商業施設新聞
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No.643

固定観念をぶっ壊せ


北田 啓貴

2018/2/13

17年12月にオープンした「ロール アイスクリーム ファクトリー道頓堀店」
17年12月にオープンした「ロール アイスクリーム ファクトリー道頓堀店」
 昨年12月、関西に初出店した「ロール アイスクリーム ファクトリー道頓堀店」を取材した。東京・原宿にある1号店に次ぐ2店目の出店だ。1号店は3~4時間の行列ができ、テレビの情報番組で行列ランキング上位に選ばれるほどの人気店だという。

 取材を始めると、疑問にぶち当たった。「なぜ冬にアイスクリーム屋をオープンするのか」ということだ。「繁忙期の夏までに店内のオペレーションを万全にするために、本来は4~5月ごろにオープンしたほうが良いのではないか」と私は思い込んでいた。

 しかし、日本アイスクリーム協会のホームページによると、まず、アイスクリーム類および氷菓子販売金額は、2007年度が3706億円だったのに対し、16年度は4939億円と約1200億円以上も市場が拡大している。それに加えて、同協会が発行している「アイスクリーム白書2017」によると、夏以外の季節にアイスを食べる機会が増えたと回答した人は56.3%もおり、アイスという商品は夏だけのスイーツではなくなってきていると言える。

 また最近では、テレビやSNSなどで「冬アイス」という言葉を目にするようになり、同白書によると、「(真冬にアイスクリーム)を食べるのか」という質問に対し、90%以上の人が「食べる」と回答している。

 背景には、SNSツールの発達があるようだ。同白書では、アイスクリームの新商品情報をどこから手に入れるのかという質問に対し、テレビCM、店頭での商品を確認して、という回答に次ぐ16.3%が「口コミ・SNS」からと答えており、冬のアイス情報や冬に食べる習慣もSNSで広がってきたのではないかと推測できる。

 商業としての話題に戻ると、新たな潮流が見える。それは、各飲食店の出店サイクルだ。アイスクリームひとつとってみても、SNSなどの情報技術の発達で「夏に食べるべきもの」「冬に食べるべきもの」という垣根がなくなりつつある。新たな出店サイクルとして、メーンの季節ではない時期に出店し、経営基盤を固め、売り上げが高いシーズンに向けて本格展開していく。

 先ほどのロール アイスクリーム ファクトリーを運営する会社の社長も「夏までに1~2店は出店したい」と述べる一方、冬のオープンに不安要素がないわけではないようだった。

 ただ言えることは、情報技術の発達は、スイーツ・飲食業界に新たな出店サイクルを生み、季節だけで、飲食店などの出店時期は測れなくなりつつあるということだろう。
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