空前のメモリーバブルに沸く半導体業界において、メモリーメーカー主要各社が異常ともいえる伸びを示している。米国メモリー大手のMicron Technologyもその一社だ。先ごろ発表した四半期業績は、3カ月分の売上高が24年度通期の売上高に相当するという状況で、メモリー価格の急激な上昇が進んでいることをうかがわせる内容となった。長期的な視点からも当面はメモリーの需給は逼迫すると見ており、設備投資も世界各地で進展。投資ラッシュの様相を呈している。
直近の26年度第2四半期(25年12月~26年2月)業績は、売上高が前四半期比75%増/前年同期比約3倍の239億ドル、営業利益が同2.6倍/同8.2倍という驚異的な数字を記録した。ビット出荷はDRAMが前四半期比で1桁台中盤、NANDが1桁台前半伸びているものの、増収分の多くが価格上昇によるものだ。同社によれば、DRAMは60%台半ば、NANDは70%台後半の価格上昇を見せたとしている。四半期売上高239億ドルは、24年度通期売上高251億ドルに匹敵するものであり、「わずか3カ月で24年度1年分の売り上げ」を達成したことになる。
引き続き、第3四半期も増収増益基調となる見通しで、ガイダンスは売上高が335億ドル±7.5億ドル(中心値で前四半期比40%増)、粗利益率が81%(前四半期は75%)を予想する。
同社では今後も需要拡大と供給が逼迫する状況が続くと見て、積極的な設備投資を展開する構え。26年度は従来想定の200億ドルから、第2四半期決算発表にあわせて250億ドルを超える水準になると増額修正した。増額分は主に、半導体大手のパワーチップ(PSMC)から取得した苗栗県銅羅に所有する300mm工場「P5」に関連したクリーンルーム(CR)関連費用、ならびに米国での新ファブプロジェクトに伴う建設費用の増加だとしている。買収した施設には2.8万m²のクリーンルームファブが含まれており、MicronはDRAMの後工程に同施設を活用する。
また、PSMCが手がけるレガシーDRAMのサポートも今後続けるとしている。PSMCから取得した既存施設からの製品出荷は28年度から開始する見込みであるほか、Micronでは既存工場の隣接地に同規模のCRを建設する第2工場の建設計画も公表している。
台湾はDRAM製造拠点における中核地域として、前工程のほかHBM向けの先端パッケージ拠点も保有しており、今回のPSMCからの工場取得も台湾地域でのDRAMオペレーション拡大の一環となっている。
台湾以外では米国での生産体制拡充も進めている。Micronはこれまでの経緯(M&Aで会社規模を成長)から、製造拠点はアジア中心に構成されてきており、米国での製造拠点は手薄なものだった。本社のあるアイダホ州ボイジはR&D拠点であり、バージニア州マナサスの拠点はレガシーDRAMの製造にとどまっていた。また、過去にはユタ州リーハイにNAND前工程拠点を有していたが、Texas Instrumentsに売却している。
アイダホ州ボイジではDRAM新ファブのプロジェクトが進展
だが、米国政府が掲げる米国国内での製造業回帰に後押しされる格好で、Micronも米国内でのファブ建設に着手している。本社のあるボイジではDRAM「ID1」を現在建設中、27年半ばからのウエハーアウトプット開始を予定しているほか、第2工場となる「ID2」の土地造成も開始している。さらにニューヨーク州クレイでも、先ごろ着工式を開催。初期の土地造成工事も計画より前倒しで進捗しているとした。
DRAMでは日本国内の東広島市にある、広島工場(MMJ、Fab15)でもCRの拡張工事を進めている。DRAMの世代交代に対応したもので、すでに現地では土地の造成工事に入っている。CRの完成は27年以降になるものとみられる。広島工場での大型投資は以前から計画が持ち上がっていたが、26年度第1四半期(9~11月)決算において正式にアナウンスされた。現在、既存敷地の西側エリアで土地造成工事を行っており、ここに新たな建屋を建設する。
広島工場では25年に既存建屋内へのEUV露光装置の導入が完了しており、26年からEUVを用いた初のプロセス「1γ(ガンマ)」の量産を開始する。今回のCR拡張は1γの次の世代にあたる1δ(デルタ)ならびに1ε(イプシロン)プロセスに向けた投資と位置づけられている。また、これに関連して工場のある東広島市では近隣に産業団地の整備も計画。サプライヤー企業のさらなる集積に対応した動きも進んでいる。広島工場での拡張投資においては、総投資額1.5兆円の3分の1にあたる5000億円が経済産業省から助成金として交付されることも決まっている。
DRAMだけでなく、NANDの設備投資も具体化してきた。NAND分野はMicronに限らず主要各社が増産投資に慎重な姿勢を示していたが、同社がシンガポールに新ファブを建設することを発表。先陣を切った格好だ。シンガポールは同社のNAND事業における中核拠点(Center of Excellence)と位置づけられており、「Fab10」がウエハー工程を担っている。今回既存工場の敷地内にシンガポールとしては初めての2層式クリーンルーム(CR)を建設。最終的には70万平方フィートのCRスペースを確保できる見通し。
シンガポールではHBM後工程の新工場を建設中(26年3月撮影)
1月27日に着工式を開催しており、総投資額は10年間で240億ドルを予定する。さらに製造部門のほか、研究開発部門も共同配置することで、市場投入までの期間短縮も目指していく。シンガポールではNANDフラッシュのほか、HBMの後工程工場の建設などDRAM分野での投資も進めている。HBM新工場は、27年からの生産寄与を見込んでおり、投資額は今後数年間で70億ドルが予定されている。
そして、半導体産業の本格的な立ち上がりが期待されるインドでも先鞭をつけている。3月にグジャラート州サナンドで建設を進めていた、組立・テスト工程を手がける後工程拠点を開設したと発表した。開設した拠点は、同社のDRAMおよびNANDウエハーの後工程を担う。投資規模はインド政府の補助を含めて、総額27.5億ドル。第1期投資ではCRスペースを最終的に約4.6万m²確保する。規模としては世界最大級のクリーンルームになるという。開所式にはマイクロンのサンジェイ・メロートラCEOのほか、インドのモディ首相も参加した。Micronは26年内に新拠点で数千万チップの組立・テストを手がける計画で、27年には数億チップ規模に拡大する予定だ。
26年度に続き、27年度も高水準の設備投資を実行する構えだ。定量的な開示はないものの、大幅に増加するとしており、特に建屋などのインフラ建設費用は前年度比で100億ドル増額する見通しだという。業界内では400億~450億ドルの水準になるとの見方も出ており、Micronの攻勢は当面続きそうだ。
電子デバイス産業新聞 編集長 稲葉雅巳