7月13日、日本最大級のアウトレットモール「御殿場プレミアム・アウトレット」が開業25周年を迎えた。日本にアウトレットという業態を広めた立役者だが、開発時は日本に浸透していない業態だったこともあり、苦労もあったという。しかし四半世紀を経て、2024年度の売上高は1400億円超を記録し、開業初年度の6倍以上に拡大した。26年目に向けて歩み出した同施設について、支配人の加藤健太氏に話を聞いた。
―― 開発時は日本にアウトレットは浸透していなかったかと思います。苦労もあったのでは。
日本最大級のアウトレットモール「御殿場プレミアム・アウトレット」
加藤 当時、チェルシープロパティグループがアメリカ以外の展開を考えている中で、ファッション文化や消費行動が成熟しているマーケットとして日本を選定したと聞いている。そこで三菱地所、日商岩井(現・双日)とともに合弁会社をつくり(現在の株主はサイモンプロパティグループと三菱地所)、御殿場と、りんくうで開発の検討を始めた。
ただ、当時は日本にアウトレットが少なかったため、開発においては未知数なこともあったようだ。わざわざ有料の高速道路に乗って買い物をしに来ていただけるのか分からなかったし、テナント側もアウトレットに出店することがどういうことなのかイメージがつかず、半信半疑に思われることもあったという。リーシング担当は飛び込み営業のような形で出店の提案をしたこともあったらしい。こうした努力を経て、00年の7月13日にプレミアム・アウトレットの日本1号店として開業した。
―― 今や日本最大級のアウトレットですが、当時の規模は。
加藤 約90店でスタートした。初年度(00年7月~01年3月)の業績は売上高が222億円、レジ客数が約560万人だったのだが、2年目の売上高が232億円だったことから、初年度の期待・話題がいかに大きかったかが分かる。開発時の苦労もあり、今と比べると規模が小さい中、最善の店舗構成を実現できた成果だと思う。その後、2期で約80店、3期で約50店、4期で約80店増えていき、現在は約290店、店舗面積で約6万1300m²に拡大した。三菱地所・サイモン調べでは、アウトレットの店舗面積としては日本一になる。
―― ブランドもラグジュアリー系を含め幅広く揃っています。これは開業当時からだったのですか。
加藤 ここまで幅広く揃っているのは、4期にわたる増設でMDの幅を広げられたことが大きい。1期の成功を受けて2期が開発できたわけだが、2期でラグジュアリー系が充実し、さらにこの2期の成功を受けて3期でブランドが拡充するなど、それぞれの成功を積み上げてMDが拡大していった。
―― 24年度の業績はいかがでしたか。
加藤 24年度の売上高は1409億円となり、過去最高を更新した。23年度は1240億円で、23年度と比較して客数は微増だったが、客単価が1割程度伸びた。ラグジュアリー系はいずれも堅調で、スポーツ系はインバウンド需要を取り込んでいる。また、20代の方が好むようなブランドが好調で、Tシャツで数万円するようなハイブランドでも若い方が購入することもあり、最近は若い方の消費に支えられている実感がある。ほかのプレミアム・アウトレットで勤務していたこともあるが、出店ラインアップの兼ね合いもあって、御殿場は若い方が多いと感じている。
―― 4期ではホテル、温浴施設をオープンしました。改めて狙いや効果について教えてください。
加藤 中期経営計画でアウトレットの多機能化・多目的化を進めていたのだが、これに基づいて小田急グループが運営する施設として「HOTEL CLAD」と日帰り温泉「木の花の湯」を開業した。温浴施設は入浴しながら富士山を望め、ホテルも富士山側の部屋もあるなどクオリティが高い。こうした施設でアウトレットの体験価値を高めることができ、ホテルも周遊の拠点だけでなく、アウトレットをじっくり楽しむ拠点として使っていただいているようだ。ホテルはインバウンドの利用が多く、高稼働で推移していると聞いている。
―― 現在はリニューアルを進めています。
加藤 4期のHILL SIDEゾーンは開業してから5年を迎えており、4~8月末に18店が新たにオープンする。「A.P.C.」「Maison Kitsune」などがオープンし、全体的に若い層に向けた店が増える。また、「Maison Special」など7店はアウトレット施設への常設店は初出店となり、こうした御殿場ならではの店舗ラインアップは足を運ぶ目的にもなってくれる。今後もほかのゾーンでもリニューアルを進めていく計画だ。
―― 改めてこの施設の強みは。
加藤 約290ものブランドが揃っており、しかもそれぞれのブランドが強く、ここにしかないブランドも多い。他のアウトレットを視察することもあるが、負けていないと感じる。また、箱根などの観光地に近接する立地、首都圏からの近さなども特徴だろう。開業25周年を迎え、こうした施設の強みを生かした取り組みを進めてきたい。
(聞き手・編集長 高橋直也)
商業施設新聞2604号(2025年7月15日)(1面)