商業施設新聞
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第8回

NTT都市開発(株) 常務取締役 商業事業本部長 楠本正幸氏


複合、協業、デザイン 3つの方針で存在感アピール
開発から運営、ホテル事業に参入

2015/12/22

NTT都市開発(株) 常務取締役 商業事業本部長 楠本正幸氏
 オフィスや商業など複合開発に定評のあるNTT都市開発(株)(東京都千代田区外神田4-14-1、Tel.03-6811-6300)は、ポスト五輪も視野に入れた街づくりや商業開発に取り組んでいる。同社常務取締役商業事業本部長でデザイン戦略室長及びグローバルビジネスも兼任する楠本正幸氏に聞いた。

―― 五輪に向けて都内を中心に大型開発が活況です。
 楠本 五輪は大きなイベントではあるが、今後の人口減少に伴うマーケット縮小の中で、中長期的に当社の存在感をいかに発揮できるかが最大のテーマ。他社と競って「規模」や「量」を追うのではなく、当社だからこそ実現できる「質」の部分に注力するため、3つの方針を掲げている。
 1つ目は「複合の魅力」。総合デベロッパーとして、住宅やオフィス、商業などの縦割り型ではなく、案件ごとに組織横断的なチームをつくる。その敷地のポテンシャル最大化を追求すると必然的に複合となる。そこにこそデベロッパーのノウハウや力が表れる。
 街にオフィスだけでなくおいしいレストランや美術館などが集積し、より魅力的になれば、多様な人々が集まり刺激し合い、新しい発想が生まれる。近傍に住宅ができれば徒歩や自転車で通勤でき、これからのライフスタイルに合ってくる。これは日本だけでなく、世界の潮流だ。

―― 青山開発部を創設しました。狙いは。
 楠本 従来から山手線の秋葉原から品川に至るエリアで、オフィスを中心とした一連の複合開発を手がけているが、一方で商業が軸となる戦略エリアとして青山・原宿・表参道に注目している。
 原宿クエストなどの既存の商業施設に加えて、昨年、原宿駅前の好立地に複合商業開発用地を取得した。今後も戦略的に様々なプロジェクトを進めていく予定であり、計画推進のコアとなる体制確立、およびこのエリアでの当社のプレゼンス向上のため青山開発部を設立した。

―― 東京以外は。
 楠本 特に京都と福岡に力を入れている。京都では、2001年に開業した商業施設「新風館」を再開発し、商業とホテルの複合施設とする予定だ。大正時代の電話局である歴史的建造物を街のシンボルとして活かし、当社のフラッグシッププロジェクトと位置づけている。
 福岡では、特に天神エリアで継続的に様々な開発を行っており、今後も地域の事業者や行政と連携し、またNTTグループの総合力も活用しながら街づくりに参画していく。

―― リニア開業で沸く名古屋は。
 楠本 栄の開発案件では、商業に加え緑地や文化施設の集積するエリア特性を活かした複合開発を目指す。また名古屋駅南では劇団四季の新しい劇場を誘致する計画がスタートし、そこにどのような商業機能を組み合わせるかを検討している。

―― 2つ目の方針は。
 楠本 一言でいえば「コラボレーション」。今までにない特徴的な企画・開発の実現には一社だけでは限界があり、プロジェクトごとに事業パートナーやコンサルタントなどとの協働が必要不可欠だ。その際、NTTグループの一員である当社の信頼性や誠実さが大きな優位性を与えてくれる。
 この10月に「ホテル・リゾート事業部」を設立し、今後積極的にホテル事業の展開を図っていく予定だが、そのためにもやはり「コラボレーション」が大きなカギとなる。今までもホテルの一棟貸やホテルを含む複合開発は実施してきたが、単に賃料を頂くだけのビジネスモデルだった。今後は案件ごとに最適なホテル事業者と組んで、ウィンウィンの事業構築を目指していく。現在、前述の京都新風館をはじめ、大阪ユニバーサルシティ駅前でホテル開発を推進中である。
 また11月には日本を代表するレストランブランド、「ひらまつ」と業務提携を結んだ。共同で付加価値の高いホテル・リゾート事業を戦略的に展開していく予定で、まずは来年三重「賢島」と静岡「熱海」でオープンさせる。

―― 海外での展開は。
 楠本 現在英ロンドンで3物件保有しており、そのうち1件はリニューアル工事中である。米国ではボストンで今年3物件を取得したほか、ニューヨークでは、古い工場のコンバージョンによるオフィスと商業の複合開発を現地のデベロッパーと進めている。海外では国内以上にコラボレーションが必須である。

―― 3つ目の方針とは。
 楠本 「デザイン」である。色や形状だけでなく、サービスなどのソフトも含めて他にはない付加価値を提供する。当然、そのプロジェクトに一番合ったデザイナーやクリエーターと協働する。特にホテル・リゾートはデザインが極めて重要な要素となる。
 日本の将来を考えた時にも、固有の歴史や文化に根ざしたデザインが一つのキーワードになっていくはずで、そこに焦点を当てなければ、コモディティの中で埋もれ、疲弊していくしかない。
 国内外を問わず様々なプロジェクトや街づくりを通じて、デザインを理解し創出する企業ブランドを育み、当社の存在価値を明確にしていきたい。

(聞き手・編集長 松本顕介)

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