商業施設新聞
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第52回

(株)スープアンドイノベーション 代表取締役社長 室賀康氏


出店攻勢で年内50店体制に
商業施設内への出店加速
スープ専門の総合商社目指す

2016/11/8

(株)スープアンドイノベーション 代表取締役社長 室賀康氏
 スープ専門店「ベリーベリースープ」を展開する㈱スープアンドイノベーション(長野市北石堂町1412-1、Tel.026-223-6142)は、2009年4月に1号店を長野市にオープン、12年以降、出店攻勢をかけ、現在約40店を展開する。豊富な野菜、きのこの産地である長野発のスープ店として、商品力の高さやヘルシー感を訴求し、後発ながら業界2位のポジションに成長している。15年は14店を開店、16年は10店の出店を見込み、年内に50店体制とする計画だ。今後5年で300店を新規出店、2038年には2000店という壮大な目標を掲げる。積極的な出店の原動力やこの数字を達成するためのビジョンについて、同社代表取締役社長の室賀康氏にお話を伺った。

 ――スープ専門店としては後発です。
 室賀 スープ専門業態最大手の「スープストックトーキョー」は1999年から都心を中心に展開し、同業態の認知度を上げ、市場を牽引し、他社の参入もあった。しかし、多店舗化は進んでいないのが現状で、これは競合が少ないからだ。ただ、店舗数は少ないものの、スープ専門店は女性の外食の選択肢を増やし、これまで外食チェーンが拾い切れていなかった客層を獲得できる可能性は大きく、後発であっても勝機はある。
 なお、食費への年間支出が減る中でスープ購入額は増加傾向にあるという統計もある。時短やヘルシーという特性が時代に即しており、今後も成長が期待されている。当社は十分なビジネスチャンスがあると考えている。

 ――概要を。
 室賀 「ベリーベリースープ」のコンセプトは「女性ひとりでも気軽に白いごはんとスープをしっかり食べられる店」で、狙いどおり女性の来店が9割を超える。フォークがなければ食べられないほど「具だくさん」のスープにこだわっている。
 スープはポトフやハンバーグシチューなどの「食べるスープ」、コンソメスープなどの「飲むスープ」、高級食材を使用した「高級スープ」の3カテゴリー、約20種類を揃える。食べるスープの1食当たりの重量は300g、具は6~7割を占め、食べ応えが十分にあるのが特徴だ。パスタ、デザートなどもラインアップし、スープを軸にした女性のための定食屋という立ち位置を目指している。

 ――差別化はどのように。
 室賀 差別化を図るには、とにかく商品力、「美味しいスープ」であることが大前提だ。そのため、スープの個性に合わせた複数の調理方法を使い分ける。他社が採用するウォーマーでの保温調理は過熱耐性に優れたアイテムのみに限定し、手鍋で加熱する手鍋調理や原液スープをブイヨンなどでのばす調合調理、煮崩れを防ぐ商品には個食パウチを採用している。これは、スープウォーマーのみを使用する場合と比較すると、手間も増え、提供時間は長くなるが、味を均一に保てる。この手法が競合他社との大きな違いだ。また、常時商品開発を行い、レシピは多岐にわたる。季節や立地によってオリジナルスープを展開し、差別化につなげている。

 ――立地について。
 室賀 幅広い年齢層、オケージョンを想定しているため、あらゆる立地に出店できる。競合が出店しない地方都市での支持も高く、物流網を確保、オペレーションの効率化を図るためにも地方で店舗網を広げていきたい。
 郊外ロードサイド、商店街・繁華街のビルインタイプが勝ちパターンだったが、ここ最近は商業施設内への出店も進めている。クイック需要よりも「いつもよりいいものを食べたい」というニーズが高いため、ハレの日需要のある商業施設との相性が良い。例えば新潟万代シテイ店、岡山天満屋、博多リバレインなどは、特に好調だ。

 ――課題もあります。
 室賀 クオリティを維持するため、原価率は33.5%で正直高い。採算の問題もあり、首都圏の1都3県、特に都内での展開が遅れている。当ブランドと相性の良い「ハレの日」ニーズを満たす商業施設に出店するには障壁があるが、予算を抑制できる小型形態や物販専門店のフォーマットを確立し、首都圏でも出店進め、認知度を上げていきたい。

 ――店作りについて。
シンプルなカフェを彷彿させる店内
シンプルなカフェを彷彿させる店内
 室賀 標準店舗面積は20~30坪で、キッチンは5~8坪、1人客用のカウンター席、複数でも利用しやすいテーブル席を設ける。内装は木と白のタイル中心、ペンダントライトを採用するなど、シンプルカジュアルなカフェのような居心地の良い空間としている。ゆっくり食事ができるよう、ファッション誌や情報誌を置いている。リピートしていただくための仕掛けでもある。移動販売車の開発も行い、この形態でも出店を進めていく。

 ――抱負をお願いします。
 室賀 「スープ専門の総合商社」を目指している。まず、スープ専門店の運営だったが、レトルト・冷凍スープの店頭販売といった小売、スープの輸出輸入、料理教室の開催、スープスペシャリストといった資格やスープ検定の普及など、スープに関連することならば何でも挑戦する。ただ、軸はスープ。スープ以外のことに手を出すつもりはない。多角化するために必要となるのは、やはり認知度を上げることと、店舗数の拡大だ。50店体制を築き足元を固め、5年後の300店が急務となる。

(聞き手・大塚麻衣子記者)
※商業施設新聞2162号(2016年10月4日)(8面)
 商業施設の元気テナント No.204

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