トヨタ自動車(株)の子会社である(株)トヨタオートモールクリエイトに大きな動きがあった。先ごろ、三井不動産(株)がトヨタオートモールクリエイトの全株式を取得することでトヨタ自動車と合意し、三井不動産グループとなることが公表された。「三井不動産の良さとトヨタオートモールクリエイトの良さを融合するのが私の役目だ」と語る代表取締役社長の河合利夫氏に話を聞いた。
―― 既存施設の動向について。
河合 当社は岐阜市で「カラフルタウン岐阜」、横浜市港北区で「トレッサ横浜」を運営する。カラフルタウン岐阜は2000年11月に開業しており、25年3月期の来館者数は852万人と、過去2番目に大きい数値を記録した。「コナズ珈琲」のフラダンスイベントなど、テナント主体のイベントが来館者数の増加に大きく貢献した。
―― 26年3月期は。
河合 来館者数は858万人を目標に掲げているが、過去最高の860万人を超えろと発破をかけている。今秋に25周年を迎えるので、テナントとタッグを組んで“25”にちなんだイベントの開催を計画中だ。大規模なテナントの入れ替えは予定しておらず、顧客の買い物頻度の向上が当面の課題と言える。
―― トレッサ横浜は。
河合 来館者数は24年3月期に初めて1500万人を超え、25年3月期も歴代2位の1515万人を記録した。トレッサ横浜は08年に全面開業したが、来館者数は年々伸び続けている。売上高も24年3月期に過去最高の400億円を超え、25年3月期は過去最高を更新する430億円を計上している。入居するオートモールの売り上げが好調に推移したほか、物価高で客単価が上昇し、それが各テナントの売り上げを押し上げた。テナントも「ノジマ」や新規に設定したキッズゾーンなどが好調を維持した。トレッサ横浜では24年7月にカードの会員システムを刷新し、新たなアプリの導入による囲い込み策も好調の要因と言える。
―― 26年3月期の取り組みについて。
河合 北棟の1~3階に出店していた「スーパースポーツゼビオ」が24年夏に退店してしまい、大きな空床があるが、(株)アルペンと共同でスポーツゾーンを拡張し、隣接するオートモールとともにアクティブなライフスタイルを提案するエリアづくりを進めている。すでに3階は3月に「アルペンアウトドアーズ」と「ゴルフ5フラッグシップストア」が開店し、1~2階は26年春にオープンする予定だ。その他の大規模なテナントの入れ替えは20周年に向けて、今後準備を進めていく。
―― 三井不動産の傘下に入ることになりました。
河合 カラフルタウン岐阜やトレッサ横浜の立ち上げに手伝ってもらうなど、元々ご縁はあった。当社は2つの商業施設を有するが、25年という短い期間の運営ノウハウしか持っていない。次の50年に向けて当社の施設を維持・管理し、かつお客様を増やしていくという点で三井不動産グループの知見や経験を生かして、引き続き社員も元気でいられることから、親会社の選択を支持した。
―― 両社で価値観は異なるのでしょうか。
河合 ずいぶん違うと感じる。トヨタ自動車では1にユーザー、2にディーラー、3にメーカーの利益を考えよという著名な言葉がある。自身はこの業界に身を置くようになる中で、2、3をそれぞれテナント、デベロッパーに置き換え、かつユーザー=地域であることを強く認識し、テナントとともにいかに地域に好かれる施設にするかを最優先に進めてきた。三井不動産グループの歴史や哲学はこれから学ぶが、彼らが重視する資産価値、物件価値の向上という考え方が、今までの自身の考えとどう整合し得るかをしっかり考えていかないといけない。
―― 今後の展開を。
河合 施設名は当面そのままだが、会社名は時期を置かず変えるだろう。これからは三井不動産の良い点と、トヨタオートモールクリエイトの良い点を融合するのが私の役目だ。
―― 具体的には。
スポーツとオートモールを組み合わせる「トレッサ横浜」
河合 サービス工場のあるオートモールが当社の最大の特徴で、様々な他テナントとのコラボやモビリティの実験も進めてきた。近年、三井不動産グループではスポーツやエンタメに力を入れているが、それらの一部に我々の従前の取り組みが生かせないかと勝手に考えている。また、当社は24年から異業種コラボ店舗づくりマッチングサービスも開始した。魅力的な店舗づくりを求めている自動車販売店と、ロードサイドの好立地に店舗を展開したいテナント企業を結びつけるサービスで、すでにトヨタグループで実績を上げている。三井不動産の傘下に入っても、このサービスは継続し、拡大していきたい。
(聞き手・副編集長 岡田 光)
商業施設新聞2610号(2025年8月26日)(1面)
デベロッパーに聞く 次世代の商業・街づくり No.469