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第257回

村田製作所 代表取締役専務執行役員 モジュール事業本部長 中島規巨氏


スマホ、自動車軸に部品展開
LiBなど新商材強化

2018/1/26

村田製作所 代表取締役専務執行役員 モジュール事業本部長 中島規巨氏
 (株)村田製作所(京都府長岡京市東神足1-10-1、Tel.075-951-9111)は、2018年度をさらなる飛躍の年と位置づける。依然高機能化ニーズの強いスマートフォン(スマホ)市場や電装化が進む自動車市場など多様な分野に、電子部品やモジュールに加えてソニーから買収したリチウムイオン電池(LiB)、新商材の樹脂多層基板「メトロサーク」といった商品を積極投入する。代表取締役専務執行役員でモジュール事業本部長の中島規巨氏に話を聞いた。

―― スマホを中心とした足元の事業環境、今後の見通しについて。
 中島 新モデル向けを中心に、17年末まで高水準の受注が続いた。年明け以降は季節トレンドに従って減少するが、新モデルの生産状況によっては、減少幅が通常に比べ緩やかになることも見込まれる。スマホ市場全体の台数成長は鈍化するものの、高機能なキャリアアグリゲーション対応端末(LTE-Advanced)の比率はまだ拡大する。
 スマホのトレンドは、ICやカメラ性能の向上、センサーの搭載数増加、無線給電やAR(拡張現実)機能などの新機能の搭載、バッテリーの大容量化が見込まれる。積層セラミックコンデンサー(MLCC)への要求として、小型化と大容量化の両立、高温対応/高電圧対応など用途に応じた特性が挙げられる。スマホの高機能化で高周波特性向上、低消費電力化や小型化、モジュール化のニーズが継続し、当社の得意とする領域が拡大する。スマホ1台あたりの売り上げも、継続的に上昇するだろう。

―― メトロサークの生産増強の見通しと今後の用途展開について。
 中島 17年夏以降、合理化設備の立ち上げが計画どおり進捗しなかったことなどを要因に不良率の改善が遅れたが、現在は得意先との約束に応えられるだけの供給能力は確立できている。合理化設備の改良を引き続き進めるとともに、現在の富山、岡山の工場に加え、石川県能美市に生産工場を新設することで十分な生産キャパを確保する。
 また、テーマ自体の取捨選択も行いながら、お客様からの期待に応えられる体制を整えていく。折り曲げられ機能付与が可能なメトロサークの特性について、お客様からの期待と関心は高い。スマホなどの高機能化、高周波化に貢献できる技術であることから、今後の拡売計画の見通しについて従来から変更はない。足元の売上規模は数百億円で、今後3~5年で1000億円規模を目指す。現在はスマホ向けが中心だが、将来的にはウエアラブルやタブレット、データセンター、IoTなどへの採用を目指している。

―― 5G対応など、RFモジュールのトレンドは。
 中島 RFモジュールへのニーズとしては、IoTで多くのデバイスが同時に接続する多接続化や、自動運転など手元の操作がダイレクトに通信先へ反映される低遅延、4K/VRなど多くのデータ通信容量を必要とするコンテンツへの対応がある。5Gになると高周波に対応したフィルターが必要となり、従来のSAWデバイスなどでは対応が難しい周波数帯も出てくる。このため、導波管フィルターやフェムトセル向けの誘電体フィルターといった技術が必要となる。
 具体的には、SuB-6GHzでは、SAWデバイスや誘電体フィルター、LCフィルター、パワーアンプなどでまだ対応が可能だが、28GHz、40GHz帯、60GHz帯といったミリ波帯では、水晶導波管フィルターやICとアレイアンテナを組み合わせたモジュールが必要となってくる。現在、ミリ波に対応したフィルターやモジュールの開発に力を入れている。

