商業施設新聞
新聞情報紙のご案内・ご購読 書籍のご案内・ご購入 セミナー/イベントのご案内 広告のご案内
第14回

EGGS'NTHINGS JAPAN(株) 代表取締役社長 荻野忍氏


15年は7店、出店を加速
未出店の政令指定都市へも
真の「朝食文化」定着を

2016/2/9

EGGS
 この数年、一躍ブームとなった「パンケーキ」。若い女性を中心に行列を生み出し、専門店だけでなく、パンケーキを扱うレストラン、カフェも急増している。そのブームの火付け役とも言えるのがハワイ発のカジュアルレストラン「Eggs'n Things」だ。2010年に原宿・表参道に開店した1号店を皮切りに、各店がこの地に進出し、パンケーキの激戦区に、また飲食ブランドの情報発信地として定着させた感がある。一過性の盛り上がりと思われていたパンケーキだが、商業施設でも“定番の業態”として存在感を放っている。5年目を迎え、激戦を勝ち抜いてきた同社の戦略、今後のビジョンについてEGGS'N THINGS JAPAN(株)代表取締役社長の荻野忍氏に話を聞いた。

―― 強みは。
 荻野 パンケーキは特に女性、F1層に人気が高いが、当ブランドはハワイで41年の歴史を有しているため、認知度が高く、三世代も含め幅広い層に足を運んでいただいている。また、定番はパンケーキだが、エッグベネディクトやフレンチトーストなど多彩なメニューをラインアップし、パンケーキに依存していないのも特徴だ。メニューのブラッシュアップも定期的に行い、飽きない工夫を凝らしている。これが再来店を促進している。

―― 課題は。
 荻野 「All Day Breakfast」をコンセプトに掲げており、これまで日本になかった朝食文化の定着を目指してきたが、より浸透させたい。他社との差別化もここにあると思う。
 パンケーキは朝食やスイーツのイメージが強いため、朝から夕方までの回転率は非常に高い。その中で、まだ弱いディナー需要を伸ばしていきたい。前述のとおり、パンケーキ以外のメニューにも力を入れており、17時以降はアルコールも楽しめる。女子会やデート需要などをアピールし、利用シーンを拡大していく。

―― この2年は店舗展開を加速しました。
 荻野 10年に1号店となる原宿店をオープンしたが、開業から2年は新規出店を行わず、基盤作りに注力した。14年は5店、15年は7店を出店し、店舗数は16店にまで拡大した。日本上陸以来、増収増益を達成している。

―― SC内への出店が増えました。
EXPOCITY店の内観
EXPOCITY店の内観
 荻野 15年は名古屋PARCO midi(名古屋市)、コクーンシティ コクーン2(さいたま市)、ザ パークフロントホテル(大阪市)、ららぽーとEXPOCITY(大阪府吹田市)、ららぽーとTOKYO-BAY(千葉県船橋市)、ららぽーと立川立飛(東京都立川市)、ラゾーナ川崎プラザ(川崎市)と主に新規開業の商業施設への出店が多かった。新しいエリアに出店する場合はまず路面店を構え、商業施設内へ出店という順番で進めてきたが、路面店でイメージを確立し土台をしっかり築けてきたこともあり、商業施設への出店が加速した。

―― 路面店のような店舗が多いですね。
 荻野 テラス席の設置やゆったりとくつろげるホスピタリティの高い空間作りが必須となる。ありがたいことにデベロッパー側がブランドの世界観を理解していただいており、路面店風、独立区画で出店ができている。また、集客できるブランドとして認知され、良い区画を提供していただけることが多い。また近年、路面店を彷彿とさせるテナントの誘致をデベロッパーが進めていることも一因だろう。

―― 18年までに20店体制を掲げています。
 荻野 計画ありきではないが、14年に目標とした10店体制とし、20店も目前だ。現在は首都圏、関西、福岡、名古屋など大都市に展開している。今後は札幌、仙台、広島などの政令指定都市への出店を考えている。中心市街地やトラフィックの多いエリア、また、これまで同様ハワイの海をイメージできるロケーションも大切にしていきたい。

―― 原宿・表参道を「飲食ブランドの情報発信地」として定着させたのでは。
 荻野 元々情報発信力の高いエリアだったが、やはりファッションのイメージが強い。当社が出店するまで飲食店の比率は低かったと思う。1号店は表参道、明治通りから裏に入った場所に開店したが、「古着」「ストリート系」の印象が強く、男性の比率が高かった。出店を機に、裏通りに女性が増え、ストリートの流れが変わったと言われている。さらに各社がこのエリアに出店し、パンケーキ激戦区としてメディアに取り上げられたこともあり、飲食の情報発信地としての地位を確立したのではないか。

―― 今後の展開は。
 荻野 フォーマットを小型化した店舗も出店していきたい。イメージを重視するため標準的なサイズを約60坪としてきたが、ららぽーとEXPOCITYやTOKYO-BAYは小型化を図った。さらに効率の良さを重視したミニマムサイズのパッケージも考えている。また、朝食文化の浸透を目指しているが、例えばサラリーマンが朝に駅で立ち食いそばを食べるような使われ方はしていない。真の「朝食文化」に定着を図っていきたい。そのため、朝食文化に親和性の高い「駅ナカ」などにも出店も考えており、実現できればかなり面白い。パンケーキの行列の先を見据え、様々な構想を練っている。

(聞き手・大塚麻衣子記者)
※商業施設新聞2125号(2016年1月12日)(8面)
 デベロッパーに聞く 次世代の商業・街づくり No.174

サイト内検索