インターフェース向けLSIに強みを持ち、車載ADAS用高速通信、AIサーバー用光半導体など、時流を捉えた新製品開発を推進する(株)ザインエレクトロニクス(東京都千代田区)。2026年12月期業績は売上高が前期比44%増の67億円、営業利益は1300万円(前期は3.4億円の損失)と増収ならびに黒字転換を見込む。代表取締役社長の南洋一郎氏に、現況や中長期への取り組みなどを聞いた。
―― 26年は増収増益を見通されています。
南 国内ではOA機器とアミューズメント向けの二本柱であり、OA機器向けは25年でほぼ回復し、受注も増加している。一方、アミューズメント向けは、業界自体は下がっていないが、部品調達は弱含みが続いていた。26年に入り新規調達がようやく増えており、増収に貢献しそうだ。また、子会社のスマートメーター向けデバイスが25年秋から量産出荷となり、26年は業績への寄与が見込める。ただし利益面に関しては、開発投資の増加が影響すると予想する。海外では25年は北米で車載向けが伸びた一方、中国が伸び悩んだ。ただし、26年は中国から海外への輸出も元に戻り始めており、中国EV用カメラやディスプレー向け製品を供給している当社にも好材料になると見込む。
―― 中長期に向けた伸びしろについて。
南 車載向け通信分野やAIサーバー向け光半導体を伸びしろに位置づけ、開発を強化している。車載向けでは当社独自の伝送技術であるV-by-One HSベースの新製品を開発中であり、26年内には上市する計画である。また、光半導体では生成AIで拡大するAIデータセンターの消費電力削減などに貢献すべく、次々世代のPCI Express Gen7.0(2TB/秒の光通信)向け光通信モジュール用のLSI製品を開発中だ。28~29年ごろからの業績寄与を目指していく。
―― 開発中の車載向け新製品について詳細を。
南 SerDes技術に基づく既存の製品は、デザインルールが百数十nmレベルのため、高機能化が進行中の車載向けには消費電流、大きさ、コストが見合わなくなってきている。そこで、デザインルールを40nm級まで一気に進めて、消費電流、大きさなど性能を向上させた新製品を開発している。車載用ディスプレーやADAS向けカメラに適する新製品となるが、特に車載用カメラは、たとえばサラウンドビューモニターでは車両1台に10個以上のカメラが搭載されるなど、搭載数が増えてきている。これらのカメラデータを束ねて伝送する部分に新製品で貢献していく。なお、生産は世界最大手のファンドリー企業へ委託する予定である。
―― 光半導体については。
南 光半導体は従来のLSI開発とは異なり、巨額の投資を伴う。当社はこの光半導体向け投資額として、25年夏から3年間累計で約20億円を見込んでいる。なお、このうち50%程度をNICT(情報通信研究機構)から助成いただける予定である。世界で初めてVCSEL対応によりDSPレスのPCI Express Gen7.0向け光半導体開発に取り組んでおり、新製品が完成すればデータ送受信時の消費電力は現行品比4分の1、遅延時間90%削減が実現し、AI処理速度の向上が可能になる。
―― 20億円投資の概要は。
南 製造工場を含めての投資額であり、マスク代などが非常に高価なことが背景にある。当社はファブレスメーカーのため、光半導体に特化した製造工程を有する海外のファンドリー企業へ製造を委託する予定であり、彼らと連携しながら開発を進めている。光半導体では、電気を光に変えるドライバーの生産と、光を電気に変えるアンプの生産においてばらつきがあり、これを吸収しなければいけない難しさがある。また、アナログ半導体はデジタルと異なり、必要な部分のみ電気を流せばよい利点がある一方で、高精度なものづくりでなければ良い結果が出ないという設計のハードルもある。当社には高速伝送で培ったノウハウがあり、こうしたハードルを克服することができる。
―― 中期経営戦略で掲げた27年度売上高100億円超の目標達成に向けて。
南 最終年度となる27年度は、OA機器の新システム導入が各社で始まる計画が示されているほか、スマートメーターのお客様も数量の見通しを上方修正されており、両案件での当社売上高への寄与が期待できる。また、産業機器向けでも新規案件での刈り取りを目指し、全社売上高100億円超を果たしたい。一方で、当社は全社売上高の25%をR&D向けに振り向けており、将来に向けた開発を最重視している。目先の目標数値に一喜一憂するのではなく、中長期を見据えたイノベートを重視する姿勢で今後も挑んでいく。
(聞き手・高澤里美記者)
本紙2026年4月23日号3面 掲載