商業施設新聞
新聞情報紙のご案内・ご購読 書籍のご案内・ご購入 セミナー/イベントのご案内 広告のご案内
第13回

東急不動産(株) 取締役常務執行役員 岡田正志氏


東急プラザで銀座の魅力向上に
関西2大施設を大規模改装

2016/2/2

東急不動産(株) 取締役常務執行役員 岡田正志氏
 東急不動産(株)(東京都港区南青山2-6-21、Tel.03-5414-1099)は3月、同社旗艦店となる「東急プラザ銀座」を125店で開業する。また関西の大型施設の改装にも乗り出す。同社取締役常務執行役員の岡田正志氏に今年の商業開発動向を聞いた。

―― まず2015年を振り返って。
 岡田 3月に「東急プラザ渋谷」を閉館した一方で、「キュープラザ原宿」「二子玉川ライズテラスマーケット」「もりのみやキューズモールBASE」を開業した。歴史あるものが幕を閉じ、新しい施設が生まれた年だった。

―― 開発環境はどうですか。
 岡田 厳しい。土地の取得競争が激化しているし、建設コストは4年前の2倍弱程度にまで高騰している。工事費上昇は郊外型商業施設の開発を難しくする。郊外型は土地代が安く、投資は建物が大半を占めるが、建物コストが従来の2倍弱では厳しい。都心型は土地に占める割合が高いので、全体の投資額が極端に増えない。また郊外型は来館を車主体で考えれば良かったが、車の保有率が若い人を中心に下がっており、車+公共交通機関で立地を考える必要がある。

―― SCでは「体験」「観光」が注目され、「もりのみや」にはランニングトラックがあります。
 岡田 商業施設同士の競争が激しく、いかに個性を発揮するか。すでに物販、飲食は揃っており、時間消費型のなかで、アイデア勝負となる。

―― 16年は「東急プラザ銀座」を春に開業します。コンセプトや狙いは。
 岡田 東京・銀座五丁目の数寄屋橋交差点に面しており、銀座だけでなく、日比谷や丸の内、有楽町の入り口でもあり、様々な人の流れが交差する結節点。ここが起点となり、街の回遊が始まる。必ず立ち寄ってもらえる施設づくりを目指している。
 首都圏では、東急プラザは「表参道原宿」や「蒲田」があるが、規模の面で旗艦店とは言い難い。東急プラザを都心で展開する上で旗艦店が欲しかった。「銀座」はそれにふさわしい施設となる。

―― 近隣で開発が進むG6(銀座6丁目再開発)はオフィスなどの複合型です。
 岡田 不動産を取得した当時は複合型も検討していた。リーマンショック後、本土地においては商業の方が事業性が高いこと、オフィス利用者のためのエントランスや買い物客との動線を分ける必要があり、売り場に制約が出ること、飲食フロアの位置など、商業中心に考えるとベストではないとの結論に至り、全館商業とした。インパクトがあり、内容も充実できる。さらに6階に大吹き抜け「キリコラウンジ」や屋上テラスなど、パブリックスペースをふんだんにとる。複合型ではゆとり空間の確保も難しいと判断した。

―― パブリックスペースは銀座に不足しています。
 岡田 地価が高い面もある。計画地の前にある銀座で希少な公園、数寄屋橋公園は木も生い茂り暗いイメージがあったが、公園の整備や目の前に店舗を配置し賑わいや憩いを創出するほか、街のインフォメーションセンターもつくり、地域のゲートウエイを目指す。

―― ターゲットは。
 岡田 「0歳から100歳まで」。それだけ銀座の街は“分厚い”。若年層から熟年の方まで楽しめる。全国はもとより、世界から来られた方をターゲットにする。銀座は伝統と革新の街。古いものを大切にしながらも、新しいものを貪欲に取り込んでいく。常に変化する街に対応したい。

―― 今秋G6が、2年後には三井不動産の新日比谷プロジェクトが開業し、エリアで競合の激化が予想されます。
 岡田 その間にお客様を固定化していく。G6が開業すると銀座のポテンシャルが一段と高まる。さらに日比谷計画が完成するとみゆき通りでの回遊が生まれ、前述の結節点という立地が生きる。今や都市間競争を超えて、世界との戦いにある。銀座にこれだけの商業施設があれば、日本、東京という選択肢になる。

―― 空港型免税店を導入します。
 岡田 ロッテ免税店誘致を決めたのは2年前で少し早い気もしたが、訪日客の急増で時代が追いついた格好だ。

―― 既存施設の活性化は。
 岡田 昨秋、東急プラザ戸塚をリニューアルした。東急プラザ表参道原宿も昨秋から段階的に改装を進めており、全体としては数店の新規導入で、今春完了の予定だ。神宮前交差点に開業したことで、同交差点が街の中心になった。

―― 関西では。
 岡田 「あべのキューズモール」「あまがさきキューズモール」で大規模リニューアルを行う。「あべの」は250店の4割にあたる約100店を新店導入や改装・移転する。開業から5年が経ち、地域にも認知され、売り上げも好調だ。現在の451億円から将来的には500億円を目指す。

―― 足りない部分は。
 岡田 当時阿倍野エリアは今とは異なるイメージをもたれていて、商圏の良さを東京のテナントの方に十分理解していただけなかった。開業して実績を積み、出店したいというお声がけを頂けるようになったので、今のお客様に合わせてブラッシュアップする。

―― 「あまがさき」は。
 岡田 春から夏にかけて新規を含め74店を一新する。12年にキリンビールから取得した施設で、テナント入れ替えなどの抜本的な形では今回が初めて。周辺には競合が多く、我々の目線での施設価値を高める。

―― 最後に一言を。
 岡田 まずは東急プラザ銀座の運営を軌道に乗せるのが最大のミッションだ。それから18年度完成の渋谷の再開発事業をしっかり進める。それ以外に広域渋谷圏での開発も検討したい。

(聞き手・編集長 松本顕介)
※商業施設新聞2124号(2016年1月5日)(1面)
 デベロッパーに聞く 次世代の商業・街づくり No.181

サイト内検索