商業施設新聞
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第103回

(株)東急モールズデベロップメント 代表取締役社長 堀江正博氏


今秋2施設を東急スクエアに
MM施設統合でエンタメ強化

2017/11/7

(株)東急モールズデベロップメント 代表取締役社長 堀江正博氏
 東急線沿線を中心に地域密着型のSCを14施設運営する(株)東急モールズデベロップメント(TMD、東京都渋谷区道玄坂1-10-7、Tel.03-3477-5150)。沿線型SC事業とSHIBUYA109事業を展開してきたが、互いの個性を生かせるよう、4月に“109事業”の分社化を行った。6月には、リテール事業強化、東急電鉄との一体的な運営を強めるべく、新社長に堀江正博氏が就任した。堀江氏に今後の展開についてお話を伺った。

―― 分社化を行いました。
 堀江 SC事業に特化することで、市場環境変化に迅速に対応する。2016年4月にはSC事業部とSHIBUYA109事業部に分け、分社化に向けた流れはできていた。分社化は、退路を断ち、覚悟を決め、さらにアクセルを踏むための意気込みの表れ。選ばれるSCであるために、より専門性を発揮できる環境とする必要があった。

―― 強みは。
 堀江 沿線と地方とで若干毛色は違うが、DNAは同じ。面的開発、“街づくり”の役割を担っている。SCだけのスタンドアローンで生きているわけではなく、常に街に開かれた存在として、街に住む人のために存在している。「たまプラーザ テラス」に代表されるように、孫・子の代まで住みたいと思っていただける、人に寄り添ったSCを作っていると自負している。

―― 今秋、「東急スクエア」ブランドで2施設が加わります。
 堀江 今秋「静岡109」を転換。10月末にはみなとみらい駅直結の「クイーンズスクエア横浜【アット!】」と「クイーンズイースト」の2施設を統合し、「みなとみらい東急スクエア」としてオープンし、同ブランドは7施設となる。
 なお、16年春には金沢・香林坊の109を東急スクエアに転換したが、集客や売り上げは向上している。テナントも東急ハンズや地元の有力な書店を導入し、エリアで一定の存在感を発揮している。ホテルとの相乗効果、隣に百貨店があることで集積としても面白いものになった。

―― 静岡について。
 堀江 静岡109のオープン時は109最盛期で、伊豆半島や山梨など超広域から集客していた。今回、より幅広い層に訴求し、足元からの集客も確保する狙いでブランド転換を行う。

―― MMエリアは。
 堀江 東横線とつながるMMエリアは、沿線同様の位置づけ。東急電鉄でも重要な観光・商業拠点として、同地区の魅力向上に取り組んできた。
 観光資源に恵まれ、横浜駅周辺とは違うポテンシャルがある。まとまった土地も多く、さらなる開発の余地がある。そのエリアに、売り場面積2万5000m²・約130のテナントを擁する施設が誕生するインパクトは大きい。「東急」の冠がついたことで、さらに存在感を発揮したい。

―― どのようなMDに。
 堀江 従来のアット!はキャラクター、アウトドア、飲食の集積、クイーンズイーストは百貨店の流れを受け、アッパーグレードなアパレルを中心とした館で、特色が異なっていた。統合でMD統一が可能になる。沿線SCとしての役割を果たしつつも、観光ニーズに対応できる要素も満たし、双方が満足できるものを提供したい。先行して7月にnamcoのAM施設「あそびパーク」を開店したように、エンターテインメント性、ファミリー要素のあるテナントも誘致していく。

―― 今後、スクエアブランド化を進めますか。
 堀江 ブランドの整理・再編は行っていくつもりで、施設規模に応じて実施する。スクエアブランドは面積が一定規模以上である必要がある。

―― 注目カテゴリーは。
 堀江 主力テナントが似通ってくる中、「something different」を提案したい。生活に必要なものはグレード感を含め提供しつつ、新しいモノもいち早く紹介していきたい。テナントと新業態の開発も行っていく。
 飲食は、エンターテインメントとコト消費もできるコンテンツで、我々も強化していく。飲食ゾーンに押し込むのではなく、路面部分に配置したり、テナントミックスを行うなどして、うまく魅力を発揮したい。
 意外と欠落しているのが、シニア向けのブランドだ。人口動態を見極め、シニアに提案できるテナントを導入する。

―― 目指すものは。
 堀江 我々も東急電鉄でも、SC事業は区画貸しの「不動産賃貸業」ではなく、「リテール事業」として捉えている。SC運営側として小売りに一歩踏み込む。孤独になりがちな店長の気持ちも分かる、テナントと一体化した館運営を目指している。
 また、東急グループは、百貨店・GMS・スーパー・飲食店と幅広く展開しており、リテール業態の個々の強みを横断的に活かし合うことで、従来の不動産業の常識にとらわれないSCの実現に取り組む。109事業は抜けるが、委託の3物件がマスターリースに代わることから、当社全体の営業利益はほぼ横ばいで、テナント売上高は1200億円を見込む。

(聞き手・編集長 松本顕介/大塚麻衣子記者)
※商業施設新聞2207号(2017年8月22日)(1面)
 デベロッパーに聞く 次世代の商業・街づくり No.236

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