商業施設新聞
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第246回

アジア・パシフィック・ランド・(ジャパン)・リミテッド アセットマネジメント ヴァイスプレジデント 山本敦士氏


「海」と「地元」を生かして再生
軍港望むフードコートなど創出

2020/9/8

アジア・パシフィック・ランド・(ジャパン)・リミテッド アセットマネジメント ヴァイスプレジデント 山本敦士氏
 神奈川県横須賀市の大規模商業施設「Coaska Bayside Stores」が7月1日、グランドオープンした。旧「ショッパーズプラザ横須賀」を大規模リニューアルして生まれた、地域の新たなランドマークだ。開発を担当したアジア・パシフィック・ランド・(ジャパン)・リミテッドのアセットマネジメント ヴァイスプレジデントの山本敦士氏に話を聞いた。

―― 開発の経緯を。
Coaska Bayside Stores
 山本 旧ショッパーズプラザ横須賀は、1991年にダイエーのフラッグシップの商業施設として開業して以来、GMSを核に多くの人を集客してきた。しかし、横須賀市の人口減少、GMSの低調などもあって、19年3月に閉館した。ただ商圏などを分析するとポテンシャルを感じ、当社がショッピングセンターとして大規模リニューアルした。

―― どんなポテンシャルを感じたのですか。
 山本 旧施設の商圏は2.5~3km圏が中心だったようで、横須賀市は人口が減少傾向にあるため、厳しい運営だったと思われる。ただ、広域商圏で考えると違ってくる。横須賀市を含む三浦半島の5市区町は人口が74万人おり、車30分圏内には44万人が居住する。さらに隣接する「三笠公園」は年間196万人が訪れ、横須賀の船で軍港を巡る「YOKOSUKA軍港めぐり」には24万人が乗船しているなど、横須賀市の観光客数は毎年増加している。
 また、施設の隣には米軍基地があり、基地内には約3万人が居住し、関連就業者は約1万6000人もいる。さらに約6000人が乗船する空母が停泊することもあるため、一定の来客を見込める。京急本線汐入駅や横須賀中央駅、JR横須賀駅からも近く、総合的な商圏で見ると、大変魅力的に感じた。

―― 新施設の概要は。
 山本 コンセプトは「YOKOSUKA LIFE BASE」。横須賀を拠点に生活する人たちに食や買い物、体験などを提供するもので、子ども・大人・シニアの3世代を対象にしている。
 規模は6階建て延べ約12万m²、全105店。テナントの約6割が新規、残り4割が旧施設から継続・改装を前提に出店していただいた。新規テナントの誘致については、「イート」「エンジョイ」「ショッピング」の3つのコンセプトとした。毎日の高頻度来店を確保する食の充実に加えて、エンターテインメント機能を充実させることで来館を促している。

―― 食関連は非常にこだわったようですね。
 山本 食は大きな集客機能であり、横須賀エリア最大規模となる食のエリア「SKA-1(スカイチ)」として大々的に展開した。食物販やフードコートで構成しており、食物販では旧施設でも好調だったイオンの食品エリアを「イオンスタイル横須賀」として再出店していただいた。また、地元企業の店舗を集積しており、精肉・青果を扱う「横須賀晃進」や鮮魚などを販売する「長井水産」に出店いただくなど、地産地消を意識した。ウィズコロナ期では、地域経済圏の重要性が再認識されており、シビックプライドの高いエリアはより成長するとされている。実際、地元の店舗は好調な滑り出しを記録している。
 フードコートでは「マクドナルド」「ミートダイニング コーシンファーム」「おひつごはん四六時中」など、王道から横須賀初出店のテナントまで幅広く集積した。施設が海に面していることを活かし、フードコートの広い窓から海や軍艦、潜水艦まで望めるようにした。
 実は旧施設はオーシャンビューの意識よりも幹線道路の国道16号線を施設の正面としていたようである。しかしこの眺めは施設独自の素晴らしい強み。海側を正面にすべく、壁を取り払い、海を存分に感じられる施設とした。

―― 施設内には軍港巡りの受付もありますね。
 山本 軍港巡りは旧施設の時から受付が敷地内にあったのだが、屋外に位置していた。これを施設内に移設して、年間24万人の利用者を施設内に引き込む計画だ。
 さらにエンターテインメント系のテナントとしてスポーツアスレチックの「TONDEMI YOKOSUKA」やシネマコンプレックス「横須賀HUMAXシネマズ」、「ボウリング王国スポルト横須賀店」などを誘致した。エンターテインメント系もいまや大きな集客装置。食系テナントとともに館の来館動機となっており、運営側としては訪れた人をいかに物販へ回遊させるかがカギとなる。

―― 物販の状況は。
 山本 「GU」は湘南・三浦半島エリアで最大規模の店舗となり、売り上げが大変好調。また、2フロアで展開している「H&M」や、「Gap Outlet」もかなり良いスタートを切れた。Gapは基地需要抜きでも好成績なため、これからも期待できる。

―― 最後に抱負を。
 山本 施設内にはスカジャン・スカティーや地域の食材なども販売しているため、観光で訪れた人たちが地元経済に還元できるようにした。つまり当施設が好調に売り上げていくことで地元企業も潤う、ローカルサスティナビリティを構築している。このように地域経済とともに発展するのがすごく重要。当施設を通じて地元が潤えば、結果として当施設もいっそう活況になり、さらに地元が潤い、当施設も活況に――と、良い循環ができあがる。今後も地域経済とともに発展する施設運営を進めていきたい。


(聞き手・副編集長 高橋直也/新井谷千恵子記者)
※商業施設新聞2358号(2020年8月18日)(1面)
 デベロッパーに聞く 次世代の商業・街づくり No.338

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