タリーズコーヒージャパン(株)(東京都新宿区)は、店舗数が約850店を誇る大手コーヒーチェーンの一角だ。2027年8月には創業30周年を迎え、店舗数は1000店も視野に入る。過去最高の売り上げ、利益を達成した中、今後はどのような取り組みを行っていくのか。同社代表取締役社長執行役員マーケティング本部長の内山修二氏に話を聞いた。
―― 25年度の状況は。
内山 過去最高売り上げと過去最高益を達成した。3つの施策が奏功したと思っており、1つは出店促進。純増ベースで32店を出店し、25年度末で店舗数は約850店となった。また、FC加盟条件の大幅な改定により、新たなFCオーナーが9社増えた。2つ目は25年8月に実施した価格改定。3つ目は楽天ポイントとLINEのミニアプリを実装したこと。これらの施策の結果、通年で既存店売上高は前年比100.2%、客数は全店で103%に伸長した。今後も出店を進め、29年度までに1000店の到達を目指しており、業界3番手集団に食い込みたい。
―― 1000店達成へのカギは。
内山 FC強化が挙げられる。現在約850店のうち、FC比率は半分弱。これを6割に高めたい。直営とFCを比較すると、FCのほうが管理面で優れていることも多い。原価意識や教育方法など経営面で見習うべき点が多く、直営、FCが切磋琢磨しながら成長することが重要だ。
―― 強化したい立地は。
内山 4月に100店に達した病院内店舗は今後も積極的に出店したい。採算性や事業性よりも、お客様のくつろぎの空間提供などで価値がある。また「タリーズコーヒー &TEA」にも力を入れる。40~50代の女性客がメーンで、スイーツも充実しており、客単価も高い。通常店から「&TEA」に転換するFC店も出ており、カフェが飽和気味のエリアなどには勝機がある。現在は47店だが、1000店のうち、1割程度としたい。
―― 1000店到達後も店舗を拡大しますか。
内山 1000店に達したら、それ以上は店舗数でシェアを追い求めない。むしろクオリティでシェアを伸ばしたい。当社はコーヒーのクオリティが大きな武器であり、お客様とのタッチポイントである商品と接客サービスをしっかり磨いていく。
タリーズコーヒーのスタッフは自分たちのコーヒーに自信と誇りを持つが、伝え下手の面もある。一杯いっぱい丁寧に手づくりし、ラテはミルクをスチームで温めてから注ぐので、手間がかかる。この姿勢が伝われば、お客様が待っている時のイライラ解消や満足度の向上が期待できる。コーヒーを淹れる姿のライブ中継などPRにも力を入れるべきと考えている。
加えてセルフサービス店でありながら、くつろげる空間との評価が高く、空間の価値を大切にしていく。
―― 27年8月に創業30周年を迎えます。
内山 創業30年が経ち、日本文化に適したカフェになってきた。自分たちのコアな価値は何かを今一度見つめ直す時にあると思う。
―― 30周年を迎えるにあたり、店づくりは。
内山 8月、新宿に「PRIME FIVE TULLY'S COFFEE(プライムファイブ)」をオープンする。スペシャリティコーヒーとともに焼き立てのパンも販売し、標準店舗よりもワンランク上のクオリティを目指す。新宿は3店目となり、業態として完成させたい。また、30周年を機に、プライムファイブの要素を活かし、タリーズコーヒーのすべてが体験できる旗艦店を、27年8月までに東西エリアに1店ずつつくる考えだ。
―― 1000店達成時の売り上げ規模は。
内山 客単価を高め、1店当たりの月商も上げたい。25年度の事業売上高は468億円、店舗売上高で600億円超だが、1000店達成時は700億~800億円が目標となるだろう。
―― 客単価向上のカギは何でしょう。
内山 1つはシーンの拡大。朝需要と夕方以降が弱く、4月からモーニングに力を入れている。6月は“夜タリ”と称して16時以降、ホイップ2倍などのキャンペーンを実施した。また、若い層を中心に新しい客層を取り込みたい。
―― メニュー面は。
内山 看板商品を検討している。TVのスイーツ特集の放送で、当社のミルクレープを手作業で一層ずつ重ねていく工程が放映され、来店の要因になった。こうした部分がお客様に響くのであれば、品揃えを広げるよりクオリティを高めることが、お客様のためになると実感した。その点において何を削いで何に注力していくかを見極めたい。
―― 今後の抱負を。
内山 規模を追うのではなく、お客様との一番の接点であるクオリティにおいて、お客様の期待を裏切らず高め続けることで、改めて「タリーズに行こう」という動機づくりを行う。商品・サービス・空間の3つの価値の三位一体を追究してお迎えしたい。
また、当社は地域社会に根差したコミュニティーカフェを経営理念で掲げている。昨年1年間で開催したコーヒースクール数は5458回で、前年比で1400回増となった。星の数ほどカフェがある中で、タリーズの美味しいコーヒーを飲んでいただき、地域の方にタリーズファンになっていただくことがスクール開催の狙いだ。将来的には、人口減少で地域コミュニティーが弱くなることが想定されるが、その時カフェはライフラインになる。人と人をつなぐ場所をカフェが担う。タリーズコーヒーがこの地域に必要だという存在としたい。そのために、今後もコーヒースクールを増やしていきたい。
(聞き手・特別編集委員 松本顕介)
商業施設新聞2656号(2026年7月28日)(8面)
経営者の目線 外食インタビュー