エヌビディア(米カリフォルニア州)は、6月1~4日にAIカンファレンス「NVIDIA GTC Taipei」を開催した。アジア最大級のICT展示会「COMPUTEX Taipei」に合わせて開催されており、電子デバイス産業新聞紙面ではCOMPUTEXに関する連載のなかでNVIDIA GTC Taipeiでの目玉となったトピックスなどを紹介する。今回はGTC会場の様子や、紙面では取り上げない製品について伝える。
リリースを控えるRubin Ultraも展示
初日となる6月1日には、会場の1つ、台北ミュージックセンターでジェンスン・フアンCEOによる基調講演が開催された。講演内で語られたCPUの重要性、Vera Rubinの量産開始、エージェントAI向けに開発されたCPU「Vera CPU」の発表などのトピックスについては紙面で紹介予定のため、展示されていた次世代製品について紹介したい。
まず、AI向けGPUのRubinを強化したRubin Ultraが展示されていた。Rubin Ultraでは、新たなラックスケール「Kyber」が導入される。KyberではGPUの密度が倍増し、1つのラックで144基のGPUを搭載できるようになり、より高密度なAIファクトリーを実現できるようになる。
現行のOberonでは、CPUやGPUを搭載したコンピュートトレーや、NVLinkを搭載したスイッチトレーをケーブルでつなぐが、Kyberではケーブルの代わりにミッドプレーンに接続する。ミッドプレーンの後ろからNVLinkのブレード、反対側にコンピューティングブレードを挿す構造となっている。ケーブルなどが極力減らされており、差し込むだけで簡単に組み立てることができる
講演で同氏は、エヌビディアがGPU企業からAIインフラ全体を網羅したAIシステム企業へと進化を遂げたと強調した。また、台湾を「最も豊かな世界最高のサプライチェーンエコシステム」として、台湾のパートナー企業への感謝を大きく述べた。
TSMCで生産したRubinウエハーも展示されていた
展示では、TSMCがエヌビディアのAIモデルを活用して半導体の設計と製造を進めていることが紹介された。なかでも半導体材料設計においては、化学シミュレーションを高速化するためにGPUで加速する電子構造シミュレーション「NVIDIA cuEST」を活用しているという。cuESTは、最先端のGPUアルゴリズムにより従来のCPUやGPUソリューションに比べて大幅な高速化を実現する。展示では量子化学計算においてcuESTを用いたデモが紹介されていた。説明員によると、これらの導入により「材料開発のシミュレーションを10~20倍高速化できる」とのこと。
これは余談だが、同時に開催されたCOMPUTEXでジェンスン・フアン氏が訪れた企業のブースのNVIDIAに関連する製品にはサインが描かれていることがあるそうで、筆者も何点か見つけることができた。なお、COMPUTEXの展示レビューは、電子デバイス産業新聞紙面に展開している。
エージェントAIはロボットやデジタルツインへも
さらに基調講演では、エージェントAIのヒューマノイドやデジタルツインへの展開についても述べられた。同社はシミュレーションや生成で学習データを増やすため、CosmosやIsaacを展開している。関連して展示エリアでは、エヌビディアのパートナー企業の1つで最先端のフィジカルAI基盤モデル開発を行うリアルワールド(株)(RLWRLD)が、独自のロボティクス基盤モデル「RLDX-1(リアルデックス)」のデモを披露した。同製品は、視覚・言語に加え、力や触覚、作業記憶までを単一モデルで処理する設計を採用したもので、従来の視覚・言語を中心としたモデルとは異なる技術により、高い性能を実現している。
RLDX-1は、学習段階においてエヌビディアが提供するヒューマノイド開発のためのプラットフォーム「Isaac GR00T」を活用している。Isaac GR00T プラットフォームは、高品質なロボットデモンストレーションデータを取得でき、ヒューマノイドの推論、学習やマルチタスク動作のサポート、シミュレーション、トレーニング、テスト、評価などを行うことができる。Isaac GR00Tを用いることで、開発を格段に高速化しているという。展示されていたヒューマノイドは、5本指のハンドを自在に動かし、紙でできた箱を開け、ワークを収納するという作業を披露した。
また、GR00T に関連し、会期中エヌビディアはNVIDIA Cosmos 3も発表。CosmosはフィジカルAI開発のための基盤モデルで、NVIDIA Cosmos 3はテキスト、画像、映像、音声、アクションなどを1つのモデルで統合して生成やシミュレーションする点が特徴となっている。
NVIDIA GTC Taipei全体を通して、エージェントAIに向けた最先端の製品や発表が続々と登場し、ジェンスン・フアン氏が基調講演で話したとおり、同社がGPUの開発企業からAIインフラ全体にとって最も重要な企業になっていることを実感することができた。
電子デバイス産業新聞 編集部 記者 日下千穂