電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第441回

ミネベアミツミ(株) 常務執行役員 ミツミ事業本部半導体部門副部門長 兼 半導体事業部長 矢野功次氏


電池保護ICが好調
「相合」活動で差別化加速

2021/9/10

ミネベアミツミ(株) 常務執行役員 ミツミ事業本部半導体部門副部門長 兼 半導体事業部長 矢野功次氏
 ミネベアミツミ(株)は10月1日付で、オムロンのMEMS事業、8インチの野洲工場を取得すると発表した。また、モーターICの開発を進めるべく、群馬ならびに岐阜に開発拠点を開設した。今後の事業展開、製品戦略などについて、常務執行役員 ミツミ事業本部半導体部門副部門長 兼 半導体事業部長の矢野功次氏に伺った。

―― MEMS事業、8インチの野洲工場の取得について、今後の展開などを。
 矢野 ミツミ事業で手がける、MEMS圧力センサーの開発スピードを加速させる。オムロン様からは40人程度のMEMS技術者に来ていただくが、同分野で世界一の技術保有者であると認識している。そのほかの開発案件についてはまだ公表できないが、両者で新しい化学反応を起こしながら、当社のMEMS事業・製品を拡大させていく。
 また、アナログ半導体の売上高を20年度の600億円から、25年までに1000億円にするという数値目標を掲げており、そのために必要な8インチ工場を取得した。MEMSだけでなく、様々な半導体製品の生産でも活用すべく、100億円超を投じて月産約2万枚の生産体制を構築していく。さらに、今後10年以内にさらなるM&Aを含め売上高2000億円を目指しているため、その都度必要な拡張投資を行っていく方針だ。

―― モーターICの開発強化も発表されました。
 矢野 群馬県、岐阜県に新しく開発拠点を設置し、技術開発者を約60人雇用した。これは、モーターICの内製化を強化し、圧倒的に差別化されたモーター製品を拡販していくという、当社のメッセージ発信にほかならない。
 現状、どんなモーターメーカーも、ICは外部購入している。両方を社内で調達可能なのは、世界でも当社のみだ。すでにミツミ事業のドライバーICはミネベアミツミの各モーターに採用されているが、この社内一貫の取り組みをさらに強化し、各モーターの特徴にあったICの作り込みに注力することで、ミネベアミツミのモーター製品の差別化を図る。これは全社を挙げて推進している、「相合」活動の一環でもある。

―― 20年度の総括と足元の状況について。
 矢野 前期20年度の4~6月期は、新型コロナの影響で売上高は計画値を下回ったものの、7月以降は回復基調に乗り、売上高は19年度比110%、営業利益は同120%を達成した。営業利益についてはコロナ前に計画した数値を達成できた。特に貢献したのは電池保護ICで、IT関連機器やワイヤレスイヤホン(ヒアラブル)向けが巣ごもり需要で拡大した。
 この好調な流れが現在も続いている。旺盛な受注により工場稼働率も高く、協力会社へ生産委託する状況が継続している。受注状況から、今後2年程度は同様の状況が続くと見ている。

―― IGBTについて。
 矢野 IGBTは、17年からファンドリー事業のほか自社ブランドのチップ展開も開始している。両事業とも非常に好調だ。25年度には130億円をターゲットに拡大させる計画だ。当社はチップ単体売り事業を展開しており、中華圏市場のモジュールメーカーに拡販している。特徴的なのは、サイドゲート構造のシリコンIGBTで、SiCのような低損失なチップをシリコンで安価に実現していることだ。これまでは溶接機や業務用車両向け中心に展開していたが、今後はEV向けに積極展開していく。
 現在は、低損失で放熱性を高めた第2世代品のMIシリーズを展開している。第3世代品として、さらに性能と品質向上を図ったMSシリーズを開発し、これを21年末までにサンプル、22年度から量産出荷すべく戦略を進めている。また、8インチの野洲工場を生産拡大や車載向けに活用していく計画だ。

―― 各事業の状況を。
 矢野 (1)電池向け、(2)センサー向け、(3)電源向け、(4)IGBTを、4本柱として展開している。(1)では、前述のとおり電池保護ICが引き続き好調だ。巣ごもり需要のほか、スマートフォンの電池容量の増加や急速充電の需要により、さらなる高精度化や高い安全性へのニーズが増え、これら要求に対応している。(3)では、車載への展開に注力する。今後、自動車は電動化が加速し、USBなどのアクセサリー関連も増えていくと見られる。ここに当社の特徴を持たせた電源制御ICを展開していく。

―― (2)では、ADコンバータ―(ADC)に注力特化する戦略です。
 矢野 そのとおりだ。当社のアナログ技術の強みを活かし、ADCの開発に注力し、ラインアップ拡充を進めている。例えば、ΔΣ型では24ビット分解能までを取り揃え、SAR型でも18ビット・5Mサンプル/秒の展開を開始している。
 センサーは実に数多くの種類があるが、先端にあるエッジデバイスが取得する微小なアナログ信号を人間が取り扱いできるデジタル信号に変換することが必要で、そこに必ず搭載されるのがADCだ。注力すべき価値のある技術だと考え開発を強化している。
 今後さらに、社内製品への採用も拡大させていく。自社ADCを用いて製品特徴を強化すれば、他社との差別化にも貢献できる。これは、すべての社内製品に対して言えることで、このような「相合」活動を推進することで、他にはないミネベアミツミ製品を生み出していく。


(聞き手・澤登美英子記者)
(本紙2021年9月9日号1面 掲載)

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