商業施設新聞
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第244回

(株)ノジマ 本部 営業開発部 顧問 栗原郁男氏


府中駅前で商業開発に着手
70~100店の誘致を想定

2020/8/25

(株)ノジマ 本部 営業開発部 顧問 栗原郁男氏
 (株)ノジマ(横浜市西区南幸1-1-1、Tel.045-228-3546)は、東京都府中市の京王線・府中駅前で、大規模商業施設を2021年春から夏に開業する計画に着手した。計画内容や経緯について同社本部 営業開発部 顧問 兼 府中新商業施設 館長の栗原郁男氏に聞いた。

―― 府中駅前のフォレストサイドビルでSCを開発する。
ノジマが商業開発するフォレストサイドビル
 栗原 建物は、19年9月に閉店した旧伊勢丹府中店が入居していた施設。地下1階地上9階建てで、商業面積は約3万2000m²、70~100店の誘致を想定している。ノジマは、ビルの管理会社であるフォルマ(東京都府中市)から、旧伊勢丹府中店が使用していた床部分を一括して借り受け、家電量販の自社旗艦店を出店するのに加えて、複数の専門店テナントを誘致して、魅力ある商業施設づくりを目指す。

―― どのような経緯で貴社が参画する話がまとまったのか。
 栗原 同ビルで19年に百貨店が閉店した時から、当社の出店について、ビル側(府中市も地権者)と交渉を重ね、他社と競合する中、当社を選んでいただいた。府中駅前には家電量販店がなく、地域住民から出店の要望が高かった。ノジマは、府中市や、府中駅前のマーケットが持つ潜在力に以前から魅力を感じていた。
 また当社は、スポーツを通じた地域貢献や、売上高に応じた地元への寄付もしている。今回、野島社長が府中市長へ出店の挨拶に伺った際、マスク3万枚と4K液晶テレビ5台を寄贈した。行政も出店を好意的に受けとめ、共に駅前活性化に取り組んでいただけると考える。

―― 府中市の市場特性について。
 栗原 府中市は、東京都下で有数の都市で、大國魂神社、東京競馬場、ラグビー場、ビール工場など、様々な施設があり、自然も豊かで、商圏人口が厚い。府中駅の乗降客数は9万人で、住む人も働く人も多く、子育て世代および小さなお子様が多い。駅前近くの小学校では1000人以上の児童が学んでいる。ノジマは、10歳未満の子どもが多い地域での店舗運営を得意としており、子育て世代が必要とする家電の品揃えで強みがある。また府中駅前には、食品スーパーは多くあるため、フォレストサイドビルへやや高級なスーパーを導入することで、差別化できると考えている。贈答品の購入も多い土地柄なので、新SCでは贈答品売り場の需要にも応えたい。

―― テナントリーシングについて。
 栗原 ノジマの旗艦店に加えて、ベビー用品、スポーツ関連、スーパー、食物販、カフェ、レストラン、アパレル、インテリア、ドラッグ、サービス店など、地域の人が望むテナントを導入したいと考えている。上層階はレストラン街とし、近隣の大國魂神社でのお宮参りや七五三など、ハレの日の食事として利用していただきたい。地下1階のかつてのデパ地下は、百貨店時代から多くの利用があったので、その機能は復活させたい。
 このほかにクッキング教室など、学習機能を含めた、地域で望まれる体験型施設、さらにはテレワークに対応したスモールオフィスを導入し、時間消費による館内の回遊性を高めたい。駅前に多かったこれまでのファッションビルではなく、体験型/時間消費型としたい。ノジマの旗艦店を何階に設置するかなど、フロア構成やゾーニングは今後詰めていく。

―― ノジマは、SC開発はこれまでに経験がある。
 栗原 中小規模の複合商業施設も合わせると5施設ほど手がけている実績があり、大規模なものだと東京都町田市と神奈川県横須賀市で施設を展開している。町田市では「ノジマ ままともプラザ町田店」(27店)を18年11月から運営している。ここでは家電量販店に加えて、食品スーパー、百円均一、ベビー用品店などが施設内にあり、コロナ禍でも、2月から5カ月連続で前年超えをしている。これにより、地域で必要とされている業態であることを改めて認識し、またPCや調理家電、TV、洗濯機などの家電も生活必需品であることがわかった。横須賀市では「nojimaモール横須賀」(8店)を14年から運営している。

―― 府中市での取り組みは、初めての大型施設の開発になる。
 栗原 ECとリアル店舗の協調・融合を考えており、ノジマの強みである、デジタル技術やロボットなどの活用を提案している。お客様が24時間商品を受け取ることができる仕組みも考えたい。
 8階の社員食堂跡地や6階の吹き抜け空間では、天高や眺望を活かした体験型のテナントの誘致や、コンテンツを提案する。AR(拡張現実)などが楽しめる子どもの遊び場も検討したい。屋上は、共用&ビアガーデン、屋上農園、テナントへの貸し出しなど検討している。お客様の安全・安心は当たり前だが、加えて、従業員にとっても安全・安心で楽しく仕事ができる施設としたい。お子様を預かる機能なども検討したい。


(聞き手・編集長 松本顕介/笹倉聖一記者)
※商業施設新聞2356号(2020年8月4日)(1面)
 デベロッパーに聞く 次世代の商業・街づくり No.337

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