズS.C.の改装のポイントは。
 小山 9~10月に新店6店、既存店5店が改装オープンし、ラコステなどが新規出店するが、館のコンセプトでもある上質な日常の実現を意識した。改装に加え、館に足を運んでもらうには駅前広場の「ガレリア」の活用も重要になるだろう。24年は年間200回イベントを実施し、稼働日数としてはさらに多くなった。行けば何か面白いことがある場とするにはイベントが大事になる。二子玉川ライズに限らずイベントは今後も注力したい。

―― 最近、区画単位の事業として「MY SWEETS」を拡大しています。こちらの動向は。
 小山 MY SWEETSはスイーツ店などを誘致し、週替わりで催事展開するもので、これまでは東急線沿線のエキナカ施設などで展開していたが、沿線外の施設として24年9月に「テラスモール湘南」で、今年9月には「MARK IS 葛飾かなまち」で出店した。MY SWEETSで反応が良ければ当社が運営する常設区画へお誘いができるし、リーシングの接点を増やす意味でも効果的だ。一方で、同じ商品・商材を販売してもエリアが異なれば、売り上げはかなり違う。ここはまだ我々も勉強中で、今後も検証を進めていきたい。

―― ポップアップ区画ではCanvas βaseも展開していますが、違いは。
 小山 Canvas βaseは24年3月に武蔵小杉駅の改札前、10月2日に渋谷駅直結の「しぶちか」でオープンしたが、MY SWEETSよりも前段階、いわば原石を探すイメージだ。MY SWEETSは催事店の展開に慣れている方も多いが、Canvas βaseはこれから商売を始めたい方、商業施設でチャレンジしたい方などが出店している。商業施設は全国的に似た顔ぶれになってしまうのが課題だが、この事業を通じて新しいテナントを誘致することにもつなげたい。すでに武蔵小杉に出店した店舗で、東急グループの他施設に展開する事例も生まれている。

―― Canvas βaseを含めて、貴社の事業が広がっています。
 小山 直近では横浜市旧市庁舎街区活用事業「BASEGATE横浜関内」の商業エリアの運営を受託することが決まった。さらに東急グループの商業施設運営事業を再編し、渋谷で運営・開発する商業施設のリーシングは当社が主に担当することになった。渋谷では大型施設の開発が複数進んでおり、お付き合いするテナントの幅が広がる。渋谷のリーシングを通じて知り合った方に、次は沿線の施設での出店提案をすることがあるかもしれない。
 当社は、SC運営会社から商業企画運営会社へと進化すると方針を発表しており、リーシングだけでなく施設の企画段階から知見を提供していきたい。企画力を高めれば将来的に他社の施設を受託することにもつながるだろう。



(聞き手・編集長 高橋直也)
商業施設新聞2618号(2025年10月21日)(1面)
 デベロッパーに聞く 次世代の商業・街づくり No.470

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