商業施設新聞
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第23回

(株)あさくま 代表取締役 森下篤史氏


「ステーキのあさくま」3年で100店へ
高い利益を誘客に投資
積極的M&Aで次の一手も

2016/4/12

(株)あさくま 代表取締役 森下篤史氏
 (株)あさくま(名古屋市天白区植田2-1410、Tel.052-800-7781)は、主力の「ステーキのあさくま」が好調だ。とりわけ高い利益率を叩き出し、これを誘客に投じている。その一方で、最近は積極的にM&Aを行い、業容を拡大している。代表取締の森下篤史氏に今後の戦略などを聞いた。

―― ステーキの「あさくま」の状況から。
 森下 今期はこれまで既存店売り上げが前年比115%で、5年連続で前年を超え、既存店売り上げは1.6倍となった。15年12月の経常利益率は19%に達し、年間では14%だ。この利益をサラダバーに投資している。
 ソフトクリームコーナーにワッフル焼き機を置き、鯛焼き機も追加した。そしてその横には小豆とカスタードを添えた。またソフトクリームコーナーにはコーヒーゼリーやフルーツポンチを次々に投入した。コストはかかるが、利益率19%を叩き出しているので問題はなく、他社は追随できなくなるし、なんといってもお客様が喜ぶ。

―― この高い利益率の背景は。
 森下 10年で人件費比率を35%から22%に下げた一方で、サービスを向上させた。例えば来店時に「いらっしゃいませ」ではなく「寒くなりましたね」と言うように指導している。店内も43秒で歩かせている。その速さがわかってくると、てきぱきやるようになる。その速度で店内4カ所を回る時にサラダバーの清掃やスープの確認を徹底させたことで、スープが空になることがなくなった。
 人手を減らしてもトレーニング次第で、サービス、つまり生産性が向上する。また、ご案内しても注文を取りに行けない時は、ただ待たせずに「サラダバーで選ばれてはいかがでしょう」とご案内すれば待たされた感じがしない。こうしたことを積み重ねてきた。
 SC内の店舗で40人ほどウェイティングが掛っている時に、「アイスクリームはいかがでしょう」とすると、待っているお客様が皆アイスクリームを食べている。周辺へアピールにもなるし、お客様は待っていることがいやな気持ちにならない。
 お客様がどうしたら喜ぶかの観点で、商品や並べ方を毎回考える。ビュッフェ店には60~70品があり、売れない商品はどれで、代わりに何を入れるか。試しにパートがつくってきた商品が売れれば、他も店にも展開できる。従業員にとっても単なるパートの仕事より面白いし、売り上げ上位になれば表彰もする。人がいないので、総力戦だ。

―― 「あさくま」の立地は。
 森下 基本的に郊外ロードサイドだが、今期はSCへも3店程度出店する。ロードサイドでは駐車場台数が最低30台で、50台は欲しい。100席が基本で130~140坪が必要となる。ただ、80坪程度でも立地によってはゴーサインを出す。

―― 出店計画は。
 森下 来年25~30店出すために、今年は15店に絞り込む。エリアは関東、中部とする。
 現在、総店舗数は直営が41店でFCを含めると49店だ。これを3年で直営100店にする。売り上げは16年3月期で90億円を見込む。来期は100億円の大台となる。100店では130億円を見込む。そして徐々に関西に広げる。さらに次のステップは九州だ。拠点となる福岡に出店後、九州で10~15店出す。いずれ北陸、東北というようになるだろう。

―― M&Aに積極的です。
 森下 「あさくま」が絶好調なので、次の一手を打つためにこの1年半で、イタリアンビュッフェの「パルティーレ」「オランダ坂珈琲邸」「ファーマーズガーデン」「もつ焼きエビス参」、インドネシア料理「スラバヤ」を買収し、グループ企業とした。

―― 今後の展開は。
 森下 今最も注力するのは「もつ焼きエビス参」で、今後1年で15店を出店する。その次がオランダ坂珈琲邸だ。オランダ坂珈琲邸の店舗は、高家賃の立地でコストをかけてつくっており、損益分岐点が高い。商売そのものは非常におもしろく、生産性も高い。「あさくま」のように立地を吟味して、デザインを変えずに、コストを抑えた店作りを行う。その手法で今年は実験として関東に2店を出店する。

―― 他の3業態は。
 森下 売り上げが少ないので、様々な施策を打ち出しているが、そうはうまくいかない。見通しが立たなければ「あさくま」に変更したり、場合によっては閉店、売却する。人材が豊富ではないので、グループの人たちのやる気を引き出すのも私の役目である。
 この1年は、スラバヤとビュッフェ業態をてこ入れし、もつ焼きエビス参は積極展開し、試験的にオランダ坂珈琲邸を出店する。

―― 海外進出は。
 森下 早ければ来年にも東南アジアに進出する。日本の食文化だけでなく、世界に日本の文化を輸出する。併せて日本の誇りを教えていかなければいけないと考えており、社員に輸出できる日本文化を伝授する。これが最後のミッションだと思って取り組む。

(聞き手・編集長 松本顕介)
※商業施設新聞2134号(2016年3月15日)(8面)
 経営者の目線 外食インタビュー

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