電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第664回

「想いはカタチになる」を合言葉に半導体装置部品に取り組む!


長崎の岸川製作所は新工場を武器に売上20億円を計画

2026/3/19

 一つひとつの物事に立ち止まる時は、「できる」を想像する。できない理由を考えるより、「できる」為の手段・方法をたくさん考える。想いはカタチになる。想いを込めて行動した者、作ったものは良い結果が得られるだろう。良いモノはきっと、未来を切り開く。

 このフレーズは、岸川製作所(長崎市)という中小企業の会社案内のイントロに書かれていたものである。文学的であり、哲学的であり、そしてまた「ニッポンのモノ作り」を表現するものでもある。

 さて、岸川製作所は1967年に岸川工作所として創業し、三菱電機の協力工場に認定され、小さくはあるが、確実に社業を拡大していった。1995年にはステンレス板金加工をスタートし、半導体関連事業に参入する。ところが、2001年になって半導体関連を止めて、食品機械関連に切り替えてしまうのだ。

 「この会社は様々なことに手を出してきた。町工場として始まったが、三菱電機の電車の冷房を扱う仕事で認められ、その後は安川電機の仕事に携わり、東京エレクトロンの仕事で半導体装置部品の分野に参入するのだ。しかしまた紆余曲折があり、半導体関連から手を引いてしまった」

 何か遠くを見つめるような視線で過去を振り返る言葉を紡ぎ出すこの人こそ、岸川製作所の3代目の代表取締役である岸川海志氏である。岸川氏は2020年に代表に就任するが、FL溶接機の導入、2代目の複合加工機TM 7000導入などの設備投資を断行し、半導体事業を再開することになる。

半導体関連復活に賭ける岸川社長
半導体関連復活に賭ける岸川社長
 「半導体にもう一度チャレンジしたいとの気持ちが強かった。半導体産業は他に比べてはるかに成長性があり、とりわけ九州はシリコンアイランドと呼ばれ、設備投資ラッシュが予想されていた。そこで再参入したところ、4年後の2025年には歴代最高売り上げ9億5000万円を達成した。すべては半導体のおかげといっても良いくらいなのである」(岸川代表)

 同社の事業内容は、半導体産業用部品、食品産業用部品、医療機器産業用部品、産業回転機部品、交通産業用部品など多岐にわたっている。得意分野は表面処理(溶剤、粉体塗装及び研磨加工)、各種スピニング加工、小物機械加工品、各種材質の薄板溶接構造物の製作などである。

 「岸川の現在の仕事を一言でいえば、“精密板金加工のプロフェッショナル”ということである。今後もこれに磨きをかけていくしかない。半導体・医療分野は全社売り上げの4分の1しかないが、今後はこれをコアにして拡大していく」(岸川代表)

 半導体関連を一気に増やすためには、分散している生産を1カ所に集約し効率化を図る必要があった。そこで長崎市の神の島エリアに新工場を立ち上げ、先ごろ完成稼働させたのだ。この設備投資により、5年後には売り上げ倍増の20億円にできる体制が整ったという。

 「半導体に出戻り、というカンパニーではあるが、モノづくりにかける熱意では誰にも負けないと思っている。真(まこと)の熱意は、未来への夢製品につながっていく。そして、真とは相手の立場に立った積極的な思いやりの精神なのである」

 ニッポンのモノづくりの精神は、長崎のキラリと輝く中小企業、岸川製作所にも息づいている。取材をしていて、胸が熱くなる瞬間ではあった。


泉谷 渉(いずみや わたる)略歴
神奈川県横浜市出身。中央大学法学部政治学科卒業。35年以上にわたって第一線を走ってきた国内最古参の半導体記者であり、現在は産業タイムズ社 取締役 会長。著書には『自動車世界戦争』、『日・米・中IoT最終戦争』(以上、東洋経済新報社)、『伝説 ソニーの半導体』、『日本半導体産業 激動の21年史 2000年~2021年』、『君はニッポン100年企業の底力を見たか!!』(産業タイムズ社)など27冊がある。一般社団法人日本電子デバイス産業協会 理事 副会長。全国各地を講演と取材で飛びまわる毎日が続く。
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