JSR(株)は、ライフサイエンスの立て直しなど会社全体は事業構造改革の途中だが、主力の半導体材料をはじめとする電子材料事業は2025年度(26年3月期)に過去最高益を達成するなど、足元の半導体市場の好調も追い風となって順調な成長を遂げている。今後に向けては、グローバル大手顧客に近いロケーションでの開発、そして製造の現地化を積極的に推進する。電子材料事業を統括する木村徹上席執行役員に現況と今後の戦略を聞いた。
―― 足元の電子材料事業の総括からお願いします。
木村 25年度通期業績のうち、半導体・ディスプレー材料などで構成されるデジタルソリューション事業は、売上高が前年度比17%増の2521億円、コア営業利益が同47%増の632億円の増収増益となった。大幅な売り上げの伸長とともに、利益面は過去最高益を達成できた。デジタルソリューション事業のうち、半導体向けの電子材料事業の売上高は同24%増の1960億円となり、主力のリソグラフィー材料の需要が旺盛で、なかでも先端のEUVプロセスに用いられるMOR(メタルオキサイドレジスト)やCAR(化学増幅型レジスト)の伸びが高かった。リソ材料以外でも、CMP材料やALDプリカーサー、先端パッケージ向け厚膜レジスト、基板用の低誘電樹脂材料などの伸びが目立った。
―― 地域的な傾向は。
木村 当社の半導体材料はもともと国内、それと米国向けが強かったが、韓国および台湾での事業が伸びている。近年はこれに加えて中国向けの構成比も高くなっており、台湾、韓国、中国あわせて7割ほどとなっている。残り3割が日本、米国およびその他地域という格好だ。
―― MORの伸びも際立っています。
木村 韓国顧客を中心に先端DRAM分野での採用が始まっている。既存のCARが技術的限界を迎えるなか、次世代のEUVレジストであるMORの採用が進んでいる。
―― 改めてMORの採用が進んでいる背景は。
木村 コスト競争力が求められるDRAMでは、生産スループットの改善に対するニーズが強く、CARに比べてプロセスを簡略化できるMORの優位性が評価されている。当社子会社のInpriaが中心となり手がけているMORはウエットタイプだが、業界内ではドライタイプのMOR(ドライレジスト)に対する評価・開発も進展している。ここではプリカーサー供給という立場で関わっていければと考えている。
―― 具体的には。
木村 ドライレジストで主導的な役割を果たしている、米国装置大手のラムリサーチと次世代半導体製造に向けた非独占的なクロスライセンス契約を結んでおり、協業関係にある。先端EUV材料や次世代パターニング材料を共同開発するほか、CVD/ALD向け高純度プリカーサーについて、当社子会社のヤマナカヒューテックとのシナジーを活かした探索・プロセス開発を推進している。
―― 台湾での事業体制強化を進めています。
木村 台湾を含む海外市場に関して、これまで営業の現地化を積極的に進めてきた。そのフェーズが完了し、現在足元では「開発・製造の現地化」を推進している。特に有力顧客がいる台湾市場は直近でも具体的な取り組みを打ち出している。4月にCMP材料の研究開発拠点をオープンさせた。新竹県湖口郷にクリーンルーム環境を整えた拠点を整備し、先端プロセスに対応したアプライドマテリアルズ製のCMP装置を導入した。材料評価からプロセス検証までを一貫して実施できる。
―― 台湾での合弁会社(JV)も設立されました。
木村 LCY Chemical社およびWah Lee Industrial社との生産JVを台湾中部の雲林県に設立した。当社が51%、LCY社が39%、Wah Lee社が10%の出資比率となっている。JVではEUVレジストを含む先端リソ材料の生産を念頭に、27年の稼働開始を予定している。
―― JV設立の背景は。
木村 LCYは半導体洗浄工程に用いられるIPA(イソプロピルアルコール)の大手サプライヤーで、台湾市場を熟知している。また、採用活動の観点からも現地企業とパートナーシップを組むことはメリットが大きいと感じている。
―― 最後に26年度の見通しを。
木村 半導体向けの電子材料事業に関しては、最低でも2桁%の成長は可能だとみている。AIインフラ投資が拡大するなかで、当社が手がける半導体材料の需要はより一層拡大すると期待している。
(聞き手・編集長 稲葉雅巳)
本紙2026年7月9日号1面 掲載