商業施設向け館内物流事業で業界トップクラスのシェアを誇る(株)ワールドサプライ(東京都江東区)は、テナント企業向けのサービスをさらに拡充する。納品代行に加えてショップサポートのメニュー充実を図るほか、商業施設向けで培ったノウハウを1次産業や医療分野にも展開していく方針だ。4月に代表取締役社長に就任した梅木淳氏に現在の取り組みや今後の展開について話を聞いた。
―― 日本国内流通の川下域に特化してサービスを提供していますね。
梅木 当社の物流事業は、工場で生産された製品、あるいは日本に輸入された商品を保管するところから始まり、これを百貨店や商業施設へ輸送し、館内の各テナントまでお届けするところに強みがある。全国9営業所の配送ネットワークによって、アパレルや雑貨、化粧品、食品など全国1万社以上の荷主から、百貨店など1000カ所以上の施設に配達・館内配送を請け負っており、この流通過程に不可欠な仕分けや検品、伝票発行、ラベル貼付といった作業まで代行することで、3PLの付加価値をさらに高めていくことに重点を置いている。
―― 百貨店向けの納品代行では業界トップクラスです。
梅木 百貨店向けは全国で約350の関連施設と取引しており、SC向けでもトップクラスだ。従来は、施設に対して各荷主が納品していたが、荷受け場が納品車両で渋滞するなど回転率が悪かった。これに対し、当社は館内配送専属スタッフを施設に常駐させることで荷受け場の回転率向上、渋滞解消を実現した。引き続き、当社と契約いただける施設を増やしていきたい。
―― 館内物流から派生したショップサービスを充実させていますね。
梅木 昨年から本格展開を始めた。荷受けと館内配送だけにとどまらず、従来は店舗スタッフが行っていた荷物の開梱・陳列などを行っている。これにより、各テナントのスタッフにはコア業務に集中していただけるため、非常に好評だ。ほかにも館の清掃や警備などにもサービスを拡充している。
加えて当社では、こうした館内作業に従事するスタッフの制服を、施設のコンセプトや職種に応じてオリジナルでデザインして着用しているほか、おもてなし教育や接遇検定も実施するなど、施設および従業員の満足度を高める「魅せる仕事」の提供に力を入れている。これがモチベーションの高さや人材採用の安定化にもつながっている。
―― ショップサービスのさらなる充実は。
梅木 様々な相談を頂戴しており、「何でもお受けする」という心構えで準備中だ。例えば、食事やトイレなどで店舗を離れる時間帯だけお客様に対応してほしいといった要望や、飲食店で食器洗いを手伝ってほしいといったご相談、さらには夜間に納品して開店までに陳列まで行ってほしいといった要望などが寄せられている。必要であれば資格を取得することなども視野に入れて、当社がさらに請け負える業務のバリエーションを増やしたい。
―― 2025年度の事業方針について伺います。
梅木 3つある。前述したショップサポートの拡充に加えて、1次産業向けサービスの拡充、そして病院内配送の拡大だ。
1次産業向けについては、すでに豊洲市場で東京魚市場卸協同組合から共同配送を請け負い、都内23区の飲食店や地方、海外へ発送しているが、これを農業にも展開する。
具体的には、お米を適正価格で販売することを支援するため、集荷したお米を当社で等級付けや検査が行える体制を整備する。現在、お米の流通量に対して等級付けを行える検査員が足りないため、多くのお米が「規格外」のまま流通している。この状況を変えるため、すでに宮城と山形で検査員の資格を取得した。もちろん、お米以外の農作物にも対象を広げていくつもりだ。
―― 病院内配送の拡大についてはいかがでしょうか。
梅木 1967年から百貨店への納品代行を行っているが、ここで培ってきたノウハウを病院における医療機器や医療用備品の配送に展開し、医療スタッフが患者に向き合える時間を増やせるようにしたい。すでに順天堂大学医学部附属順天堂医院で開始しており、マニュアル化にも取り組んでいる。これを大規模マンション内でのサービス展開とともに取り組んでいく。
―― さらなる体制強化が不可欠ですね。
梅木 国内流通の強化に向けて、茨城県つくば市に新たな物流センターを建設中で、11月に本格稼働させる予定だ。一般倉庫と同一敷地内に危険物倉庫も新設し、得意としている化粧品の国内流通に必要な工程・設備を1カ所で提供できるようにして、物流ソリューションサービスにさらに磨きをかけていくつもりだ。
(聞き手・特別編集委員 津村明宏/編集長 高橋直也)
商業施設新聞2603号(2025年7月8日)(6面)