商業施設新聞
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第281回

(株)アンドブリッジ 代表取締役社長 松下剛氏


国内オフプライスストアを牽引
郊外SCなどで出店加速へ

2021/5/25

(株)アンドブリッジ 代表取締役社長 松下剛氏
 様々なファッションメーカーから余剰商品を買い付けて販売する「オフプライスストア(OPS)」が、日本で広がりつつある。牽引役となっているのが(株)ワールドと(株)ゴードン・ブラザーズ・ジャパンが設立した(株)アンドブリッジだ。有名ブランド品などを割引価格で販売し、消費者に喜ばれるだけでなく、余剰在庫を循環させるという社会的意義も持つ。同社代表取締役社長の松下剛氏に話を聞いた。

―― 事業の経緯から。
 松下 もともと私はワールドのアウトレット事業の責任者を長く務めていたのだが、アメリカなどでOPS業態が伸びていると聞いて、興味を持っていた。また、アウトレットでも専売品を作り、余剰在庫を生み出すことに課題を感じていた。そこで余剰在庫を世の中にもう一度届けたいと思い、OPSの開発を考えるようになった。
 ただ、この業態は他社の商品を含めたバイイングが求められる。ワールドはVMD、店舗運営には長けているが、バイイングはノウハウがない。そんな中、商品在庫など動産評価を行うゴードン・ブラザーズ・ジャパンとつながりができた。彼らなら様々な商品のバイイングができると感じ、共同で会社を立ち上げた。2019年9月に「アンドブリッジ」1号店を埼玉県西大宮に開店し、現在6店を展開している。

―― アウトレットとOPSの違いは。
 松下 アウトレットはブランドの魅力や価値で集客するが、OPSは店舗の商圏、住んでいる方々によって適切なカテゴリーの商品をバイイングして、MDを構築する編集型の店舗となる。また宝探し感も魅力の一つ。余剰在庫の中には有名ブランドの1点ものもあり、店に足を運んでどのような商品があるか発掘する楽しみがある。

―― 店舗ごとに商品は違ってくるのですか。
 松下 都市型、郊外型などのカテゴライズはあるが、店によってかなり違う。例えば西大宮の1号店は「しまむら」のショッピングモールに出ており、しまむらと比較購買したり、インポート品を好まれるようなお客様もいるため、こうした方にマッチする商品を用意している。他の店も商圏の特性を見た上で、MDを構成している。

―― 店舗のフォーマットは。
 松下 店舗面積は300坪以上というのが固まりつつある。商品構成は衣料が60%弱、バッグなどのファッショングッズが30%前後、生活雑貨は好調なこともあり、5~10%ほど展開している。扱う商品はここからここまで、ということは決めておらず、コスメも扱っているし、今後は食品などもあり得るだろう。ジュエリーなど、もとは数十万円するようなものが7割引などで売られており、宝飾品は特に宝探し感が強いのではないか。

―― 3月13日には最大店を開店しました。
ひたちなか市には2フロア450坪の
大型店をオープンした
 松下 2フロア450坪の店舗を、茨城県ひたちなか市の「ジョイフル本田ニューポートひたちなか店」敷地内にオープンした。約320ブランド、約1万5000アイテムを揃えている。アンドブリッジ事業をスタートした当初は半分ほどがワールドグループの商品だったが、ここでは10%程度と、様々な商品を揃えられるようになった。
 店づくりではワールドの他の店舗で使っていた棚を活用するなどサステナブルで、かつ価格に還元できるローコストを意識している。開業日には多くのお客様に来ていただき順調な滑り出しだ。

―― 出店立地はどのように考えていますか。
 松下 4月に埼玉県蕨市の「ビバモール蕨錦町」に6店目をオープンしたように、基本的に郊外を考えている。できるだけお値打ちで提供するためには家賃の折り合いがあるし、郊外でなければ300坪を確保できないだろう。
 イメージはスーパーや100円均一など来店頻度が高い業態があり、アパレルとして「GU」「ユニクロ」が入っているような商業施設。ベーシック・デイリーの衣料や生活雑貨とは一味違うアパレルの商品を提供する店として、出店させていただければと思う。一方で、こうした施設だと、商圏内に住人が月に何度も訪れる。そのため同じ商品があると飽きられるので、どんどん売り切っていきたいし、訪れるたびに新しい商品があるのが大事になる。

―― 今後の展開は。
 松下 23年3月ごろまでに20店体制を築きたい。出店エリアとしては首都圏を中心に北関東、神奈川西部、茨城、栃木あたりまでを想定している。また、関西圏やチャンスあれば九州、仙台なども考えたい。ただ、あまりにも商圏特性が違う場所に出店しすぎると、バイイングに負担がかかる。まずはドミナントで展開していきたい。

―― 貴社の目指すビジョンは。
 松下 利益を儲けることより、商品を循環させることが事業の根っこにある。社名にもしているが、余剰在庫、埋もれている商品を我々が消費者に渡す『架け橋』になりたい。お客様もお値打ちに購入できるなど、事業価値が高い業態だと思うし、マイナス面がないような業態。今、リユースなど2次流通はフォーカスされているし、抵抗がなくなっていると思う。他社もOPSに参入してこの業態が広がっていけばいいと思う。


(聞き手・編集長 高橋直也)
※商業施設新聞2394号(2021年5月11日)(6面)
 商業施設の元気テナント No.237

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