商業施設新聞
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第499回

(株)相鉄アーバンクリエイツ 代表取締役社長 左藤誠氏


横浜駅西口大改造構想を始動
鶴ヶ峰駅周辺などでも街づくり

2025/10/7

(株)相鉄アーバンクリエイツ 代表取締役社長 左藤誠氏
 相鉄グループでは15年にわたる沿線の街づくり「沿線6大プロジェクト」を推進し、2024年度までに計画どおり竣工した。そして27年度を目標とする「第7次中期経営計画」をスタートさせており、同計画では「横浜駅西口大改造構想」などが盛り込まれた。グループの街づくりを主導する(株)相鉄アーバンクリエイツ代表取締役社長の左藤誠氏に、その取り組みなどを聞いた。

―― 沿線6大プロジェクトが完了しました。
 左藤 10年策定のグループ長期ビジョン「Vision100」で示した開発事業として、第1弾がいずみ野線のいずみ野・弥生台・南万騎が原の3駅の駅前街区のリノベーション事業だった。これを皮切りに、二俣川駅南口地区第一種市街地再開発事業では中核となる商業施設「ジョイナステラス」が開業。海老名駅では海老名駅西口土地区画整理事業の業務代行者として事務局業務と、グループでマンション開発事業を推進した。また、横浜市初となる国家戦略特別区の指定を受けた横浜駅きた西口鶴屋地区第一種市街地再開発事業で誕生した「THE YOKOHAMA FRONT(ザ ヨコハマ フロント)」ではホテル、住宅、商業施設からなる複合施設を開発。そして泉ゆめが丘地区土地区画整理事業でも業務代行を受託するとともに、当社初のRSCとなる「ゆめが丘ソラトス」を開発し、昨年開業した。星川駅~天王町駅間の連続立体交差事業で創出した高架下には店舗・事務所、寄宿舎などからなる「星天qlay(クレイ)」もオープンさせた。
 開発事業と合わせて、相模鉄道が19年よりJRと、23年より東急との直通運転を開始し、乗り換えせずに都心へのアクセスができるようになった。利便性が向上し当社線沿線の地価上昇などの経済的効果がみられる。

―― エリアマネジメントにも力を入れていますね。
 左藤 そのとおりで、グループの(株)相鉄ビルマネジメントがエリアマネジメント活動をつかさどっている。横浜駅西口で実績を重ね、沿線4地区で活動している。ハード・ソフト両輪の街づくりに磨きをかけていく。

―― 第7次中期経営計画に横浜駅西口大改造構想が盛り込まれました。
 左藤 横浜駅西口は相鉄グループが多くの資産を保有する。一方で、都市間競争が激化する中、初期の開発から70年が経過し、建物の老朽化が目立ち始め、建物機能やインフラの更新時期が到来している。地域の皆様が抱えている課題も同じで、昨秋の「横浜駅西口大改造構想」は地域からも反響が大きかった。

―― 今後どういう街を目指しますか。
 左藤 横浜駅は6社局10路線、1日約200万人の乗降を誇るビッグターミナル駅。その中で西口は、独特の繁華性が魅力である。ただ、商業機能に偏り、多様な人が集まりにくく、持続的な街の発展を促す価値観が生まれにくい面も指摘されている。ターミナルの強みを活かし、職住学遊を兼ね備えた複合都市に進化させる必要がある。ザ ヨコハマ フロント内の事業共創施設「Vlag yokohama(フラグヨコハマ)」のようなビジネス交流拠点を充実させ、横浜から新たなビジネスやサービスを育てたい。相鉄グループでは“Well-Crossing(ウエル クロッシング)”を街づくりコンセプトに掲げ、働く人、住まう人、来街する人の交流を促す施策を展開する。

―― 西口大改造構想の起点として26年度に相鉄ムービルの営業を終了して着工します。
 左藤 26年度から解体に着手する予定である。土地利用については検討中で、街づくりコンセプトの具現化について議論を重ねている。
 横浜市は横浜駅周辺の街づくりの指針「エキサイトヨコハマ22」の計画更新を進めており、当社も参加している。行政、地元と次の100年を見据えた議論を行うことで横浜駅西口の将来像を共有していく。そして、横浜駅西口に位置する南幸・北幸・鶴屋町の各エリアの地域性を活かし、独自性を持った個性的な街をつくっていく。

―― 沿線では鶴ヶ峰駅周辺で連続立体交差事業が進められています。
 左藤 鶴ヶ峰駅周辺の鉄道を地下化することで、10カ所ある踏切がなくなり、南北分断が解消される。将来を見据えた街のあり方、駅前機能の充実など街づくりを推進する。現状は駅北口地区の市街地再開発準備組合に参画し、地域の方々と街づくりについて議論を進めている。また連続立体交差事業でグループの土地が生み出されることから、その有効活用についても検討している。

―― 鶴ヶ峰エリア以外の沿線地域については。
 左藤 直通運転の分岐点である西谷駅が挙げられる。すべての列車が停車する一方、駅周辺インフラが脆弱である。再開発促進地区にも指定されたので、駅を中心とした南北一体となった街づくりを進めていきたい。そのほか羽沢横浜国大駅、三ツ境駅、大和駅、上星川駅、さがみ野駅など駅周辺でそれぞれの地域課題を抱えている。その課題を解決し地域の魅力を引き上げることが鉄道系デベロッパーの役割だと考える。

―― 27年国際園芸博覧会については。
 左藤 同博覧会の最寄り駅は瀬谷駅になる。博覧会への参加、その後の跡地利用についてもグループとして主体的に取り組んでいく。

―― 今後の抱負を。
 左藤 「第7次中期経営計画」で横浜駅西口大改造構想が始動する。建築費高騰など開発環境は非常に厳しいが、街づくりは長い視点を持って取り組む必要がある。今はじっくり腰を据えて将来の街のあり方を議論し、関係各所との緊密な関係を構築していく。さらには鉄道系デベロッパーとして地域課題の解決、経済の活性化を図り、沿線の魅力を高める開発を推進していく。



(聞き手・特別編集委員 松本顕介)
商業施設新聞2609号(2025年8月19日)(1面)
 デベロッパーに聞く 次世代の商業・街づくり No.468

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