先日、バンコクに行く機会があり、地銀のバンコク駐在員事務所でタイの経済状況についてレクチャーを受けた。タイの経済は停滞気味とし、求人有効倍率は0.9%だが、不景気感は感じられない。経済停滞の要因は、2013年当時のインラック政権が最低賃金を月9000バーツ(約3万円)にした政策で、これがタイ全域に適用されることから、タイの企業もラオス、カンボジア、ミャンマーなど周辺諸国に出ているという。
在留邦人は約6万人で、タイ人口の1%を切る。日系の進出企業は約4500社あるが、タイの法律で外国企業の株式の出資は49%までとなっている。街で見かける車はトヨタや日産など日本車がほとんどだが、タイの現地法人が生産した車で、タイ企業が生産する車として位置付けられている。
タイ人の気質は「深慮せずに陽気」。民族性なのか工場はランチ手当てが付くと知ると、みんなそちらに移るという。一括した総額より、各種手当に魅力を感じるようだ。
BTS(スカイトレイン)のチットロム駅近くに、東南アジア最大級と呼ばれるショッピングモール「セントラル・ワールド・プラザ」があり、連結して日系企業の「ISETAN」が出店している。日本国内の「伊勢丹」となんら遜色のない上品できれいな売り場だった。
「セントラル・ワールド・プラザ」の
店内ディスプレイ
ここでひのき枕など、健康機器や雑貨の売り場を展開している日本人に話を聞いたが、バンコクの富裕層は健康志向が非常に強く、健康にいいものと判断すれば、高額でも購入するという。また、商品の日本語表示は、5年ほど前からしなくなったという。タイで開店して20年目に入った「ISETAN」は、今では完全にタイの富裕層をメーンターゲットにしている。
加えて近年、バンコクに飲食店を出したいという希望が多いという。日系企業の和食店、ラーメン店はもちろんのこと、中国で展開している企業がチャイナリスクを恐れ、バンコクに進出してくる案件が増えている。バンコクには約2000店の和食店があるが、競争過多であり、出店企業は1年以内に約4割が撤退するという。
日本で考えるより、バンコクでの競争は予想以上に厳しいようだ。