家具やインテリアなどの企画・販売を行う(株)リビングハウス(大阪市西区)が5月26日、東京証券取引所 TOKYO PRO Marketに株式上場を果たした。直近は東京と大阪で新店をオープンさせ、(株)センプレデザインの子会社化を発表するなど、積極的な施策を相次いで打ち出している。株式上場を機にどのような成長戦略を描くのか、同社代表取締役社長の北村甲介氏に話を聞いた。
―― 株式上場おめでとうございます。
北村 コロナ禍の2021年から準備を始め、4年の歳月を経て、東京証券取引所 TOKYO PRO Marketに上場した。上場した理由は企業としての信用や信頼を得て、採用、出店、BtoBビジネスを強化するのが狙いだ。
出店では、7月3日に東京・南青山に日本初の路面旗艦店「Spazio Edra Tokyo Aoyama by LIVING HOUSE.(以下Edra)」、同月18日には大阪・南堀江にインテリアブランド「KARE」の国内最大級の旗艦店「KARE堀江店」を開店した。特にEdraは、23年から当社が日本唯一の正規代理店契約を締結して展開するイタリアの高級家具ブランドで、家具業界でもトップオブトップのブランドだ。南青山の店舗はショールームとして、一般のお客様はもちろん、設計事務所や建築事務所に勤めるお客様も呼び込んでいる。
―― 現在の店舗数は。
24年10月に開店した「LIVING HOUSE. 長崎スタジアムシティ店」
北村 主力の「LIVING HOUSE.」を含め、8月時点で37店を営業し、うち商業施設内店舗が33店で、路面店は4店にとどまる。家具・インテリア店の多くは目的性の高い商品を扱うので、ロードサイドに立地する機会が多い。しかし、当社の店舗はいまだ知らないリビングの過ごし方を伝える未知案内の役目を果たすため、家具やインテリアを探していないお客様にもアプローチしている。
ふらっと入店していただいたお客様を潜在顧客と捉え、ビジュアルで訴求しつつ、手厚い接客でもてなす、これがLIVING HOUSE.の強みである。だからこそ、潜在顧客がいる商業施設内の店舗が多く、新規案件に加え、改装案件にも出店している。最近はアパレルの面積が減り、ライフスタイル型テナントのニーズが高まっているため、出店の引き合いは旺盛だ。
―― 店舗フォーマットと最近の取り組みを。
北村 LIVING HOUSE.は店舗面積60~70坪が最小で、同100~200坪が標準だ。家具と雑貨の商品比率は家具が85%、雑貨は15%となる。同店はファミリー層をターゲットに設定し、30~40代の来店比率が全体の70%を占める。
出店と合わせて、最近は人材教育にも力を入れており、23年から中途採用者を対象に、定期的に研修を実施している。家具は滅多に買わない耐久財のため、提案力やコーディネート力が低下しないように注視している。人手不足は地方で強く感じられ、24年10月に開店した「長崎スタジアムシティ店」では新たな試みとして現地採用を取り入れた。LIVING HOUSE.は今後、東北地方といった空白エリアにも出店を考えており、長崎スタジアムシティ店はその試金石と言える。
―― 今後の出店について。
北村 26年2月期は25年4月に「LIVING HOUSE. ららぽーと安城店」を開店しており、同年秋にはアウトレット施設内を含め、LIVING HOUSE.業態で3店をオープンする予定だ。これと並行して、新業態の開発も進めている。
LIVING HOUSE.や前述のKAREは、ミドル~ミドルハイを主戦場とし、下はイケアやニトリで寡占状態だが、上は空白地帯となる。また、LIVING HOUSE.はモダン寄りだが、北欧的な要素を持つナチュラル寄りはこれまで手がけてこなかったので、そこを攻めていきたい。
―― 新業態の概要を。
北村 店舗面積100坪程度で、家具と雑貨の商品比率は家具が70%、雑貨は30%となる。LIVING HOUSE.はインテリア雑貨を中心に扱うが、新業態はインテリア雑貨に生活雑貨を加え、ターゲットはファミリー層だけでなく、単身者も狙う。新業態は都市型店舗として、立地は郊外型モールよりも、駅ビルやファッションビルなどを対象とする。1号店は東京都内に出店が決まっており、26年にオープンする予定だ。
―― センプレデザインを子会社化しました。
北村 上場を機にシナジー効果が見込めるM&Aも積極的に考えており、センプレデザインはその第1弾となる。センプレデザインとは24年8月にコラボ業態「/SEMPRE」を出店し、当社ではアプローチできていないテイストを持っていると感じた。実店舗はこの1店だけだが、もっと店舗は増やせると感じており、デベロッパーに新たな選択肢を提供していきたい。
―― 将来の目標を。
北村 当社は30年2月期に売上高100億円を目指している。それを実現するためにも、26年から始まる新業態で都市部を攻略し、子会社化したセンプレデザインの店舗も出店を進めることで、デベロッパーの出店要請に柔軟に対応する体制を構築していきたい。そうすればLIVING HOUSE.を含め、年間7~8店は出店できると踏んでいる。
(聞き手・副編集長 岡田光)
商業施設新聞2614号(2025年9月23日)(5面)
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