筆者は2025年5月9日に
「次世代HBM用ボンディング技術」というテーマで、フラックスレス(Fluxless)ボンディングとハイブリッドボンディングについて執筆した。次世代HBMのボンディング技術としてハイブリッドボンディングへの転換が有力視され、装置各社の開発が活発化している。だが、まだ費用面や技術的な問題で移行タイミングが予想より遅れるとの意見も出ており、既存のTCボンダーの体制がより強固になる可能性も高まっている。
ハイブリッドボンディングは、チップとチップの間をつなぐマイクロバンプを除去し、銅(Cu)と銅を直接接合する方式である。信号伝送経路を大幅に短縮してデータ転送速度を向上させ、パッケージの厚さを画期的に削減できるため、HBMの次世代主要プロセスとして注目されてきた。だが、業界内ではメモリーメーカーがハイブリッドボンディングへの移行を前提に開発を進めているものの、そのペースが落ちているもようだ。
理由としては、依然として技術的な問題が残っていることがある。ハイブリッドボンディングはウエハーの表面を平坦に加工するCMP工程が必須であるが、問題はボンディングの過程で発生する熱がウエハー表面を微細に変形させる点である。表面に少しでも不良があると、チップ間の接合不良につながる。また、微細な埃や異物汚染にも極めて脆弱で、生産歩留まりを低下させる構造的な弱点を持っている。この問題を完全に解決した事例はないとみられる。
また、そのほか費用的な問題も存在する。ハイブリッドボンディングに使われる費用は従来のTCボンダーより3倍から最大5倍と言われている。単に装置だけ交換するレベルではない。既存HBM生産ラインはTCボンダーの規格に合わせて設計されていることから、ハイブリッドボンディングに合わせた新たな規格を再設計しなければならない問題に加え、初期稼働の段階ではむしろ生産能力が減少すると分析されている。
さらに、TSMCのように独占的な地位を確報しているファンドリーと異なり、HBM市場は、SKハイニックス、サムスン電子、マイクロンの3社競争の構造で、製造原価の上昇を顧客にそのまま転嫁することは難しい。エヌビディアが上昇したHBM価格を受け入れ、ハイブリッドボンディングの導入を急ぐ可能性は低いとの見方が業界で広がっている。
■ハンミ半導体は新型TCボンダ―で市場対応
ハイブリッドボンディングへの移行が遅れれば遅れるほど、TCボンダーの寿命サイクルが延長される構造となる。このような状況において、HBM向けTCボンダーで市場トップシェアを維持しているハンミ半導体は今後の需要に対応するため、新型TCボンダー「ワイドTCボンダー」を26年下期に発売すると発表。HBMの積層数の増加が物理的に限界に近づき、チップの面積を広げて容量を増やす大面積設計へとの動きが見えている。
このようにトレンドに合わせ、ハンミ半導体は今回のワイドTCボンダーでHBM5とHBM6まで対応していく。従来プロセスの信頼性と歩留まりを維持しながら、大型チップまで対応できることで、ハイブリッドボンディングが市場に本格参入する前までトップシェアを維持する計画だ。
■韓国装置メーカーの追撃
ハンファセミテックの第2世代ハイブリッドボンダー「SHB2 Nano」
ハンミ半導体以外にも、韓国ハンファグループのハンファセミテックも直近で第2世代ハイブリッドボンダー「SHB2 Nano」の開発を完了し、商用化を加速している。ハイブリッドボンダーの開発とともに、TCボンダー市場での地位もさらに強化する方針で、26年にはボンディングヘッド(head)のサイズを拡大したTCボンダーや、チップとチップの間隔を狭めたフラックスレス(Fluxless)TCボンダーなどを次々に発表する予定となっている。
また、サムスン電子の子会社であるセメスも関連装置のテストに並行して量産準備を進めている。特にサムスン電子はHBM市場の主導権を取るためにハイブリッドボンディングを予想より早く導入する可能性が高いとみられている。子会社であるセメスの装置を活用してハイブリッドボンディングでの早期量産が成功するとHBM市場全体に大きな影響を起こす可能性がある。だが、韓国以外の海外装置メーカーでもハイブリッドボンディングの研究開発は進められており、プロセス移行で先行したとしても、必ずしも先行者利益を得られるとは限らない。
このように、HBMの次世代ボンディング市場は現状でコストと歩留まりが優先される状況となっている。ハイブリッドボンディングの時代がいずれくることは間違いないが、そのタイミングが今年か、それとも27年、30年になるかはまだわからない。当面、メモリーメーカーはTCボンダーを維持しつつ、ハイブリッドボンディングの成熟化を待つという展開が最も現実的なシナリオといえる。
電子デバイス産業新聞 編集部 記者 嚴 智鎬