―― 自動車など非スマホ分野への取り組み、今後の戦略について。
 中島 車載市場向けとして、18年度に全社で売上高2000億円を目指している。MLCCではエンジンルーム周辺など過酷な温度環境に搭載される機器向けに、最高使用温度200℃まで対応可能な商品や、結露対策用の撥水タイプ、フェールセーフ機能を持った樹脂外部電極コンデンサーなどの幅広いラインアップを揃え、成長を持続させていく。技術の進化について当社だけでできることは限られており、これまで保有していなかった技術エリアの獲得のために、M&Aや他社とのアライアンスを継続して進めている。東光のパワーインダクターや、指月電機との合弁会社による新素材フィルムコンデンサー、IPDiA社の3Dシリコンキャパシタなど、今後の電気自動車(EV)をはじめとした自動車市場の拡大に備えていく。センサーと通信の両方で幅広い技術・製品ラインアップを持っているのが当社の強みだ。独自技術のシナジーによって、ADASやV2X向けなどへの新たな価値提供に取り組んでいく。
 自律走行による交通事故の抑制、移動時間の有効活用、車内の快適性とエンターテインメント性の向上という目的を達成するために、当社が持つ電子部品の技術が必ず必要になってくると考えている。一例として、Murata Electronics Oy社のジャイロや加速度、角度センサーを組み合わせた混合センサーなどが横滑り防止、エアバッグ、衝突防止に活用される。

―― エネルギー分野における事業戦略、開発の方向性は。
 中島 エネルギー分野は注力市場の1つと位置づけ、電池事業を中核に据えて成長、拡大させる。小型・薄型・高効率の技術とパワーモジュールで培ったノウハウを活かし、電力変換、配送電における省エネルギーソリューションや、センサー・通信モジュールなどとの融合による情報からマネジメントまでのトータルソリューションにより、持続可能な社会の実現に貢献する。

―― LiB事業の方向性と全固体電池の事業化計画について。
 中島 LiBはモバイル、パワーツール、定置用を志向する。モバイル向けのラミネート型LiBは、17年に問題となった発火事故以降、安全面への関心が集まり、燃えにくい高分子素材(ゲルポリマー)を使用したバッテリー技術が注目されている。当社の販売網を活用し、スマホをはじめとするモバイル向けポリマー電池を拡売する。
 パワーツール向けは、安定的な拡大が見込める市場であり、ハイパワーな円筒型LiBの需要が業界の需給逼迫の流れもあり増加している。これまで抑制されていた増産投資を再開し、ソニーのネットワークも活用して、高出力、高容量のハイパワー電池で売上拡大を目指す。
 定置用は産業用、住宅市場用蓄電池として、エネルギーマネジメントシステムのビジネス拡大を目指す。太陽光発電の売電価格下落で、自己消費ニーズが増える住宅向け蓄電システムは堅調が続く。事業用建物の非常用電源は、鉛電池からの置き換え需要が期待できる。オリビン技術を活かした長寿命・ハイパワーな製品特性が活かせる市場向けに開拓していく。
 全固体電池は、19年の上市を予定している。当社とソニーで研究してきたものをしっかりと融合させる。酸化物系でガスの発生が無いなど、安全性が極めて高いというメリットを生かし、LiBの置き換えを狙っていきたい。モバイル機器なども用途に含まれるが、まずは安全性が極めて高いという特徴を生かせる用途(ウエアラブルなど)から始めていくことになると思う。将来的に自動車向けへの展開も視野に入れるが、まずは車載以外で経験を積む必要がある。

―― 18年度の見通しや中期的に取り組んでいく分野について。
 中島 当社は「グローバルNo.1の部品メーカーとして持続的に成長し続ける」というビジョンを描き、これを実現するための3カ年の指針を「中期構想2018」としてまとめている。「新たな成長軌道に乗るための基礎固めの3年」と位置づけて16年度にスタートし、18年度に最後の3年目を迎える。この中期構想では、通信を中心とした収益の柱となる領域を「基盤市場」、自動車、ヘルスケア、エネルギーを「注力市場」、そしてIoT技術を中核に発展していく領域を「開拓市場」と位置づけ、ビジネス創出を進めている。通信市場の売り上げ比率は依然として50%を超える状態であり、依存度が高い状況が続いている。新たな成長ドライバーを発掘するためにも、従来から注力している自動車市場をはじめ、ヘルスケア、エネルギー、IoTといった新規アプリケーションにおけるビジネス開拓を加速していく。

(聞き手・中村剛記者)
(本紙2018年1月25日号1面 掲載)

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