商業施設新聞
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第160回

三菱地所(株) 執行役常務 藤岡雄二氏


ホテル、空港事業を展開
まちづくりの視点で地域を活性化

2018/12/18

三菱地所(株) 執行役常務 藤岡雄二氏
 三菱地所(株)は、2018年4月に「ホテル事業部」および「空港事業部」を設立した。同社のまちづくりの視点を活かし、空港および周辺地域の活性化を図り、さらに両事業で相乗効果を図っていく。統括する執行役常務の藤岡雄二氏に聞いた。

―― 訪日客の増加でホテル開発が活発ですが、東京五輪以降をどう見ますか。
 藤岡 20年以降も減速することはないだろう。中国や東南アジアからの訪日客数が伸長しているが、各国の経済発展に伴い中間所得層が確実に増えており、今後も伸びることが確実視されているからだ。五輪で日本が注目され、日本に行ってみたいという動機付けでより増えるのではないか。
 こうした中、国内ではホテル開発用地の取得競争が激化しているが、需給バランスからすると、さらに成長が見込めると考えている。

―― 目標は。
 藤岡 去る10月、他社物件をリブランドした「ザ ロイヤルパークホテル広島リバーサイド」を開業し、ロイヤルパークホテルズとしては10棟となった。22年には18棟になる。25年くらいには今の倍としたい。

―― 立地は。
下地島旅客ターミナル施設のイメージ
下地島旅客ターミナル施設のイメージ
 藤岡 首都圏および当社支店のある主要都市で展開している。今後は、沖縄・下地島、高松、静岡において空港事業を推進していくので、相乗効果が見込める地域への出店も検討したい。

―― ホテルブランドは。
 藤岡 フルサービスタイプの「ロイヤルパークホテル」ブランドに加え、派生ブランドとしての「ザ」シリーズがある。バジェットタイプではなく、アップスケールにカテゴライズされる宿泊特化タイプである。国内外から、所得に余裕のある家族連れやカップル、ビジネス客の利用が多い。また、こうした環境の下、ライフスタイル提案型に分類されるブランド「キャンバス」を昨年開発した。

―― 富裕層向けの外資ラグジュアリーは。
 藤岡 興味を持っている。日本には超富裕層が満足する本格的な五つ星ホテルが不足している。下地島空港はプライベートジェットの離着陸が可能なので、そうした可能性を検討したい。

―― 空港事業の考えは。
 藤岡 当社は“まちづくりを通じて社会に貢献する”ことを基本使命としている。地域における社会インフラである空港事業の推進はまさにまちづくりを通じた社会貢献だ。住宅、オフィスの開発を行い“住む・働く・憩う”と3拍子揃ったまちづくりを進める中で、空港事業の領域は“憩う”機能の充実であると考えている。
 空港使用料に加え、収益の軸は土産品の販売や飲食店の売り上げ、テナント料だ。丸の内やMARK IS、アウトレットで培った商業ビジネスのノウハウや、ロイヤルパークホテルズの経営、運営で培ったホスピタリティを活かす。

―― 下地島空港ターミナルの整備状況は。
 藤岡 旅客ターミナル施設を建設中だ。プライベートジェットの専用棟増設も視野に入れている。ターミナル施設には土産店や物販を整備する。そのほか、宮古諸島の中でホテルを検討している。

―― 高松空港について。エリアのポテンシャルは。
 藤岡 可能性を大いに感じている。例えば直島を目指して外国の方が多く訪れるが、直島が香川県にあることが知られていない。県とタイアップすることで、告知効果が高まり、来訪者が増える素地が十分にある。地域の魅力を発信することで、空港や地域が潤う。まさにまちづくりを通じて社会に貢献できるといえる。

―― ハード面は。
 藤岡 まず、駐車場事前精算機の設置や免税店を拡張した。また、搭乗手続きゲートを通過するとあまり売店などがないため、搭乗手続き後のエリアを十分に取り、搭乗直前まで買い物などが楽しめるように順次改修していく。さらにPRキャンペーン「NEOHENRO/四国ネオ遍路」などを通じ、エリアをしっかりアピールする。

―― 富士山静岡空港は。
 藤岡 西のセントレア・中部国際空港、東の羽田空港に挟まれているが、ゴールデンルートの富士山に近く、FDA(フジドリームエアラインズ)の拠点でもある。FDAとタイアップして、富士山の周遊飛行や大井川鐵道でのきかんしゃトーマス号をセットにした商品を展開している。
 富士山静岡空港の周辺には商業施設が少ないこともあり、地域の方がぶらりとやってくる。さらに航空機マニアが小型ジェット機「エンブラエル」を見学に訪れるなど、飛行機に乗らない来訪者の方が多い。旅客数約70万人に対して、非旅客が100万人と、ポテンシャルがあるので様々な仕掛けを作っていく。すでに静岡県がリニューアル工事を先行的に進めており、12月にはフードコートがオープンを予定している。

―― 今後の事業展開を。
 藤岡 空港事業については、環境や条件などを個別に精査しながら、事業拡大の検討をしていきたい。また、ホテル事業とのシナジーも図りたい。
 今後、ますます増加する訪日リピーターは、東京、京都以外の地方都市に足を運ぶとみている。07年の日本の提供座席数に占めるLCCのシェアは10%未満だが、17年には24%に伸長した。今後いくつの空港を手がけていくのか、具体的な目標を申し上げる段階にはないが、空港事業は我々の成長分野であると位置づけており、まちづくりの知見を活かして取り組んでいく。

(聞き手・編集長 松本顕介/副編集長 高橋直也)
※商業施設新聞2271号(2018年11月20日)(1面)
 デベロッパーに聞く 次世代の商業・街づくり No.280

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