商業施設新聞
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第149回

(株)TRASTA 代表取締役 木地貴雄氏


遊休不動産を宿泊施設に転換
20年までに数十棟開業へ

2018/10/2

(株)TRASTA 代表取締役 木地貴雄氏
 (株)TRASTA(東京都渋谷区千駄ヶ谷3-14-5、Tel.03-6427-2400)は、中規模の遊休地、遊休不動産を賃借し、宿泊施設を企画・運営する企業だ。8月29日には大阪・アメリカ村のビルをリノベーションしたホテルを開業する。今後は高級旅館を体験できる新ブランドも開発する方針であり、宿泊事業の新興勢力として注目の存在だ。代表取締役の木地貴雄氏に話を聞いた。

―― 宿泊施設事業参入の経緯から。
 木地 元々は東証一部上場企業により設立され、小・中規模の遊休地や遊休不動産を活用した太陽光発電の設置を提案していた。軌道に乗っていたが、競合が増えるなど長続きする事業とは思っていなかった。それまでの知見を生かせるビジネスを考え、遊休不動産を活用した宿泊施設事業を立ち上げた。

―― 1号店はいつごろ開業したのですか。
 木地 2016年8月に福岡市の遊休不動産をリノベーションし、「&AND HOSTEL」を事業主としてオープンした。福岡で遊休不動産をホステル化したのは先駆的だったため、今でも稼働率は非常に高い。その後、福岡市で2施設目、大阪市に3施設目を展開した。

―― いずれも中規模な施設ですね。
 木地 国内の遊休不動産は大半が中規模なためだ。当社はこれらビルを保有する投資家から建物を賃借して、ホテルを企画、運営している。中規模施設の運営や企画ができる企業は多いが、1社ですべてできる会社は少ない。
 また、当社はテクノロジーの活用・開発もできる。例えばモーションキャプチャを活用してテレビを操作するシステム、スマホなどのデバイスを活用して他の観光客がどこを訪れているのか確認するシステムなどを開発している。このようにホテルの企画、運営に加え、テクノロジーによる旅のプロデュースなどを実現できるのが投資家に提案する際の強みだ。

―― 4施設目の開業が迫っています。
8月29日にオープンする「STAY in the City AMEMURA」のアメムラテラスルーム(イメージ)
8月29日にオープンする
「STAY in the City AMEMURA」の
アメムラテラスルーム(イメージ)
 木地 8月29日、大阪・アメリカ村に「STAY in the City AMEMURA」を開業する。ブランド1号店となり、従前は飲食や宿泊施設が入っていた雑居ビルだ。ここをドミトリーとツインルーム、テラス付きのスイートルームで構成する混合型施設にした。最大96人宿泊でき、インターネットラジオのスタジオを設けるほか、トランジットジェネラルオフィスがプロデュースするバインミー(ベトナムのサンドウィッチ)の店、バー、スナックを導入する。

―― スナックとは面白い業態を導入しますね。
 木地 アメリカ村というカルチャーが強い場所だからこそできる業態だ。こういった地域の文化を大事にしたい。バインミーは大阪では珍しいフードだと思うが、アメリカ村周辺は話題のフードを求めて行列をつくる姿も多い。ぜひ宿泊者以外も利用してもらいたい。

―― 地域の方の利用を意識しているようです。
 木地 強く意識している。地元に愛されないと、その場所で事業をする意味がない。これまでの施設でもバーラウンジを設けるなどしてきた。アメリカ村でもスナックへ気軽に訪れ、観光客と地元の人がつながり、地元ならではの情報を提供してくれると面白い。

―― 内装は雑居ビルの味わいを生かしています。
 木地 リノベーションは既存施設の良さを活かすのが大事。STAY in the Cityはリノベーション業態として展開していき、既存施設のSTAY in the City化も検討している。一方で今後は、新築施設に出店する「住亭(すてい)」ブランドも展開していく。

―― 住亭はどのようなブランドになりますか。
 木地 インバウンドを含めて高級旅館に泊まりたいというニーズは強いが、価格がネックとなって手が届かない人も多い。そこで和モダンをコンセプトに、1万~2万円で高級旅館のイメージを体験できる施設を開発したい。住亭も投資家から賃借して出店する形になるが、ホステルでなく、ツインルームなどが中心になると思う。

―― 今後の展開は。
 木地 STAY、住亭ともに延べ400~600坪の企画になり、東京、京都、大阪など観光地、主要都市を中心に展開する。ただ、インバウンドは日本人が想定していなかった場所を訪問することもあり、「このエリアじゃできない」という考えは捨てたい。
 施設数でいうと、20年までには25~50棟程度は企画できると思う。ただ、自社のみで展開するのでなく、FCとして拡大することも考えている。FCパッケージの開発にはすでに取りかかっており、今後も当社の強みである企画力を生かして事業を進めていきたい。

(聞き手・副編集長 高橋直也)
※商業施設新聞2259号(2018年8月28日)(7面)
 インバウンド4000万人時代 ホテル最前線 キーパーソンに聞く No.25

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