商業施設新聞
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第258回

(株)大創産業 開発営業部 部長 渡辺有和氏


旗艦店や小型店を積極展開へ
スリーピーは3通りで出店

2020/12/1

(株)大創産業 開発営業部 部長 渡辺有和氏
 コロナ禍に見舞われた小売業界の中で、100円ショップの存在感が高まっている。自粛期間中は、マスクやビニール手袋といった衛生用品を買い求める顧客が来店し、郊外店の売り上げが伸長。一方で、商業施設内では空き区画が増え、デベロッパーからは、既存店の移転や増床を求める声が相次いでいる。「新型コロナウイルス感染症の流行を通じ、100円ショップの地位はまた上がった」と語る、業界最大手の(株)大創産業の渡辺有和部長に話を聞いた。

―― 新型コロナが業界に与えた影響は。
 渡辺 コロナ禍で業績が悪化する企業が多い中、100円ショップ各社は業績を伸ばし、生活必需品を提供する店として、なくてはならない存在に成長した。緊急事態宣言が発令された自粛期間中は、商業施設内の店舗は軒並み休業したが、代わってロードサイドの店舗の売り上げが著しく伸びた。とりわけ、巣ごもり消費が旺盛になり、マスクやビニール手袋といった衛生用品の売り上げが増えた。マスクが品薄になっても、はぎれや平ゴムといった手作りマスクの材料が売れるなど、新型コロナ対策商品が売り上げを牽引した。
 また、100円ショップに対する顧客やデベロッパーの捉え方も変わってきた。顧客はテレワークの普及で、都心の店舗よりも、自宅近くの「ダイソー」に足を運んでもらえるようになり、再発見していただく機会が増えた。デベロッパーも、新規の商業施設の開業延期が相次ぎ、直近では改装を実施する商業施設が増加しており、こうした商業施設では新規出店だけでなく、既存店の移転や増床を求める声も多い。顧客やデベロッパーの変化を勘案すると、新型コロナの流行を通じて、100円ショップの地位はまた上がったと感じる。

―― 2019年度(20年3月期)の出店実績は。
 渡辺 国内では300円ショップも含め、297店を出店し、171店を閉店したことで、19年度末の店舗数は3493店に増えた。出店はダイソーの空白地を中心に行い、NSCが多いものの、東京都内への出店も進めた。また、商業施設内において、既存店の移転や増床の案件も増え、19年度は65店(直営店のみ)で移転・増床を実施した。

―― 20年度出店計画を。
 渡辺 国内では19年度に比べ、さらなる出店を目標とし、閉店する予定を含めても、20年度末の店舗数は19年度よりも増える見通しだ。出店は引き続き、ダイソーの空白地を対象とし、各駅に出店したり、商店街に出店したりする。当社の店舗は食品スーパーとの相性が良く、コラボ出店を続けているが、今後はホームセンターやドラッグストアとのコラボ出店も広げる。特に、ドラッグストアは食品を強化する店舗が増えており、食品スーパーと遜色ない品揃えのため、当社の店舗との相性は良いだろう。もちろん、商業施設は単独出店にはない集客力があるため、同施設内への出店も積極的に進めたい。

―― 最近の店舗フォーマットを。
 渡辺 標準店と呼べるものはないが、最近は店舗面積が99m²の小型店や、2310m²の旗艦店の出店を進めている。旗艦店は店舗面積が1980m²以上で、その地域を代表する店舗となる。例えば、東京都の「亀有リリオ店」、大阪府の「大阪梅田店」、愛知県の「名古屋栄スカイル店」、福岡県の「博多バスターミナル店」などだ。直近では10月9日、川崎市に「新百合ヶ丘エルミロード店」をオープンしており、今後も商業施設内に旗艦店の出店を進めていく。

―― 小型店は。
 渡辺 4月に店舗面積が211m²の「西小山駅ビル店」(東京都品川区)をオープンしたが、売り上げは好調に推移している。小型店は、商業施設内はもちろんのこと、活気を感じる商店街や、駅の乗降客数が多い駅ビルなど、トラフィックの多い立地に出店する方針だ。

―― 300円ショップでは「THREEPPY(以下スリーピー)」のほかに、(株)ビルジャンのCouCou事業を譲り受けた。
 渡辺 20年度はスリーピーだけで20店の出店を計画している。スリーピーの出店は(1)単独出店、(2)ダイソーとのコラボ店、(3)ダイソーの改装後にインショップ出店の3通りのパターンが多い。単独出店は店舗面積が約132m²前後の実績値があり、コラボ店は約1980m²前後の広さで出店していることが多く、共同レジを利用するために出店する。インショップは店舗面積が約132m²前後の出店が多い。なお、CouCouに関しては、什器や内装といった良い特徴を取り込み、スリーピーの出店に役立てていきたい。

―― 商業施設に出店するテナントとして、デベロッパーに望むことは。
 渡辺 緊急事態宣言が発令された際、商業施設内に出店する当社の店舗も休業を余儀なくされた。ダイソーのためだけに動線は確保できないという声もあったが、それならばスーパーやドラッグストアと隣接する場所に出店させていただきたい。現に、「ららぽーとTOKYOBAY」ではスーパーマーケットの「ロピア」、ドラッグストアの「マツモトキヨシ」と並んで出店している。こうすることで、緊急事態宣言下においても、その区画だけ開業することができ、顧客の買い回りに貢献する。

―― 最後に、21年以降の業界見通しを。
 渡辺 100円ショップ各社の出店意欲は今後も衰えないだろう。しかしながら、新規の商業施設は開業案件が徐々に減っていくため、今後は既存店の改装がより増えていく。当社の場合、19年度は65店で移転・増床を実施し、20年度も引き続き移転・増床(直営店のみ)する予定だ。こうした既存店の改装も、今後は業界全体で必要な取り組みになるだろう。


(聞き手・岡田光記者)
※商業施設新聞2369号(2020年11月3日)(6面)

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