(株)ヒロカワ製靴(東京都墨田区)は、高品質な日本製の革靴ブランド「スコッチグレイン」を手がけている。店舗は直営のレギュラー店やアウトレット店、ポップアップ店を計10店展開するほか、商品は全国有名百貨店約60店でも取り扱いがある。既存商品に満足することなく、常にアップデートすることで、末永く愛されるブランドを目指していくスコッチグレインについて、同社専務取締役の廣川達朗氏に聞いた。
―― 会社の始まりから。
廣川 当社は元々、初代である祖父が靴づくりを始めたところからスタートした。会社として創業したのは1964年で、78年に自社ブランドのスコッチグレインを立ち上げた。翌79年に旧工場から現在社屋がある場所へと移転し、この土地で50年近く事業を展開している。2020年には社屋と工場の増築・改修を行い、増築にあたっては1.5~2倍程度に拡大、部門を集約して作業効率の向上を図った。
―― 商品について。
廣川 高品質な素材を使用しながら、一貫してグッドイヤーウェルト製法にこだわり、お客様に長く愛用してもらえる革靴を提供している。当社の商品は、アッパーの縫製は一部委託しているものの、それ以外のすべての作業を自社工場で手がけていることも特徴だ。
価格帯は3万6000円(税別)~で、10万円以上のものもあるが、ボリュームゾーンは3万6000~5万6000円となっている。直営店では商品約140点をレギュラー品として扱う。ラインアップは一般的な革靴やローファーをはじめ、チャッカブーツ、ショートブーツ、デザインブーツなどのブーツも作っている。
売れ筋はオーソドックスな3万6000円のストレートチップで、年代を問わず根強い人気がある。さらに、若い人にはローファーも好まれている。
―― 客層について。
廣川 以前は40~50代がメーンターゲットだったが、今は20代後半~30代も多く、若返ったようだ。また、最近はインバウンドも増えているが、商品自体は日本人の足に合ったものを作っているので、多くは昔から愛用いただいているリピーターのお客様が中心だ。一方、若い人は足型が以前に比べて細身だったり、薄かったりするので、現代人の足に合わせた商品開発なども積極的に行い、リピーターに頼らない新規客の獲得にも取り組んでいる。
―― 店舗展開は。
廣川 現在、直営店4店、アウトレット店5店、ポップアップ店(26年5月末まで)1店の計10店を展開している。直営店は旗艦店・一番店の「銀座本店」をはじめ、「ソラマチ店」「表参道店」「大阪店」、アウトレット店は「有楽町店 Factory Lab」「御殿場店」「りんくう店」「佐野店」「土岐店」で、ポップアップ店は6月末に「三井アウトレットパーク 横浜ベイサイド」へ出店した。
―― 今後の出店について。
廣川 直営店で言えば東京、大阪に店舗があるので、人材確保・人材育成の面がクリアできれば、名古屋や福岡に路面店を出店したいと考えている。
加えて、既存の大阪店はオフィス街にあるため、物販店や飲食店が集積した買い物客の往来が多いエリアへの移転なども検討したい。ビジネスウエアのカジュアル化が進み、革靴が通勤で使用される頻度が減ってきている現状を鑑みると、移転して別の場所でドレスシューズやカジュアルシューズを販売し、新しいお客様も獲得していきたい。
―― ポップアップ店は。
廣川 実はポップアップ店をこれまであまりやってこなかったので、今回チャレンジのような形で出店した。これがうまくいけば、今後ポップアップ店も少し注力していくような考えもある。
―― 接客にも注力している。
廣川 接客の良さは当社店舗の特徴でもあり、丁寧な接客を心がけている。初めてご来店されたお客様はサイズの採寸から始まり、ニーズを聞きながらフィッティングを重視した接客を行う。また、出店先の施設が開催する接客ロールプレイングコンテストにも積極的に参加し、そのフィードバックを店舗に持ち帰ってアップデートにつなげるなど、常日頃から接客力向上を意識している。ほかにも靴の修理対応や新商品の勉強会なども行っている。
―― スコッチグレインをどういうブランドにしたいか。
廣川 我々は一貫してグッドイヤーウェルト製法で靴を作り、これに誇りを持っている。クオリティの高い商品を提供し、お客様が胸を張ってスコッチグレインの靴を履けるようなブランドに成長させたい。一方、商品開発においては現状に満足せずアップデートし、店舗では接客力向上に励む。同時に、出店や店舗の改装および移転なども検討したい。
これまでドレスシューズに重きを置いていたが、少しずつ中身を変え、業績が厳しい今だからこそ生まれ変われる転換期と捉えて、新生・スコッチグレインとして末永く愛用されるブランドを目指していく。
(聞き手・副編集長 若山智令/サリョールサラ記者)
商業施設新聞2615号(2025年9月30日)(6面)