電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第690回

IH(誘導加熱)技術を武器に未来を拓く「ネツレン」の将来性


パワーエレクトロニクスの高周波電源装置に大きな期待

2026/10/2

 高周波熱錬(株)(東京都品川区)は、1946年(昭和21年)に設立され、同年には、我が国で初めてIH(誘電加熱)技術の事業化・工業化に成功した。同社は通称の「ネツレン」という名で、国内外に知られている。IHクッキングヒーターと同じ原理で、クリーンな電気を熱源とする地球環境に優しい無公害、省資源のダブル・エコのIH熱処理でさまざまな分野に貢献しているのだ。

 誘導加熱における加熱コイルと金属の関係は、変圧器における1次、2次コイルの関係と同じだという。加熱コイルに高周波電流を流すことによって磁束が被加熱物に集中し、電磁誘導作用によって、うず電流が誘起されて被加熱物が加熱されるという原理なのだ。

ネツレンの技術は東海道新幹線に使われている
ネツレンの技術は東海道新幹線に使われている
 ネツレンの湘南事業所・平塚工場内には、東海道新幹線に使われた「コンクリートまくらぎ」が展示されているが、これにもPC鋼棒が使われている。製造は1961年であり、前の東京オリンピックの開催に合わせて製造された。

 「誘導加熱電源は平塚工場で作られており、この分野の研究開発拠点は平塚に置かれている。同社の電源で作られた製品は自動車や建設・工作機械、土木・建築など様々な分野で用いられている」

 こう語るのは、平塚の研究開発本部・システム開発部の主任研究員である杉本真人氏である。杉本氏によれば、2026年度の設備投資は56億円(国内44億円、海外11億円)、研究開発費は10億円の予想であり、いずれも過去最高の水準になっているという。

 さて、ネツレンは東証プライム市場に上場しており、26年度の連結売上高は650億円となり、過去最高を予想している。国内に12社・28拠点を持ち、海外は6カ国14社・15拠点を持っているが、第16次中期計画(2026年度が最終年度)を強力に推進している。

 4つの戦略を掲げており、それらは①技術開発=成長ドライバーの創生、②事業=成長エンジンの育成、③グローバルマーケットの拡大、④自発的貢献意欲のある人財の育成がラインアップされている。

 産学連携にもアクティブな姿勢であり、大分大学、岡山県立大学、九州大学、久留米工業高等専門学校、慶應義塾大学、上智大学、東海大学、東京科学大学、東京大学、豊橋技術科学大学、長岡技術科学大学と連携している。

 「ネツレンは研究開発重視型の企業であり、常に優秀な人材を集めるべく努力している。大学・研究機関との共同研究推進では、多くの成果を上げており、25年度の国内・国外特許は857件となっているのだ」(杉本研究員)

 第16次中期経営計画では、刈谷工場内の自動車部品(ドライブシャフトなど)の熱処理受託加工の再編プロジェクトを進め、新規熱処理設備の導入により、生産能力1.2倍を達成した。

 30年に向けて、さらなる生産性向上を目指してプロジェクトを推進中である。また、海外については、ネツレンアメリカの工場増設、ネツレン・インドネシアの熱処理受託加工・第2工場などの投資を実行してきた。海外売上高はグループ全体の30~40%となっているが、こうした施策により、さらに海外比率を引き上げていく考えだ。

 さらに、中国においては広東省の熱処理受託加工第2工場の建設、山東省の新工場建設などを進めている。こうした取り組みによって、30年段階ではROE8%(現在は2.3%)を目標にしたいとしている。

 「高周波電源装置のMKシリーズは、トランジスタインバーターとして豊富な品揃えで、各種用途に対応している。最近では、自動車のエコカー、再生可能エネルギーのパワコン、さらには鉄道などにおいてもパワーデバイスの存在感が高まっている。今こそネツレンの高周波電源装置の出番が来たと思っており、さらなるバージョンアップを目指したい」(杉本研究員)


■泉谷 渉(いずみや わたる)略歴
神奈川県横浜市出身。中央大学法学部政治学科卒業。35年以上にわたって第一線を走ってきた国内最古参の半導体記者であり、現在は産業タイムズ社 執行役会長。著書には『自動車世界戦争』、『日・米・中IoT最終戦争』(以上、東洋経済新報社)、『伝説 ソニーの半導体』、『日本半導体産業 激動の21年史 2000年~2021年』、『君はニッポン100年企業の底力を見たか!!』(産業タイムズ社)など27冊がある。一般社団法人日本電子デバイス産業協会 理事 副会長。全国各地を講演と取材で飛びまわる毎日が続く。
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