商業施設新聞
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第177回

(株)東急ホテルズ 執行役員事業企画部長 武井隆氏


地域性、ライフスタイルを深耕
20年はMMと三島に予定

2019/4/23

(株)東急ホテルズ 執行役員事業企画部長 武井隆氏
 (株)東急ホテルズ(東京都渋谷区道玄坂1-10-7、Tel.03-3477-6019)は、「ザ・キャピトルホテル東急」に代表されるラグジュアリーから、シティホテル・宿泊特化カテゴリーの「エクセルホテル東急」「東急REI」などを展開する。とりわけ最近はエリアの特徴やライフスタイルを打ち出したホテル作りを進めている。執行役員事業企画部長の武井隆氏に聞いた。

―― 昨年は3ホテルを開業しました。5月に千葉・浦安に開業した「東京ベイ東急ホテル」の状況から。
 武井 客室数638室の空と海に囲まれたアーバンリゾート型で、稼働率も高く集客力では周辺ホテルと同等以上にある。ディズニー目的のファミリーや訪日客のほか、おいしい食事が強みとなり、周辺のマンションからの女性客も多い。ここ3カ月は満室の日も多く、2月は稼働率が90%以上で推移している。宿泊単価も2万円に届く水準まで上がってきた。稼働は高水準となってきたので、単価をもう一段上げたい。

―― 川崎の「キングスカイフロント」の「東急REI」は。
 武井 リバーアクティビティで賑わう多摩川に面し、京浜工業地帯にあるキングスカイフロントの中心となる立地。20年に多摩川に羽田空港をつなぐ橋が架かり、事実上空港が最寄となる。眼前に多摩川と空港が広がる風景に感動し、一度利用するとそれを見せたくて誰かを連れてくるリピーターが多く、稼働率は7割近くまで上がってきた。週末は自転車やSUPなど多摩川を利用したレジャー・アクティビティ需要が強く、満室に近い。前述の浦安は元々需要があるエリアで、どうやって勝っていくかがテーマ。対して川崎は、顧客の顔の見えないところに、自分たちで需要を作り出すことが命題。

―― 渋谷ストリームのエクセルホテル東急は。
 武井 ビル全体の発信力が高いので、我々もその効果を享受しているし、渋谷という宿泊のポテンシャルもあり、目標以上の数値だ。バーは従来にはない業態とした。DJによる音と映像で通路まで人が溢れている。
 東急ホテルズは40歳以上に偏りがちだったので、ミレニアル世代やクリエイティブ層の獲得に注力している。ターゲットを明確にして、ライフスタイルにあわせたハードや空間を作ったことが間違っていなかったと実感している。こうすると客層が変わるという手応えを掴んだ。

―― 2019年は大阪・御堂筋で計画しています。
 武井 日本初の寺院山門と一体型の「(仮称)大阪エクセルホテル東急」を11月に予定する。コンセプトは「大阪万華鏡」。大阪は万華鏡のように歴史や文化の様々なシーンが散りばめられた街。大阪という街のミュージアムの中に滞在しているような空間を提供し、訪日客が新たな発見ができればと考える。いわゆるお寺体験に留まらず、境内での盆踊りはじめ寺院のみなさまと連携したイベントの開催を通して日本文化を体験していただく。

―― ハードの特徴は。
 武井 いわゆる寺院を前に出しすぎて厳かな雰囲気を強めてしまうと、ホテルの非日常感、遊び心から乖離してしまう。最上階がロビーと料飲施設になるが、そこでのシーンをどう作るかがカギとなる。

―― 20年はみなとみらいと静岡・三島で計画しています。
 武井 みなとみらいは東急REIとする予定。建物にはゼップのライブハウス、ゲームメーカーのコーエーテクモホールディングスの本社が入る。独自でキャラクターイベントを多数開催するなど、ゲームはエンターテインメントに富んでおり、ライブとの親和性も高い。音楽、ゲーム、ホテルのコンテンツを融合すると面白い業態になる。従来のビジネスに捕らわれずに、新しい発想で新しいホテルの使い方を提案したい。

―― では三島は。
富士山三島東急ホテルの外観イメージ
富士山三島東急ホテルの外観イメージ
 武井 食を強みに出した東急ホテルとする予定。立地が富士山というゴールデンルートの真ん中にある。そこを目的に来る訪日客をどう取り込むか。カギは日本の食事やお風呂を武器に考える。小田原~箱根~三島というインバウンドルートがあるが、箱根の宿泊客を三島で誘客し駿河湾の新鮮な海鮮をホテルで召し上がっていただいたり、富士山が間近に見える風呂をフックにしたい。

―― 超富裕層の集客に超ラグジュアリーホテルがフックになります。渋谷に必要ですか。
 武井 エリアの格付けをさらに上げるためには、大きな客室のスーパーラグジュアリー要素のホテルが必要だ。渋谷にはまだホテルのカテゴリが少なくその余地が残っている。

―― ホテルマーケットを今後どうみますか。
 武井 これだけホテルが増えると、エリアと最後は立地がものをいう。ただ、「京都ならどこでもいい」ではなく、「京都ならここ」というように、場所ごとにライフスタイルに合わせたホテルを作る。今後景気が悪くなったり、インバウンドが減る局面となった際に、最後に残るのは常に選ばれる理由があること。ただ機能だけでは、これからホテルが増える中で難しい時代になる。

―― 新規と既存施設の乖離が生まれるのでは。
 武井 今後は既存ホテルも、新しいコンセプトに合わせてリニューアルしていく。その時、よりエリアの顔となる特徴を作る。変にきれいに収めず、もっと遊び心も前に出して常に指名されるホテルを目指していきたい。

(聞き手・編集長 松本顕介)
※商業施設新聞2288号(2019年3月26日)(7面)
 インバウンド4000万人時代 ホテル最前線 キーパーソンに聞く No.35

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