商業施設新聞
新聞情報紙のご案内・ご購読 書籍のご案内・ご購入 セミナー/イベントのご案内 広告のご案内
第193回

(株)力の源カンパニー 専務取締役 杉村明紀氏


国内は多業態で展開
一風堂は海外で出店増

2019/8/20

(株)力の源カンパニー 専務取締役 杉村明紀氏
 (株)力の源カンパニー(東京支社=東京都中央区銀座5-13-16、Tel.03-6260-6500)は、博多ラーメンの「一風堂」に加えて、国内では「RAMEN EXPRESS」、米チャイニーズレストランの「PANDA EXPRESS」など複数業態の事業戦略を広げている。国内事業を統括する同社専務取締役の杉村明紀氏に、事業戦略を聞いた。

―― 事業の概況から。
 杉村 2019年3月期は、国内需要が下げ止まった期と認識している。第1および第2四半期は苦戦気味だったが、第3と第4四半期は盛り返した。その結果通期で、既存店は前年割れだったが、新店を含めた全店売り上げで前年を上回った。連結売上高は、海外事業も順調なことから前年度比12.3%増の274億6600万円、営業利益は同5.8%増の9億5700万円となった。

―― なぜ前半に苦戦し、後半に盛り返したのか。
 杉村 来店頻度の高いお客様向けの優遇措置があるスタンプカードを17年に廃止したことで、同顧客の来店頻度に影響が出たと考える。そこで18年度第2四半期以降に再び同顧客向けの優遇カードを導入。他にも収益性の高い店舗の増席などを18年度に実施した。これらが後半以降の盛り返しの要因となり、19年度もその傾向が続いている。

―― 一風堂の博多ラーメンは、白丸元味と赤丸新味が主力だ。
沖縄県第1号店の「沖縄パルコシティ店」
沖縄県第1号店の「沖縄パルコシティ店」
 杉村 白丸と赤丸の販売比率は、店によって異なるが、総じて55%対45%と認識している。白丸は博多ラーメンの原点と言えるあっさり味で、価格はお値打ちだ。赤丸は、こくがあり、辛みそが効いた分かりやすい味で、SCや駅などのインストア型店舗で人気メニューとなっている。6月27日には、一風堂として沖縄県第1号となる「沖縄パルコシティ店」を開店した。

―― インストア型の店が増えている。
 杉村 13年からSCやビルイン型などのインストア型店舗の出店を増やし始め、今では全店のうち40%を占めている。中でも、本格とんこつラーメンをより手軽に、スピーディーにをコンセプトとする「RAMEN EXPRESS」は、99%がショッピングモールなどの商業施設内で出店している。他業態はロードサイド型の路面店である。

―― 業態が多種類に広がっている。
 杉村 主力の一風堂のほかに、国内では「RAMEN EXPRESS」「名島亭」「PANDA EXPRESS」などがある。名島亭は、元は家族経営していた福岡・長浜ラーメンの老舗店で創業者同士昔からつながりがあったことから当社が事業を引き継ぐことになった。築炉釜を使った、独特の呼び戻し製法を使い、あっさり味だがコクがあり、とんこつの臭みを生かした長浜ラーメンを提供している。スープを繰り返し煮込む久留米ラーメンに近い製法。一風堂とは製法が違い全く異なるとんこつラーメンだ。
 名島亭は福岡から始まり、現在関西と関東にも出店。「PANDA EXPRESS」も国内に店舗数を増やしている。

―― 一風堂では、国内より海外店を増やしている。
 杉村 一風堂では、国内での新規出店を抑制しており、海外での出店を増やしている。当社は、19年3月末時点で日本では全業態で151店を展開しているが、そのうち一風堂は100店未満である。一風堂は、東京都内でも秋葉原など進出したい地域はたくさんあるが、出店は慎重に検討する。ブランド価値を大事にし、店を増やし過ぎないようにするため、ドミナント出店は行わない。ブランドを発信できる場所で、一風堂のためにわざわざ足を運びたくなる店を築く。

―― 業態ごとに出店戦略が異なる。
 杉村 国内では、インストア店を増やす事業戦略であるため、19年度は「PANDA EXPRESS」や「RAMEN EXPRESS」の出店を拡大する。全業態を合わせて、19年度は国内が13店増、海外は31店増を計画している。これにより、20年3月期には国内164店、海外146店になる予定。将来は国内外全業態を合わせて600店体制を目指す。

―― 人手不足への対応について。
 杉村 人手不足は、飲食業全体にとって大きな課題。特に店舗が集まるSCでは他店も人員確保に必死なので待遇面などで工夫が必要と実感。働く人の価値観が、お金だけを求めているのではないというパラダイムシフトが起きている。今後、離職率を下げる人事戦略や、人材の採用方法で多様性を持たせる必要が生じている。CSR活動などによる会社としての魅力を発信する力が重要になっている。

(聞き手・笹倉聖一記者)
※商業施設新聞2304号(2019年7月23日)(7面)
 経営者の目線 外食インタビュー

サイト内検索